日本の居酒屋に行くと、私が必ず注文する料理がある。それは「角煮」だ。なぜかと言うと、それは、多くの中国人にとってのおふくろの味である「紅焼肉」(ホンシャオロウ)と似ているからだ。
3つの食感が味わえる紅焼肉
中国の代表的な家庭料理の一つである紅焼肉は日本の豚の角煮と似ているが、色鮮やかで香ばしく、ちょっと甘めで濃厚な味付けが特徴である。材料はもちろん豚肉だが、皮付きのバラ肉を使いたい。そうすると、口に入れるたとき、ほっこりと軟らかな赤身、ちょっと油っぽい脂身、歯ごたえがある皮と、3つがそろって絶妙のバランスとなる。軟らかさ一辺倒のきらいがある角煮と比べて、まずここに違いがあると言える。
そして、紅焼肉はガツンと味が濃い。これがあれば、ご飯のおいしさは間違いなく倍増だ。とくに、紅焼肉の汁をご飯にかけて食べたい。コクがある汁と白いご飯を混ぜると、堪らないうまさで、ご飯が何杯でもいけてしまう。
また、紅焼肉は他のいろいろな食材との組み合わせもできる。ジャガイモ(中国語では土豆=tŭ dòu)、栗、干し筍、椎茸などがよく使われるが、中でも最も手に入りやすいジャガイモがいちばん多く使われる。これらはどれでも紅焼肉の肉汁がしみ込んで、一層おいしくなる。
豚の皮付きのバラ肉を!
日本の角煮は紅焼肉と似ているが、作り方や調味料は違うので、本格の「中国料理」ではなく「中華風」であり、「紅焼肉に似た料理」と考えたい。
日本で紅焼肉にさらによく似ている、むしろかなり似ていると感じたのは、沖縄で食べた「ラフテー」と呼ばれている皮が付いている角煮だ。この「ラフテー」から、昔の琉球と大陸との関係も偲ばれる。
日本の角煮は人気のある一品で、もちろんそれはよいのだけれど、日本のみなさんにもぜひ紅焼肉のおいしさを知ってほしい。とくに、皮があることが重要だ。皮がないと、紅焼肉のおいしさは半減してしまう。
なにしろ、豚の皮にも豊富なコラーゲンの価値はよく宣伝され、とくに女性はコラーゲンのあるものを求めている。それなのに、どうして豚の皮付きのバラ肉を日本では売っていないか、いつも不思議に思っている。
ジャガイモ入り紅焼肉の作り方
材料
- 豚バラ肉 500g
- ジャガイモ 2個
- 砂糖 大さじ1
- サラダ油 大さじ1
- ショウガ 20g
- 紹興酒(なければ料理酒) 大さじ1
- 醤油(濃い口) 大さじ2
- 八角 1〜2カケ
作り方
- 豚肉は幅3cm、厚さ2cmほどに切る。ジャガイモも豚肉のサイズと合わせて切る。生姜はスライスしておく。
- フライパンを熱し、サラダ油を入れて、すぐに砂糖を入れる。
- 砂糖が溶けかかってきたら、豚肉を入れて全体にからめるように炒める。
- 酒、醤油、八角を加え、香りが出てくるまで数分ほど全体をよく混ぜ合わせるように炒める。
- 豚肉全体がかぶるぐらいの水を入れ、蓋をして強火で沸騰させる。沸騰したら中火に弱め、蓋をしたまま煮込む。
- 15分ほど経ったところでジャガイモを加えて煮込む。
- 水分がほとんどなくなってきたら蓋を取り、強火で煮詰めて完成。
コツとなるのは、3と4だ。3により、豚肉の表面に甘みと色づけができる。また、4によって脂身部分の脂を出し、油っぽくないように仕上げることができる。
【編集部・齋藤訓之より】
徐さん、紅焼肉はおいしそうですね。ジャガイモとの相性もぴったりなのだと思います。
徐さんのご出身は北の方の西安ですから、麺や餃子や、前回「餅」(簡体字:饼。ビン/bǐng)について書いていただいたように、小麦粉を使ったものを主食でよく食べるのに違いないと思っていましたが、南のイメージがあるご飯に合う料理のお話が出て、おいしい味は共通なのだなと感じました。きっと、各種の餅で包んでもおいしいでしょう。
日本で親しまれている角煮の源流は、杭州料理の東坡肉(トンポーロウ=dōngpōròu)が古く長崎に伝わって卓袱料理にも含まれる東坡煮(とうばに)となり、それが各地に伝えられたもののようです。
それにしても、東坡肉も本場では皮付きの豚肉を使うようです。考えてみますと、私が日本で皮付きの豚肉料理を初めて食べたのは、ドイツ料理店でアイスバインを食べたときで、他では皮付き豚肉は見たことがないですね。日本は肉の食べ方についてまだまだ勉強中の時代のようです。