マメ科植物は種類も多く、農作物としても重要なグループである。その中のダイズは他のマメ科植物と同じく、やせ地でも育ち、一方水はけの悪い土地には向かないなどの特徴がある。日本は多様なダイズ品種を持ち、地域や用途によって適したものを選ぶことができる。
醤油造りのプロが書いた大豆の本。大豆は豆として調理されるだけでなく、さまざまな加工品となることで人類に栄養を供給し、豊かな食文化も花開かせてくれている大いなる豆。そんな大豆はどこから来たどんな豆なのか、そしてどんな可能性を持っているのか。大豆と半世紀付き合って来た技術士が大豆愛とともに徹底解説します。
やせ地で育つが湿地は苦手
ダイズはマメ科ダイズ属の一年生草本である。マメ科は植物界有数の大派閥で種類数が多い。熱帯には70mを超す大樹があり、身近な木本には元歌手西田佐知子さんのヒット曲「アカシアの雨がやむとき」のアカシアやネムノキ、フジ等がある。ダイズを筆頭に農作物としても重要なグループである。
マメ科植物の特徴としてすぐに思い浮かぶのは、窒素を固定する根粒菌の存在である。ダイズも例外ではなく、根粒菌と共生するためやせた土地でも栽培可能である。それでも、収穫を増やすためには、窒素肥料も与えた方がよいという。ただし、生育初期に吸収が容易な無機の窒素成分が多いと根粒の発達を妨げることがあるようだ。対策として、緩効性や有機質窒素が好ましいとする考え方がある。
ダイズは水はけの悪い土壌が苦手である。日本では田んぼの畦によく植えられてきたので、やや意外な気もする。イネの転換作物としてダイズを栽培する場合、田んぼの排水を的確に行う必要がある。また、酸性の土壌も苦手としている。そのため、栽培前に苦土生石灰を撒布することが多い。
ダイズは連作を嫌う植物でもある。「連作障害」という言葉は多様な障害を一括した言葉のようだが、顕著なのは病虫害の被害増である。連作を避けるために、日本ではイネ科を中心にした輪作システムが工夫されている。ダイズの主要生産地であるアメリカや南米では、一般にやはりイネ科のデントコーンとの輪作が行われているようだ。
ダイズの発芽適温は20℃以上で、播種時期は初夏になる。関東地方の例を示すと、5月下旬に播種、夏至を過ぎ7月下旬に開花が始まる。ダイズは日が短くなると花芽分化が促進される短日植物であり、自家受粉を基本としている。盛夏に登熟が進み、10月に収穫となる。収穫までの期間は、早生種の夏ダイズで80~130日、晩生種の秋ダイズで170日程度必要になる。
多様な品種を持つ日本
古くからダイズを利用してきたわが国では、多様な品種を有している。農林水産省では「国産大豆品種の事典」をウェブサイトで紹介している(Webサイト:http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/daizu/d_ziten//全体版のPDF:http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/daizu/d_ziten/pdf/jiten_2010.pdf)。この事典では、用途と地域性という要素で品種を分類している。用途には、煮豆、納豆、豆腐、みそ、枝豆もやし、その他がある。外観や色調がよく、粒度が揃っていることは各品種に共通だが、煮豆用は煮くずれが少ない、納豆用は一般に小粒か極小粒、豆腐は高タンパク質といった特徴が求められる。
現在のわが国でも、品種改良は継続されている。古典的な変異と交配による手法だ。遺伝子組換え技術は有効なため、米国では普通に行われている。しかし、わが国では消費者に受容されていないため通常は採用できない。
改良の目標には、病虫害抵抗性、耐冷性、機械化適性、成分・品質向上等が挙げられる。前述の事典には、成分を改善した品種がその他に登録されている。青臭みの原因となるリポキシゲナーゼを欠いた「きぬさやか」、機能性タンパク質β-コングリシニンに富む「ななほまれ」、低アレルゲンの「ゆめみのり」等である。
従来からの品種と合わせて大切にし、積極的に活用したいものである。