ここ数年、東京の繁華街では居酒屋やカラオケ店の客引きが目立ちます。かつては夜の繁華街の客引きと言えば風俗営業の店であったと思いますが、最近はそうではない飲食店の客引きも目につくようになりました。
一時は、2005年の風適法改正で“プロ”が一般飲食店の仕事にシフトしたのかとも思いましたが、居酒屋やカラオケの客引きをしている人を見ると、一般のアルバイトらしき若い人が多いようです。
街頭でチラシを配ったり、掲示物を持って立っているだけではいわゆる客引き行為とは見なされないとも聞きますが、中には営業内容や金額を言って客を誘っている人もいて、その方法によっては客引きと見なされ、検挙されることがあるということです。こうした行為を規制・禁止する法令は風適法だけではありません。いわゆる迷惑防止条例のある地域では、その中に規定がある場合があります。また、道路交通法にいう道路の不正使用と見なされることもあります。風俗営業店以外でも検挙例はありますから、一般の飲食店でも注意が必要です。
それにしても、客単価3000円程度までの業態で客引きというのは割に合うものなのかどうなのか、そこは多いに気になるところです。
販売促進費を売上高の3%程度と考えている飲食店は多いでしょう。仮に、客単価3000円の店が、時給900円のアルバイトを外に立たせてお客を誘わせたとします。彼の時給=販売促進費を3%とするには、店は1時間当たり3万円を売り上げる必要があります。居酒屋のお客は、たいてい2時間は座っていますから、客単価3000円の店の場合、お客1人が1時間に店に落とす金額は半分の1500円です。ということは、店内に毎時20人のお客がいれば、1000円を3%とすることが可能です。
というわけで、何もしなければ全く来店が見込めない居酒屋の場合は、外に立たせたアルバイトが1時間に20人のお客を獲得できればめでたしということになります。
では、このアルバイトは外に立っていたものの、彼自身は1人のお客も獲得できなかったとしたらどうでしょう。その場合も、彼の活躍とは全く関係なく20人の来店があれば販売促進費3%はクリアということになります。ということは、何もせずともそこそこ来店がある店の場合、ムダな販売促進費を垂れ流すということはありそうです。
もし、その3%を客引きに使わなければ、どんなことが可能でしょう。
一つ考えられるのは、アルバイトを外に立たせるのではなく、店内で働いてもらうことです。店内の1人の増員は、サービスをきめ細かにしたり、調理のスピードを上げるのに有効でしょう。
あるいは、外に立つアルバイトを廃止して、その費用を原価率に回したらどうなるでしょう。原価率が3ポイント上がると、同種のものでも良質なものを選んだり、ちょっと変わった食材を取り入れたりなど、商品の質をよくすることができるでしょう。
それとも、開発費に充てるのはどうでしょう。売上高の3%もの金額があれば、他店の視察や新メニューの試作がたっぷりできるでしょう。
もちろん、経営は環境次第で打つべき手はさまざまに変わります。このような机上の計算の話など聞きたくないという方はいらっしゃるでしょう。それでも敢えてお話します。《つづく》
※このコラムはメールマガジンで公開したものです。