折々の中国家庭料理を紹介して、同じ材料を使った日本の料理と較べていきたい。
冬瓜はなぜ冬瓜なのか?
夏の料理で使われる食材には、名前から見ても涼しい感覚が出てくるものがある。そう、それは冬瓜(トウガン)だ。なぜ夏に旬を迎える作物に「冬」という涼しそうな文字が入っているのか。
Wikipediaを見てみたら、日本版と中国版とで異なる解釈が紹介されているのが面白い。
●日本版
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%AC%E7%93%9C
「冬瓜」の表記は、果実を丸のまま冷暗所に置けば、他のウリ類がなくなる冬まで保存できるとされるところからともいう。
●中国版
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%86%AC%E7%93%9C
「冬瓜」が成熟した時、表面には、ざらざら、白ぽい粉のようなものが付いている。それは、冬の白霜と似ているので、名づけられた。
中国のスーパーと市場では、冬瓜を丸ごとで売るケースが多いため、「冬の白霜と似ている」と感じられる。けれども、日本のスーパーでは、冬瓜をカットして、しかもラップで包んで売っていることが多いので、見た目でも手触りでも「冬」の意味を感じ取れないだろう。
※編集部註:Wikipediaは随時書き換えられるため、常に上記の記述があるとは限りません。
夏バテ対策になるスープ
多くの野菜は、中国と日本での名称が違うが、冬瓜はその中でも数少ない同じ文字で書かれる野菜である。しかし、名称は同じでも、食べ方は違う。
日本の居酒屋で冬瓜の煮物を食べたことがあるが、ほかにはどのように使われているかよくわからない。
では、冬瓜を使う中国家庭料理はなんだろう。その一番は、やはり「冬瓜と豚スペアリブのスープ」だろう。
冬瓜と豚スペアリブのスープ
材料:冬瓜、スペアリブ(軟骨付き豚肉)、塩、ショウガ(各適量)。材料はこれだけ、味付けは塩のみだ。
(1)まず、沸騰した湯でスペアリブを煮る。アクと脂を落とし、弱火でコトコトが軟らかくなるまで煮て、スペアリブスープを作る。
(2)冬瓜の種とわたをスプーンなどでくり抜き、カットして皮もむく。
(3)スペアリブスープに、冬瓜、塩、ショウガ(スライス一枚程度)を入れる。冬瓜が透明になったら出来上がり。
薄緑で透明の冬瓜は、軟らかく、あっさりした味。ビタミンB1が豊富な豚肉とビタミンCが豊富な冬瓜のコンビは、夏バテ対策にぴったりだろう。中国式の冬瓜料理を是非試してください。
【編集部・齋藤訓之より】
徐さん、おいしそうな冬瓜料理のご紹介ありがとうございました。
日本でポピュラーな冬瓜の料理と言えば、あんかけでしょうか。だしで煮た冬瓜を、鶏の挽き肉などの入ったあんかけで仕上げるものです。食べるときはアツアツで汗をかきますが、漢方的な言い伝えでは冬瓜は体を冷やすものとも聞きます。
日式・中式とも汁気の多い料理で、この果実の水分の多さや加熱したときの軟らかさを生かしているように感じます。
日本のスーパーではいろいろなものがカットして売られるようになっています。いちばん大きな理由は、世帯当たりの人数が減っていることです。また、都会などでは仕事の帰りに徒歩でスーパーに寄るお客さんが多く、重いものがあるといろいろなものが買いにくくなるためです。
その売り方の場合、切り口の白さも魅力と思いますが、皮の面も見せてコントラストをつけるといいかもしれませんね。どんな食べ物も、元の姿を忘れないようにする工夫は大切だと思います。