「『よい農産物』とはどんな農産物か?」連載第35回「日本の農業技術は国際的に低レベル」については、「多くの作物について、日本は主要先進国の中で唯一、単位面積当たりの収量の伸びが30年間も止まったまま」という点についてデータを示すようにという声をたくさんいただきました。
このことについては、農業技術通信社社長の昆吉則氏が長年指摘し氏も改善・革新への努力・挑戦を訴えているところです。そのため、氏と交流のある者の間では“耳タコ”状態であったこともあり、今回の岡本信一氏の原稿を私が査読した際、データを読者に提供するように考えが至らなかったことは編集者としての私の反省点です。
遅ればせながら、第35回掲載時にお示しすべきであったデータの例をお示しします。
これは国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する統計情報FAOSTATから作成したものです。同統計の中から、1961年~2011年の間で10年間ごとに世界各国の作物ごとの単収(Yield)を呼び出し、2011年時点の上位10カ国+日本のデータをグラフ化しました。元のデータはHg/Ha(ヘクタグラム・パー・ヘクタール)ですが、グラフではkg/10aすなわち反収のキログラムに換算しています。
データは上記サイトですべて公開されており、誰でも簡単に調べることが可能ですので、みなさんも時間のあるときにお試しください。以下では身近な作物の例を挙げていますが、他の作物では日本の反収(単収)が平均並みと言えるものもなくはありません。
なお、日本の農産物は傷みやすいという点については客観的なファクトを示すことが難しいところですが、たとえばスーパーマーケットで輸入野菜を購入して国産のものと食べ比べることである程度の判断をつけることは可能と考えます。その際、一般に店頭にある輸入野菜は国産野菜よりも長い時間を経て陳列されていることを考慮してください。
もちろん、船便・航空便いずれの方法で輸送したものか、収穫から何日経ったものかをお店の方に確認してもらえればベストですが、お店の方も忙しいですから、店舗・企業の事情もご配慮の上探求心を発揮していただければと存じます。
今回、それぞれのデータについて個々にコメントすることはしませんが、一般に「多く穫れたときは品質もよい」ということはベテラン農家が異口同音に指摘するところであることを付言します。
作物別の単位面積当たりの収穫量の比較
FAOSTATのデータより作成。いずれも単位はkg/10a。
米
小麦
大麦
そば
とうもろこし/乾燥
大豆
そら豆
さや豆
えんどう/青果
とうもろこし/青果
きゅうり
カボチャ
ナス