うねやま研究室

「科学的根拠」とは

根拠(エビデンス)に基づいた医療(evidence-based medicine:EBM)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。医療において治療の効果や副作用などの臨床試験による結果(「根拠」)をもとに医療を行うというものであり、「根拠」として採用されるのはできるだけ客観的で正確な最新最良の医学知見です。そんなの当たり前ではないか、と思われるかもしれませんが、EBMの対極にある「三た論法」と比較 […]
Maryanskiのバイテクと食品安全考

メディアとのつき合い方――ときにはつまずくこともある/Working with the Media – Sometimes There is a Bump in the Road

最近、あるバイテク企業に関する海外ドキュメンタリーが、NHKテレビで放映された。その企業の農業バイオテクノロジーに対する姿勢とその技術を支持する米国政府の役割に批判的なそのドキュメンタリーは、インターネットなどでも配信されている。私は、米国食品医薬品局(FDA)の食品バイオテクノロジー政策に関してそのドキュメンタリーのためにインタビューを受けた1人である。そのドキュメンタリーの中で、リポーターは私 […]
うねやま研究室

詐欺的「健康食品」「サプリメント」への対応

近年、食品の機能性についての関心が高まっているようですが、その期待の極端な形が詐欺という形で世界中で問題となっています。日本では「いわゆる健康食品」に分類され、海外では「ナチュラルヘルス製品」「ハーブ」「伝統的漢方薬(TCM)」「サプリメント」などと呼ばれる商品群があります。医薬品ではないものの、濃縮エキスだったり粉末だったりカプセルや錠剤だったりといった形態で、食べて美味しいとはとても言えないよ […]
コロのGM早分かり

毒性が低い除草剤グリホサートのしくみ

こんにちは、コロです。現在、商業的に栽培されていて、日本も含め世界中で食品や飼料などとして利用されている遺伝子組換え作物の主なものには「害虫抵抗性」のものと「除草剤耐性」のものがあります。害虫抵抗性がどのような仕組みなのかをお話しましたので、今回からは、除草剤耐性の遺伝子組換え作物について、少しお話しましょう。
California州OaklandでのFDA食品バイテクノロジー市民集会。
Maryanskiのバイテクと食品安全考

国民の健康保護、世論、そして人的資源の有効利用/Public Health Protection, Public Opinion & Effective Use of Resources

最近、米国で商業販売されている一部のトマトを食べてサルモネラ菌に感染するという食品由来の疾病のニュースがあった。このケースは、健康を司る省庁が十分な人的資源を有し、かつ予期せぬ出来事に備えているということがいかに大切かということを浮き彫りにした。ところが、通常は、そういった組織の人的資源というのは限られている。結果として、国民の健康を効率的に守るために優先順位をつけることが必要となる。時折、国民の […]
うねやま研究室

食品由来のリスクを定量評価する

食品のリスクというと真っ先に思い浮かぶのは食中毒でしょう。一般の消費者には残留農薬や加工食品の添加物が危険だと思っている人が多いかもしれません。今回はそうした食品由来リスクを定量化して評価しようという試みについて紹介してみようと思います。
コロのGM早分かり

抵抗性害虫の発生を防ぐ「緩衝区」のメカニズム

こんにちは、コロです。前回は、Btたんぱく質が効かなくなる抵抗性害虫の出現というリスクを回避のために、緩衝区という、ただ単にBtたんぱく質を持っていない作物を植えるだけの、簡単で有効な手段を持っていることをお話しました。今回は、どうして緩衝区から出てきたたくさんの害虫によって、抵抗性害虫の発達が防げるのかを「生物学的」に説明しますね……とは言っても、できる限り易しくお話しましょう。
Maryanskiのバイテクと食品安全考

米国のバイテク食品安全性評価――FDAは義務化せず/Assessing Biotech Food Safety in the U.S; FDA’s Voluntary Approach

1990年代初頭、日米双方の政府は現代バイオテクノロジーによって開発された食品の安全性を評価するための政策や指針を作成した。日本においては、厚生省(当時)が1991年にOECDの指針を基にバイテク作物の安全性審査のための任意の指針を作成した。しかしながら、2001年にその安全性審査は日本において義務化されることになる。米国では、バイテク食品は今でも1992年に米国食品医薬品局(FDA)が作成した任 […]
うねやま研究室

「環境ホルモン」問題はどうなった?BPAの評価を巡る世界の動向その1

日本では今のところあまり話題になっていませんが、カナダが哺乳瓶へのポリカーボネートの使用禁止を提案し、米国とカナダで報道が過熱しているビスフェノールAの安全性評価について、これまでの経緯をまとめてみようと思います。「その1」としたのは、米国とカナダでは現在パブリックコメント募集中でまだ結論が出ていないことと、これまでの経緯を紹介するだけで相当な分量になってしまうためです。
コロのGM早分かり

Btたんぱく質が効かなくなる害虫抵抗性の出現とは?

こんにちは、コロです。前回は、現在商業化されている遺伝子組換え作物に導入されている性質のひとつである害虫抵抗性のメカニズムについて解説し、害虫には殺虫効果があるBtたんぱく質が、人などの動物の健康にはまったく影響がないことをお話ししましたね。わかりやすかったでしょうか?そろそろ暖かくなって、害虫も目を覚ます季節になってきました。そこで今回は、「遺伝子組換え技術」のリスクではありませんが、Btたんぱ […]
Maryanskiのバイテクと食品安全考

バイテク食品、変わる受容/Evolving Acceptance of Biotech Foods

韓国のでんぷんメーカー数社は近頃、非バイテク・トウモロコシの価格高騰を受けて初めてバイテク・トウモロコシの購入を決定した。韓国においてバイテク・トウモロコシがコーンシロップやブドウ糖といった食品の原料として使われるのはこれが初めてである。現在、韓国、そして日本でもまた、バイテク・トウモロコシは主に家畜の飼料として使われている。日本でのバイテク作物の食用としての利用は、醤油やナタネ油といった加工度の […]
実験に使われた色素を入れたオレンジジュース(ニュージーランド・ESR、Peter Cressey博士提供)
うねやま研究室

子どもの多動と食用着色料の関連を示唆する研究をEFSAが評価

2008年3月14日、欧州食品安全機関(EFSA)が、食用色素と安息香酸ナトリウムによる子どもの行動への影響に関する論文についての評価を終了し、プレスリリースを行いました(EFSAは食品添加物と子どもの行動に関するサウサンプトン研究を評価する、McCann らのある種の色素と安息香酸ナトリウムの子どもの行動に与える影響に関する研究の評価結果―AFCパネルの意見)。内容についての日本語での概要はこれ […]
コロのGM早分かり

有機栽培にも役に立っていた害虫抵抗性GM作物の導入遺伝子

はじめまして、コロと申します。遺伝子組換え(GM)技術や、それを応用して育種された作物は、食糧増産、土壌劣化や水不足、地球温暖化などの環境変化への解決策の1つとして、大いに期待されています。しかし、科学的な説明が十分にされていないため、とても分かりにくく、議論も滞りがちです。私たちの地球の将来のためにも、ここでしっかり議論を進めなければ…。そこで今日から、相棒のルルとともに、遺伝子組換えで何が議論 […]
Maryanskiのバイテクと食品安全考

バイテク作物の商業化――アジアが躍進/Commercialization of Biotech Crops: Asia Moves Forward

バイテク作物の生産は、1996年に初めて商業栽培されてから年々増加している。現在、栽培面積は1億ヘクタールを超え、世界23カ国で栽培されている。Clive James氏率いる国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の最新レポートはそう記している。しかし、その中に、私が第2の故郷と定めた日本は含まれていない。  The commercial production of biotech crops has […]