うねやま研究室

トランス脂肪酸の表示に潜む問題

このたび消費者庁でトランス脂肪酸の表示についての検討が始まったようです。これは、トランス脂肪酸の表示について検討するように福島瑞穂消費者担当大臣から指示があったためであり、福島大臣が指示した理由は消費者からの要望に応え、今までとは違う、目に見える成果を出したいためであるようです。昨年トランス脂肪酸のリスク評価と各国のリスク管理について説明をしましたが、今回はその後の状況についてまとめました。
Maryanskiのバイテクと食品安全考

やはり目を引くのはパッケージ前面の任意表示? 食品パッケージ前面表示に目を光らせるFDA/It’s What’s Up Front that Counts: Front of Food Package Label (FOP) Gets FDA Scrutiny

米国の食料品店では、スナック菓子や加糖シリアルなど様々な食品がそれらの栄養特性を表わすことを目的とする絵や数値があしらわれて販売されている。この表示は生産者側の任意表示であり、店頭表示と呼ばれるものの一つである。米国食品医薬品局(FDA)は、消費者や連邦議会議員から食品表示、特に「パッケージの前面」表示の内容についての問い合わせを受け、注意を払うようになった。パッケージ前面表示の新しいタイプの一つ […]
うねやま研究室

「エコナ」問題の本質はどこにある?

FoodScienceで「エコナ」関連記事が多く出ています。「エコナ」問題の課題は、新たに発見されたハザードへの対応と、特定保健用食品(トクホ)という制度がはらむものとの2つに分類できます。新たに発見されたハザードについてはこれまでもトランス脂肪酸やアクリルアミドという事例があったのですが、グリシドール脂肪酸エステルだけがこれだけの騒動になったのはなぜなのでしょうか。トクホについては国際的に認めら […]
読み書きバイオ

百聞は一見にしかず――遺伝子組換え作物展示栽培の意義

 テレビなどを見ていると、「天然ですから、安心ですね」などというセリフが当たり前のように繰り返されている。そして「もちろん、遺伝子組換えなどは使っていません」と続く。これを毎日刷り込まれていれば、農薬も遺伝子組換えも避けたいと思うのが当然だろう。私たちは、身近に実物がなければそれがどんなものか確かめられないから、このような発言や表示から想像してそれを恐れるようになるのかもしれない。遺伝子組換え作物 […]
うねやま研究室

食品個々の特定栄養素を近視眼的に追求しても意味がない

前回、英国食品基準庁(FSA)が発表したオーガニック(有機認証)食品の栄養価と健康影響についての科学的根拠を吟味したレビューについて、背景と要旨を紹介しました。このレビューの「科学的」内容について、さらに説明が必要であると感じましたので続けます。2008年8月の記事で「科学的根拠」とは、ということを一度話題にしているのですが、大切なことなので繰り返します。
Maryanskiのバイテクと食品安全考

日本の消費者庁、政権移行の最中に始動/Japan Opens a New Consumer Agency in the Midst of Government Transition

消費者製品の欠陥、あるいは不正表示にからむこのところの問題を受けて、日本の政府は消費者利益を守ることを任とする新しい機関を設けることになった。米国政府も国民の信頼を高めるため1970年代に同様の行動を取った。日本の新しい消費者庁は、2009年9月1日、過去50年で最も歴史的な国政選挙のわずか数日後に発足した。消費者庁の役割は米国の消費者製品安全委員会(CPSC)と同じようなものだが、しかし決定的な […]
うねやま研究室

英国におけるオーガニック・パニック

英国食品基準庁(FSA)は2009年7月29日、オーガニック(有機認証)食品の栄養価と健康影響についての科学的根拠を吟味したレビューを発表しました。通常農法による食品と比較して、オーガニック食品の栄養学的優位性は認められず、健康影響についても特に良い影響があるとは言えない、というのが結論でした。そして最も重要なことは、有機食品が優れていることを証明しようとして行われた数多くの研究のほとんどの質があ […]
読み書きバイオ

言葉のイメージに負けないために、遺伝子組換え作物をバイオテク作物と呼ぼう

2009年4月、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)会長のClive James博士にお目にかかったとき、日本の関係者が、「遺伝子組換え作物・食品(GMO)」という言葉を使うたびに、「『バイオテク作物・食品』と呼ぶように」と正されていたことが印象深く残っている。私にとって「目からウロコ」ともいうべき出来事だったが、それは、「バイオテク作物という呼び方は、作物が様々な育種の手法を経て生まれており、組 […]
うねやま研究室

EFSAの食品の健康影響評価は厳しすぎるのか?

食品の栄養価や健康影響に関する情報は、世界中で消費者のニーズが高いものであると同時に、世界中で誤解を招くものや虚偽・誇大広告の類が問題になっているものでもあります。今回は、現在ヨーロッパで進行中の新しい表示規制の一部について、紹介してみようと思います。
Maryanskiのバイテクと食品安全考

バイテク表示:「消費者の知る権利」と多くの国は言う――なぜ米国は違うのか?/Biotech Labeling: A Consumer’s Right to Know? Many countries believe so. Why is the U.S. Different?

およそ30カ国が、消費者向けに販売される食品は現代バイオテクノロジーを用いて開発された作物が使用されていることを表示しなければならないと義務づけている(生産方法の表示)。そのほとんどの国では、この表示義務は食品が現代バイオテクノロジーを使って作られたものであると知りたいという消費者の要求に応える政府の義務(少なくとも必要なもの)として捉えられている。この種類の表示を支持する人々は、健康への懸念から […]
読み書きバイオ

遺伝子組換えの理解に関する研究が進んでいます

スーパーなどの店頭で「無添加、無農薬、非組換え」をセールスポイントにしている食品が並んでいます。これらを見るにつけ、食品添加物のお陰で腐敗から、農薬のお陰で寄生虫から、私達は解放されたのに……と思います。遺伝子組換え技術のお陰で、人口増加、耕作地減少、食料自給率39%(2006年)でも食料不足にならないで済んでいるのにと思います。食品添加物、農薬、遺伝子組換え技術の誕生の背景と現状(安全性評価など […]
うねやま研究室

新型インフルエンザの安心宣言から「安全・安心」を考える

日本国内では峠を越えた感のある新型インフルエンザ「騒動」ですが、オーストラリアなどでは感染は拡大中で、世界レベルではまだまだ終息したとは言えない状況です。このインフルエンザ騒動の中で、神戸市や兵庫県が「安心宣言」をしたと報じられました(「神戸 ひとまず安心宣言」「新型インフルエンザひょうご安心宣言」)。
うねやま研究室

FSAのカドミウムの週間耐容摂取量の引き下げで、どうする日本?

2009年3月20日、欧州食品安全機関(EFSA)の汚染物質に関する科学委員会(CONTAMパネル)が、カドミウムの週間耐容摂取量(TWI)をこれまでの暫定値7 μg/kg体重/週から2.5 μg/kg体重週に引き下げるという結論を発表しました。この引き下げは、これまでの値がカドミウムによるヒトへの腎障害を指標に設定されていたのに対して、新しい評価では腎臓の尿細管機能障害の指標とされる尿中β2ミク […]
Maryanskiのバイテクと食品安全考

バイテク作物の新しいたんぱく質に対するアレルギー反応の可能性評価――開発企業や規制当局には困難な課題/Assessing the Possibility of Allergic Reactions to New Proteins in Biotech Crops Poses a Difficult Challenge for Industry and Regulators

現代バイオテクノロジーは、植物育種家に多様な生物に由来する潜在的に有用な形質(遺伝子)を利用する道を開いた。遺伝子導入方法を用いて得られた経験から、遺伝子は新しい宿主において予想通りに機能するということが示されており、従って現代バイオ技術を用いることによって特有のリスクが生じることはない。ある遺伝子の発現産物は通常たんぱく質であり、バイテク食品中のそういった新しいたんぱく質の安全性は、安全性評価の […]