昨夜、JA全中の萬歳章会長が、政府・自民党の改革案を受け入れる考えを表明しました。その大筋は、農協法に基づく組織と位置づけられてきた全中を2019年3月末までに一般社団法人に形態を変えること。ただし、それ以降も地域農協の総合調整などの機能を持つことを農協法の付則に盛り込むこと。全中の監査部門を切り離して新しく監査法人を設立し、地域農協はその新監査法人と他の一般の監査法人とどちらを受けてもよいとすること、などです。なお、問題となっている准組合員制度については農協改革の進展をみながら検討すると、先送りすることになりました。
まだまだ何も変わらないという声も聞きますが、むしろ農村での生産体制、営農、作物の流通、資材の流通、金融など現場の変化は加速しており、体制が追いついていないという形と見たほうがいいでしょう。
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最も変化を求めているのは、流通・小売・外食という生産と消費の間に立つ業種でしょう。彼らには、市場の量と質への要求に日本の生産者が応えられない、応えようとしてくれないといういら立ちがあります。これは積年のものですが、外食を含む小売の規模が拡大するにつれて、いら立ちは増しています。
量と質の安定を求め、加えて可能ならばより消費者に選択されやすくすることを狙ってのユニークな特徴を求めているのが、現代の流通・小売・外食です。ところが、量と質の安定を向上させることに関心を持たない農家が多いこと、ユニークな特徴は単価アップ=手取りアップのためとしか考えようとしない農家が多いことを嘆くバイヤーは少なくありません。
話をよく聞いてくれてレスポンスも早い生産者は海外にはたくさんいて、本当はそういうところから調達したいところ、中国など海外産地のイメージが悪くなったこと、根拠のない国産信仰の気運が盛り上がったこと、フードマイレージへの関心の高まりや輸送コストの問題から近くで調達すべき圧力がかかっていることなどにより、近年たまたま国産農産物の注文が増えた。これをもって日本の農業は優秀だと間違った理解をする人が増え、さらに状況を悪くしている、そういう風に見えます。
しかし、もしこのままでカイゼンがなければ、いずれ日本の消費者からも、日本の農産物が見捨てられる日は来るでしょう。それでも、健康なビジネスパーソンとしての農家は徐々に増えています。その現場の動きを体制が阻害しなければ、危機を回避することはできるはずです。
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一方、今いちばん変わるべきは、フードチェーンの反対側の端に立つ消費者です。彼らは時代の変化に取り残され、古く、質の悪い価値基準にとらわれ、また自分でものを選ぶ能力も衰えさせています。ただ、そのままではいけないとか、本当は今の時代に合ったものの見方、選び方はあるはずだと気付いている消費者もいます。そのことはFoodWatchJapanの閲覧者の増加から感じています。
その人たちの役に立つ情報をと考えて、新しい本を書きました。まず、現在の食品にまつわる各種の基準と安全を担保しようとする仕組みを解説しました。そして、一般向けとしては異例なほどのボリュームで土と栽培の仕組みの解説を書きました。その上で、栽培にまつわる科学にはどのような歴史の流れがあり、どのように価値基準が変遷していったかを解説しました。その延長で見えてくるはずの、現在の私たち一人ひとりが持つべき価値基準(これは過去の時代の「あれか/これか」の選択ではありません)について説明しました。
- 『有機野菜はウソをつく』SB新書(SBクリエイティブ)
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この本についてみなさんと意見交換できる場として、Facebookページ「有機野菜はウソをつく」も用意しました。
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内容的には、近年の農業生産に詳しいバイヤーの方々にも満足いただけるものになったはずと自負しています。来週の今日、2月17日(火)発売となります。お手にとっていただけたらと思います。そして、ぜひご意見をお聞かせください。
※このコラムはメールマガジンで公開したものです。