お正月が近づくと、好物のくわい(慈姑)が食べられるようになってきます。これは、この季節の私の楽しみの一つです。
日本では出世・中国では子だくさんのやさしいお母さん
日本では、「食べると芽が出る」とか「芽出たい」とか、出世の縁起物として、おせち料理に使われます。ですから、お正月の前にはスーパーや八百屋さんにはよく並んでいますが、それ以外の時期はあまり見かけないのが残念です。
くわいは、ホッコリとしながらシャリシャリとも感じる独特の食感と、ほろ苦さのなかに甘味が残るのが特徴です。私がくわいを好きになったのは、その食感が気に入ったのと、もう一つ理由があります。
くわいは中国では漢字で「慈姑」と書きます。これは、一つの根にたくさんの子がつくその姿が、子供をいつくしみつつ哺乳する母(姑)のように見えることからと言われています。日本でも漢字で書くときは同じの漢字を使っています。これは、くわいが中国原産であるからと考えられますが、いずれにせよ中国で知られていることと同じ意味を伝えているわけです。
ただ、日本では「くわい」「クワイ」と仮名で書くことが多くなって、「慈姑」という字があまり使われなくなってきているようです。それで、たくさんの子供をいつくしむお母さんの意味が伝わらなくなってきているようで、それがちょっと寂しいです。
ところで、くわいの英語名は“arrowhead”です。これは“arrow”(矢)と“head”(頭)の合成で、「矢じり」のことです。確かに、くわいは文字通り「矢じり」のような形をしています。矢は突き進みます。それは、日本のおせち料理に使われるくわいの出世の意味合いに、実に通じているわけです。そんな日本のくわいに込められた意味を考えると、日本は、中国と欧米の文化を吸収して、融合したとも感じます。
くわいと豚肉の炒めの風味と食感は格別
さて、くわいの食べ方ですが、中国と日本は大いに違います。
日本では、主に含め煮にされます。しかし、中国での定番は、やはり豚肉との炒めものということになるでしょう。炒めると豚肉の脂でくわいの苦味がやわらげられて、またパリパリとした快い食感が残され、私はこれが大好きです。
くわいと豚肉の炒めものの作り方は、普通の豚肉の炒めものと同じです。あまりにもシンプルですから、とくに詳しく書かなくてもよいでしょう。
しかし、食べ方は中国と日本でだいぶ違いますが、やはりくわいは縁起物としての意味が深いです。是非、この異なる食感のくわい料理を食べながら、くわい/慈姑/Arrowheadの意味あいも味わっていただけたらと思います。