日本で「中華料理」として提供されている料理は、本場中国の料理とは異なる料理だ。ただ、それは“現地化した”と言うよりも“進化した”ものと言える。そして、日本人は改めて本場の味に出合ったとき、食べなれたものとは別の発見をして評価する。そのことで筆者が意外に感じた体験を紹介する。
“現地化”よりも“進化した”と言えるギョーザとラーメン
世界のどの国・地域においても、外国発祥の料理が現地化(ローカライズ)された“海外版○○料理”は、一般的に本場の味ではないので、本場の味を知り、本場の味に慣れ親しんだ人々には受け入れられないものだ。もちろん、中国発祥の料理が別の国で現地化された場合もそうだ。前回説明した日本の「中華料理」は、日本で“現地化”されてしまっていて、本家本元の中国料理とは味も違えば食感も違う。
「これは本物ではない」――口に入れる前からそうしたイメージが先行すると、ますます受け入れがたい(日本人も、海外でsushiを食べて文句を言っている人はいるものだ)。
とは言え、日本の「中華料理」の中には、“現地化した中国料理”と言うよりも、一つの“進化を遂げた”と言えるものもある。進化とは、つまり発展である。
おなじみの「焼きギョーザ」と「ラーメン」は、まさにその代表と言える。
水餃子は中国の家庭料理の代表格
日本でギョーザと言えば、やはり焼きギョーザが思いつくが、中国では、普通は“水餃子”である。
餃子は中国の家庭料理の代表格であり、家族が一緒に食べるだけではなく、一緒に作ることがこの料理の大きな特徴であり楽しみだ。中に入れる具も、皮も、包むことも、すべて手作りで、家族全員が一緒に協力して完成するので、家族の匂いも含まれるようで、それが餃子の味をさらにおいしくする。
私が日本に来たばかりの頃、こんなことがあった。たいへんお世話になった日本の友人を自宅に招待したときに、どんな料理を作るか――いろいろ考えた結果、餃子を選んだ。かなり手間がかかるが、やはり、手作りだから、感謝を込め友情に応えるには最適と考えた。
さて、具を何にするか、私は悩んでいた。中国で人気があり、日本人にも受け入れられ、おいしいと感じてもらえる具は何だろう。まだ来日して間もなくだったので、日本人の好みや手に入る食材などについて全く情報がなかったから、余計に悩んだ。
結局、やはり自分がいちばんおいしいと思うものが最善に違いないと素直に考えることにした。私のいちばんのお薦めは、みじん切りのニラと炒り玉子を混ぜた具だ。シンプルと見られるが、ニラの独特の香りが引き出されて、さらに新緑のような緑と黄色の卵の彩りも美しい。これなら喜んでもらえる――私は自分の選択に満足していた。
これはおいしいので、お薦めする。ぜひ作ってみていただきたい。
【ニラ玉子餃子の具】
●材料(2人前)
ニラ1把、卵2個、ショウガ少々、サラダ油・ごま油各少々、塩少々
●作り方
(1)ニラは水洗いしてみじん切りに。ショウガ少々もみじん切り。これらをボールに入れ、適量のサラダ油とごま油で和えておく。
(2)卵は茶碗に割り入れ、塩を少々加えて混ぜ合わせておく。サラダ油を熱したフライパンに流し入れ、炒り玉子を作る。
(3)いり卵を冷ましてから(1)のボールに移し、適量の塩も加えて混ぜ合わせる。
※これを具に餃子の皮で包む。水餃子にしても焼きギョーザにしてもOK。
なお、日本のギョーザの具にはなぜかニンニクが入っているが、これが私にはよくわからない。中国では餃子の具にはニンニクを入れないものだ。本場の味を賞味したいならば、これは覚えておいていただきたい。
「皮がすごくおいしい」と言われて唖然
さて、友人家族が到着して、中国でと同じくみんな一緒に楽しく皮を作り、具を入れて包んだ。そうして完成した手作りの水餃子を出して友人に食べてもらった。
このとき私は、よく考えた末に自信を持ってチョイスした、このおいしい自慢の具がきっと評価されると思っていた。
ところが、友人家族の感想は私が全く予想していなかったものだった―「皮がすごくおいしい」と絶賛したのだ。私はそれを聞いて唖然としたことが、今も記憶に残っている。
「どうして皮がおいしい?」と聞くと、なんと、その皮は「モチモチの食感で、とてもおいしい」と言う。なぜそれでおいしいと感じるのか、正直に言って私はその時理解していなかった。
しかしその後、日本の焼きギョーザに対する認識が高まるにつれて、友人が言ってくれた感想がわかるようになったのだ。
次回は、そのことを含めて、日本で“進化”したギョーザと、ラーメンについてお話したい。