ペッパーフードサービス(東京都墨田区、一瀬邦夫社長)の立ち食いステーキ専門店「いきなり!ステーキ」は、ライス付きのセットとしているランチメニュー「ワイルドステーキ」(1200円/税別)、「ワイルドハンバーグ」(1000円/同)について、ライス抜きで100円引きとする設定を導入しました。
また、これらの付け合わせは通常はコーンとオニオンですが、コーンをブロッコリーやインゲンへ変更することも可能とするということです。これは直営店から始め、今後FC店にも拡大していくということです。
同社では、これらを採用した理由を「糖質制限をされているお客様からのご要望が多いため」としています。
糖質を控えたい消費者に対しては、糖質を抑えたあるいはゼロとした商品が、ビール・発泡酒類等の飲料、菓子、ハムソーセージをはじめとする加工食品が増えて来ました。小売・外食で先行していた事例としては「ローソン」のブランパンシリーズが挙げられるでしょう。また、フレッシュネス(東京都中央区、紫関修社長)の「フレッシュネスバーガー」は、7月に糖質を50%カットした低糖質バンズを一部店舗から導入(プラス50円で通常バンズと換える)し、対応店を全店へ拡大中です。
低糖質食がダイエットや生活習慣病対策になるとする考え方の端緒を開いたは、2000年代の初めにアメリカの医師ロバート・アトキンスが提唱した通称アトキンスダイエットからです。当初は高タンパク質食、高脂質食になり危険ではとも言われましたが、アメリカでは燎原の火のごとくアトキンス旋風が広がりました。
現地に住む複数のフードビジネス関係者からは、対応の遅れた製麺、製パン、製粉業界と糖質主体すなわちパン、パスタ、ピザなどを主力とする外食チェーンが打撃を受け、現在もその影響は続いているという報告を受けています。
日本では医師の江部康二氏が10年ほど前から著書とブログで低糖質食が糖尿病改善によいといった主張と実践の報告を始め、信奉者を増やしています。さらに他の医療や栄養の関係者が追随し、著書の出版やテレビ等での紹介例も増えてきました。
これに対して、やはり低糖質は高タンパク質食、高脂質食になり、それが危険であるとする反論も提起されています。今のところその良否の議論はメカニズム的な説明を中心に展開されていますが、その結着は今後の疫学的な長期の調査の結果を待たなければならないでしょう。
ビジネスとしては、どのような食品や料理についても、急性毒性が認められない以上は市場の大きさによって対応が決まります。冒頭に掲げた外食での導入例は、それを大と見たことによるわけです。今手もとに低糖質志向の人の数や割合がわかる統計資料を持ちませんが、興味を持つ人の多さは、たとえばFacebookページ「糖質制限メニュー投稿所」が8,500件を超える「いいね!」を集めていることから推測できます。
- 糖質制限メニュー投稿所
- http://www.facebook.com/sugaroff.menu/
米、麺、パンを主力としているビジネスに携わる人も、市場の先を読む人はこの流れに関する情報を慎重に集めています。
仮に低糖質志向が今後増えていくにせよ、ご飯が好き、ラーメンやそばなどの麺類が好き、パンが好きという人が突然いなくなるわけではありませんから、変わらずそれらを食べたい人をどう集めるかの手を打っていけば打撃を抑えることはできるでしょう。また、現状糖質の多い商品であればこそ、低糖質化の開発を行っていけば落ちていくお客を取り込むことは可能でしょう。食のバラエティを広げる取り組みとして、積極的に取り組んで損のないことだと考えます。
※このコラムはメールマガジンで公開したものです。