「ペヤング」の焼そばにゴキブリが混入していたことが、Twitterで写真付きでツイートされたことから始まった事案については、その後まるか食品(群馬県伊勢崎市、丸橋嘉一社長)が、外部機関の分析結果をもとに社内で検証を行った結果、製造過程でのゴキブリ混入の可能性は否定できなかったとして、11日、全工場(本社工場、赤堀工場)での生産自粛および全商品の販売休止を発表しました。
- まるか食品
- http://www.peyoung.co.jp/
当初は「通常の製造工程上、このような混入は考えられない」としていたのですが、結局考えられないことが起きていたと考えられるということです。同社では「一層厳正な品質管理の徹底を図るため、改善諸施策を実施する」ということですが、虫・小動物が入らないクリーンルーム化の程度、油揚げ工程後の画像検査など、キホンのキから見直すことになるのでしょう。
一方、この事案に接して思い出していたのは、2006年不二家で期限切れ原材料使用が発覚したことを契機に、工場内でネズミが捕獲されていたことなど複数の衛生管理上の問題が判明した顛末でした。
その矢先の13日、Twitterで不二家のケーキに「カビ入り」とするツイートが写真付きで投降され、すぐに大々的に拡散される事態となりました。
不二家フードサービスと不二家では15日、「2014年12月13日に、株式会社不二家フードサービスが運営する不二家レストラン古河東本町店店で製造・販売した『ショートケーキS』(ホールケーキ)6個」に「一部スポンジ生地に変色したものがあり、現在第三者機関で調査中です」と発表しました(元ツイートでは「カビ」とされていましたが、現時点では原因物質について言及されていません)。
http://www.fujiya-peko.co.jp/pdf/release20141215_1.pdf
どちらのケースも、製造工程の管理だけでなく、インターネット上に投げ込まれ拡散する情報にいかに対応するべきか、消費者一人ひとりがブロードキャストの手段を持つ時代にどのようなリスクコミュニケーションやクレーム対応の体制を取るべきかを考えさせられる事案です。この分野の手順の標準化や演習は、どの会社にも必要なことになっているでしょう。
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衛生に関する話題をもう一つ。総選挙が終わりましたが、各候補の街頭での演説風景の映像を見ていて、大いに違和感を感じました。ビールケースをひっくり返して、それに乗って演説する候補者が少なからずいました。
“選挙業界”では普通のことなのかもしれません。しかし、ビールケースは人の口に入るものを運ぶための道具です。本来、食器に準ずる扱いを受けてしかるべきものが、あのように用途外の使い方がされることに目をつぶっていていいものでしょうか。
ビールケースをお立ち台にするときは天地さかさまにします。すると取っ手部分が地面に接します。いずれそのケースが物流過程に戻ったとします(あれはビール瓶やパレットと同様、各社が用意して物流網に預けている形なので、戻る可能性は高いでしょう)。ケースは正しい使い方として、それにビールが収められて店に到着するでしょう。店の人はその取っ手部分を持って管理するでしょう。かくして環境中の雑菌はやすやすと店内に入るわけです。店がクレンリネスとサニタリーに気を配っていても、これでは台なしです。
以上は衛生上の問題です。それももちろん重要な話ですが、問題はそれだけではありません。やはり、人の口に入るものにかかわるものを足の下に置くことの印象の悪さには無視できないものがあります。しかも、そうした間違った使い方をするときには、人が情熱をかけて働いている会社のロゴがさかさまにされて、それが土足で踏みつけられるわけです。そういうことがビジュアルとしてどうなのか。全くデリカシーに欠けた話です。
ビールメーカーと酒販店と飲食店は、あのような行為を認めた場合、一件ごとにきちんと抗議するべきでしょう。
※このコラムはメールマガジンで公開したものです。