JETROは、2016年8月から食品関連の海外見本市に出展する際には、木組みとスクリーンを組み合わせた統一デザインを使用しており、今回もそれを踏襲した。多彩な出展が並ぶ中でもエリア全体のイメージが統合され、また、見上げれば他にはない木組みがあるのでそこがジャパンパビリオン内だとわかるようになっている。
パワーアップしたJETROパビリオン
今回、JETRO枠で出展したのは213社・団体で、ジャパンパビリオン201社・団体、ティー・フェア12社・団体という内訳だ。
出展品目は表のように多様なカテゴリーにばらけているが、これは香港で注目されている日本の食品、したがって実際に香港に輸出されている日本の食品が多彩であることを物語っている。
香港フード・エキスポにおけるJETROジャパンパビリオンのカテゴリー別出品企業数
(出品物を持たない出品者除く)カテゴリー | 企業数 | 割合 |
---|---|---|
畜産品・畜産加工品 | 22 | 12.0% |
水産品・水産加工品 | 22 | 12.0% |
調味料 | 19 | 10.4% |
茶 | 18 | 9.8% |
アルコール飲料 | 15 | 8.2% |
菓子 | 13 | 7.1% |
米・米加工品(アルコール飲料除く) | 12 | 6.6% |
青果物 | 11 | 6.0% |
その他食品 | 44 | 24.0% |
その他飲料 | 7 | 3.8% |
合計 | 183 | 100.0% |
展示では料理デモやミニセミナーなども展開して、食品の使い方や背景にある食文化も紹介し、多様さが散漫なイメージとならないように工夫されていた。
料理デモはパビリオン内に専用ステージを設け、出品企業・団体等によるデモ等を展開していた。これらには料理人を招いたプログラムなど特色を出したものもあった。たとえば、鹿児島からは和牛と黒豚の生産者が集結し、1人ずつ登壇して自らの生産の考えと方法を述べた上で試食を行った。こうした展示は、来場者に人と品物を結びつける印象を与えただけでなく、出展者同士でも熱意をかき立て合う効果があったという感想が聞かれた。
実演は、「香港インターナショナル・ティー・フェア」でも実施した。こちらの会場にもジャパンパビリオンを設置し、ここに茶室を設置して茶道パフォーマンスなどを行った。
また、今回はジャパンパビリオン内に商談専用ラウンジを新設し、展示から即商談に持ち込みやすくしただけでなく、JETROが事前にアレンジしたマッチングもここで行った。攻めの姿勢を示したわけだが、これは香港ビジネス界の“スピード感”に対応したものとも言える。
地方自治体と地域の金融機関の出展も盛ん
JETROの出展では、もう一つ「ニューチャレンジャーの支援」ということも特色となっている。これは過去5年間輸出経験がない出展者を対象に出品料を通常の4分の1程度に抑え、専属アシスタントの1名無料手配などのサポートを行うというもの。今回は5社・団体がこの枠で出品した。
一方、地方自治体や地方銀行・信用金庫の出展も盛んだ。たとえば、浜松市はJETROのジャパンパビリオン内に「浜松市ブース」を設けて、市内中小企業等と共同で初出展し、市内中小企業6社が参加した。地域の農産物の紹介を手がけるプロダクトリングの山本洋士社長は、今回「天狗山椒」を引っさげて出展。日本での使われ方を紹介するだけでなく、香港で売れている菓子などの食品を集めて山椒と併せて試食させるなどを行っていた。
ほかにも、今回、地方自治体としては三重県が13小間23社で初出展。地方銀行・信用金庫では、西武信用金庫が4小間4社の規模で初出展。ほかに、農林中央金庫、日本政策金融公庫、十六銀行、北國銀行、山陰合同銀行、広島銀行、鹿児島相互信用金庫、りそな銀行、近畿大阪銀行が出展した。
温泉で育てるすっぽんを展示した東北すっぽんファーム(青森県東北町)の甲地慎一社長は、「いくつかの有名料理店で扱ってもらっているが、国内でもまださらに販路を開拓したい。そこも途中ではありながら、香港の可能性も探るべく出展した」と語る。実は設立してまだ1年半だが、青森県の国際経済課や青森県総合輸送プラットホームを利用して取引を広げている。志あれば道を拓くことにサポートは受けられる例と言えるだろう。
JETRO、地方自治体、金融機関、そしてもちろん国内の事業者がこのように香港に熱い視線を送るのは、もちろん昨今の世界的な日本食ブームや国の「クールジャパン」政策に乗ろうとする気持ちもあるだろう。
しかし、フード・エキスポの会場の別のフロア、そして街に出て百貨店やショッピングセンターを歩いたとき、そして市民の話を聞いたとき、香港にあるのはもはや「日本食ブーム」ではなく、ある文化が発展している、より大きな現象だと気づかされるのである。稿を改めて、それを紹介したい。