「よい農産物」とはどんな農産物か?

「天然物なら安全」と考えるのは誤り

さて、木酢液の使用や流通は、上記のように条件付きながら法令上は問題ないのだとして、では、これを現実の安全性で考えた場合はどうなのだろうか。 登録農薬よりも安全とは考えられない  筆者の考えとしては、木酢液を食用・食品原料となる農産物に使用することには疑問がある。少なくとも、収穫物に直接散布するようなことは、避けたほうがよいと考えている。  木酢液は天然物由来ではあっても、その製造過程で各種の有機化 […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

特定農薬に指定されていない木酢液

リスクの考え方、農薬の一般的な説明と現在の日本の農産物の残留農薬の状況について説明してきたが、これらを危険・安全どちらと考えるか、仕事や生活に受け容れるかどうかの判断は、新幹線を利用するか利用しないかを考えるのと同じように(第2回参照)読者一人ひとりに委ねられている。 “農薬ならぬ農薬”木酢液をどう考えるか  ところで、ここで“農薬ならぬ農薬”についてお話しておきたい。すなわち、天然物由来の各種資 […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

市販農産物による健康被害の可能性は低い

また、残留農薬の基準を超えていると聞くと、あたかも農薬がベットリと付着しているイメージを抱くかもしれないが、そのイメージは修正する必要があるだろう。ポジティブリストに入っていない農薬の残留基準は一律に0.01ppmである。1ppmというのは100万分の1ということだから、0.01ppmとは1億分の1ということだ。  100gの農産物から100万分の1gの農薬が検出されると、残留農薬の基準を超えてい […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

「240万件のうち65件に残留」をどう評価するか

現在日本で市販されている農薬は、使用量、使用回数、使用方法、収穫までの日数による制限など、使用に際してのさまざまな事柄が細かく定められている。1作の中で定められた使用回数を超えて使用してはならないし、収穫日に近い日に使用する場合も、収穫までの日数によって使用できるか、できないかの制限がある。これら使用基準を守っていれば、残留基準を超えないという基準である。 農薬の残留基準は個別に厳密に定められてい […]
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絶対的な評価を下したい心を警戒する

ところが、人はわかりやすい一般的な解決策を求めたがるものだし、どこかに何にでも効く万能薬があると信じたがる傾向がある。それで、栽培の勉強会で最も多く質問されるのがこの質問である――「何かよい肥料/農薬はないですか?」  この質問の意味は、「効果が高く、安くて、副作用がない肥料/農薬はないか」ということだ。  筆者はこの質問が出たとき、必ず反対に質問することにしている――「石灰はいい資材だと思います […]
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50年前の考え方で今日の農薬を評価することはできない

消費者の間ではよく理解されていないが、農薬はこの50年あまりの間に大きな変化を遂げている。「沈黙の春」(レイチェル・カーソン)が発表された1960年代から「複合汚染」(有吉佐和子)が発表された1970年代の農薬と、今日の農薬とを同じように考えることには無理がある。 現在の農薬は危険性がコントロールされている  まず、これまで述べたような残留性のある化学合成農薬の大部分は、すでに淘汰され、黎明期の農 […]
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化学肥料の問題点は“依存”にある

先に、化学肥料を与えるだけの栽培を続けていると、農産物を生産する畑としての機能を失ってしまうと書いた。そのメカニズムをもう少し詳しく見ておく。 化学肥料自体に問題はなく化学肥料依存が問題  化学肥料というのは、植物に必要な栄養分を人工的に化合して作ったもので、たとえば窒素肥料であれば、窒素と別の物質がくっついている。窒素肥料の代表的なものに硫安があるが、これはアンモニウムイオン(NH4+)と硫酸根 […]
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有機栽培は作物の安全・安心のためではなかった

農薬にはどのような危険があるだろうか。また、どの程度危険なものなのだろうか。これはものによって一様ではなく、時代によっても異なる。たとえば、化学合成農薬の中でも、かつて販売されていたり広範に使用されていたものには、かなり危険なものがあったが、今日流通している農薬は、それらとはまた事情が異なる。 農薬の急性毒性・残留性・催奇性  農薬の危険性として、まずいちばんわかりやすいものは、飲むと死んでしまう […]
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有機農業を理解するには農薬と化学肥料を理解する必要がある

現在、安全や安心な農産物と言った場合、多くの人がイメージするのは、“科学技術に頼らない”有機栽培などの栽培方法を行なっている農産物ということになるだろう。では、有機農産物は実際に安全・安心で栄養価が高いと言えるだろうか。 化学農業時代が有機栽培を生んだ  それを考える前に、まず有機栽培とは何かということを押さえておきたい。  かつて化学肥料は“金肥”(きんぴ)などと呼ばれていた。金で買う肥料、高価 […]
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時代によって変わった“安全”の中身

前回の、利益(ベネフィット)と危険性(リスク)を秤にかけて考えるということは、もちろん交通機関だけの話ではない。危険性を最少にするという努力こそ、あらゆるリスク管理に通じる対応だと言うことができる。 安全でなければ危険ということではない “安全ではない”=“危険で利用できない”ということにはならないのだ。「誰も安全と言い切ってくれないから危険」ということにもならない。  裏を返せば、便利だと使われ […]
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安全と断定できない新幹線を利用するのはなぜか

それにつけても、“安全”というテーマは書きにくいものだ。まず第一に、安全という概念を説明するのが難しい。  安全とはいったい何か?  農産物の安全性について考える前に、安全ということについて、ちょっと考えてみたい。 新幹線は安全な乗り物か?  実は、「安全」と言い切ることは不可能というほど難しい。たとえば、「新幹線は安全な乗り物だ」と言えるだろうか?  日本の新幹線は、これまで死亡事故が起きていな […]
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農産物を評価するには実態を知る必要がある

かつてないほど、農産物の安全性が注目されるようになってきた。口にする食品であるから安全性が大事であるのは当然のことだが、農産物ほどさまざまな観点から安全性が注目されているものはないだろう。 需要の現場に生産の現場の情報が不足している  現在の日本では、食品が安全であるというのは大前提で、食中毒はおろか表示ミスがあったというだけでニュースになるほどだが、実際には、世界的に見ても日本は食に関して最も安 […]