みなさん、お久しぶりです。今回はインゲンのお話をしましょう。
牛の角のような豆
私がいつも行っているスーパーでは、お盆のシーズンが終わった後は大好きなささげ(長豆角)が見当たらなくなりました。日本ではささげが店頭に並ぶのは6月~8月いっぱいぐらいであるようです。
楽しみが一つなくなって寂しいのですが、似た使い方ができるインゲンがあるから、まだ大丈夫です。インゲンはささげより定着しているようで、日本のスーパーでは一年中手に入ります。
中国では、これを「豆角」(dòu jiǎo)と呼びます。「豆」は豆類、「角」は牛の長い角のような形を意味しています。つまり、文字通り「牛の角のような豆」というわけです。
さて、では日本ではどうしてこれを「インゲン」と呼ぶのでしょうか。調べてみたたところ、これは漢字で書くと「隠元」であるとわかりました。隠元とは、明から日本に渡った禅僧、黄檗宗の開祖である隠元隆琦(1592~1673)のことです。
豆のインゲンは中南米原産とされています。16世紀末にこれがヨーロッパを経由して中国に伝わり、日本には17世紀に伝わったと言われています。その、インゲンを日本に持ち込んだのが隠元とされることから、この名がついたといいます。
人の名前が野菜の名前になるのは珍しいと感じます。それで、このことを知ってから、インゲンを食べるたびに、隠元のことを思い浮かべるようになりました。
中国では八面六臂の大活躍
とは言え、この豆の名「インゲン」は、日本の国内で統一された名称とも言えないようです。たとえば、関西では「三度豆」とも呼ばれています。収穫までの時期が短く、1年で三度収穫できることからそう呼ばれるようです。しかし、私にはこの名がまた趣深く感じられます。つまり、中南米→欧州→中国→日本と伝わった豆ですから、日本にはその三度目の旅を経て伝わったわけで、そのことを指しているようにも感じるからです。
さて、その食べ方。日本では、どうも揚げ物や煮物の飾りのように使われていて、インゲンが主役級に扱われる料理が少ないように感じます。私の知る限り、インゲンがメインとなる料理はごま和えぐらいではないでしょうか。しかし、中国では、炒め物、煮物、餃子の具まで、インゲンをさまざまに使います。
しかし私の好物は、その中でもシンプルなものです――インゲンと卵の炒めをご紹介しましょう。
- 材料:
- インゲン 1袋(スーパーで売っている1袋)
- 玉子 2個
- しょうが 少々
- 白ねぎ 少々
- 醤油 少々
- 作り方:
- 1. インゲンはお湯の中でちょっとゆでて、斜め切りにする。
- 2. フライパンにサラダ油を熱し、半熟の炒り卵を作る。卵を炒めたら、お皿に取り出しておく。
- 3. 再びフライパンに油を少し入れて、しょうが、白ねぎを入れて、ちょっと炒める。香りが出てきたらインゲンと炒めた卵を入れて、強火で炒める。塩と醤油も少々入れて、ちょっと炒めて、完成。