水田の追肥作業(記事とは直接関係ありません)
「よい農産物」とはどんな農産物か?

一般の窒素肥料の与え方は間違っている

ここまで作物の生理について説明してきた。ここまでのことを理解していただければ、植物が健康である状態を理解しやすくなる。植物にとって重要なことは、根の張りと、土壌中の窒素の量が多いか少ないかの2点であり、有機栽培であろうと慣行栽培であろうと、この2点さえ押さえれば作物の健康状態を崩す心配はかなり抑えることができる。 発芽期に窒素肥料を与えるのは誤り  第20回で、どのような栽培方法を用いても、その栽 […]
根の張りを振り返る農家(記事とは直接関係ありません)
「よい農産物」とはどんな農産物か?

根の張りと窒素の量が決め手となる

生長のステージの移り変わりがうまくいくように、作物の健康状態も見きわめて対応する。そうした管理が重要であるということは、有機栽培であろうと慣行栽培であろうと同じことだ。この栄養の移り変わりが上手くいけば、良質のものが出来やすくなる。 肥料を効かせるタイミングが重要  そこで用いる肥料が化学肥料であろうと有機肥料であろうと、タイミングが合って的確に効かせられるかどうかが重要な問題であり、肥料がどうや […]
管理機の一つ(記事とは直接関係ありません)
「よい農産物」とはどんな農産物か?

重要なのは栽培管理であり有機栽培か否かではない

有機栽培でも一般の栽培(いわゆる慣行栽培)でも、栽培の管理がうまい人の農産物は比較的おいしいし、おそらく栄養面でも良好となる傾向があるはずだ。 有機栽培と慣行栽培は対立概念ではない  栽培というものは、耕して種を蒔いたら収穫までほったらかしというものではない。生産者は状況に応じて作物や土にさまざまな働きかけを行って、作物が健康に育つようにする。それが農業で言う管理だ。  管理がよく作物が普通に健康 […]
堆肥舎(記事とは直接関係ありません)
「よい農産物」とはどんな農産物か?

栽培方法の基準だけで品質はコントロールできない

前章では、作物の品質を決める要因として、栽培に適した地域・条件、旬、鮮度品種がとくに重要なものとして挙げ、栽培方法による違いはあまりないといったことを述べた。以下ではもう少し踏み込んだ解説を行いたい。 レシピだけで料理の善し悪しは決まらない  栽培方法に名前の付いたものは数あるが、その中で最も知られているのが有機栽培である。ここでは有機栽培を例として挙げて、栽培方法と品質の関係について述べていくが […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

農産物の品質の適正な表示を考える

作物の栄養について書いたが、有機栽培のものが優れているという表示や広告には注意が必要だ。 有機栽培と慣行栽培で栄養価の違いはない 「有機栽培だから栄養面で優れている」といった表示は、現在イギリスでは禁止されている。2009年7月、英国食品基準庁(FSA)はオーガニック(有機認証)食品の栄養価と健康影響についての科学的根拠を吟味したレビューを発表した。それによると、「通常農法による食品と比較して、オ […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

農産物の品質を客観的に表現できないか

おいしい農産物の基本的な条件として、とくに(1)栽培に適した地域・条件で作られていること、(2)旬のもの、(3)新鮮なもの、(4)品種の特徴としてうまい、(5)栽培方法がよいを挙げた。そして、(5)があったとしても、本来最重要である(1)~(4)が満たされなければ、おいしいものは提供できないと書いた。 味のよさを客観的に伝える試み  それでは、(1)~(4)の条件が満たされた中で(5)を取り入れる […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

おいしい農産物が出来る条件

これまで農産物の安全性について書いてきたが、次に農産物の品質について考えてみよう。農産物の宣伝文句でよくあるのは、「おいしい」「本物」「栄養価が高い」などだ。まずは、「おいしい」ということについて考えみよう。 おいしいかどうかは食べる人が決めるもの  農産物は食べ物であるから、「おいしい」という惹句はある意味必須かもしれない。しかし、筆者が気になるのは、「おいしい」を主張することが、他は「おいしく […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

食品中の放射性物質は新基準値なら安全と言えるか

さて、国の定める基準値内のものでも不安だという声はよく聞くところだが、これがどの程度のものなのか見ておこう。 “年間1mSv”を超えると危険なのか 「食品中の放射性物質放射性物質の新たな基準値」(新基準値。http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf)は、「放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を年間1mSvとし、これを元 […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

放射性カリウムによる内部被曝から基準値のレベルを考える

植物の3大栄養素の一つであり、人間にとっても必須の栄養素であるカリウム。これに含まれる放射性カリウムをどう考えるか。以下は、以前筆者のブログに書いたものを一部修正したものだ。Bq、Sv等の単位は前回末尾の註を参照されたい。 ヒトの体内の放射性カリウム  放射性カリウムは人工的に作られることはほとんどない。地球が生まれたころから存在しているもので、半減期は12.8億年。普段の生活で最も内部被曝が多い […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

東京電力福島第一原子力発電所事故以降の農産物は安心と言えるのか

ここまで安全な農産物に関連する事柄をいろいろと書いてきたが、現在の日本では放射能の問題を避けて通ることはできない。放射能は、農薬の問題以上に不安をかき立てているだろう。これについて筆者の考えを述べたい。最初に結論を書いてしまうと、現在日本国内に流通している農産物は、この点でも非常に危険が少ないと考えている。 基準値引き上げは放射能汚染がひどいからか  最初にお断りしておくが、筆者は農業現場とくに栽 […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

窒素過剰は堆肥・化学肥料共通の問題

先にも説明したように、堆肥というものは一様ではない。材料も、醗酵の程度もさまざまである。そこで注意すべきは、未醗酵すなわち未熟な堆肥が完熟堆肥と同じように扱われている現場が非常に多いという点だ。未熟な堆肥は窒素量も多い上に、即効的に窒素が効くので、窒素過多による障害も起こりやすい。 未熟堆肥には衛生上の問題もある 「未熟な堆肥」という言葉が曲者である。果実などであれば未熟なものにもそれなりの使い途 […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

堆肥を使えばよいというものではない

多くの方は、栽培の現場に行って土壌に堆肥を投入しているのを見たり聞いたりすると、「土作りを一生懸命行なっている」と受け取って感心する。“堆肥を使う=よいこと”と手放しで評価する向きも多い。 堆肥を使うと窒素過剰になりやすい  ところが、堆肥には窒素が大量に含まれているものが多い。有機物が醗酵し、いわゆる堆肥と言われる状態になるためには、窒素成分が必須であり、簡単に言えば窒素成分がある状態を作ってや […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

硝酸態窒素が増える問題の本質

さて、硝酸態窒素が人体の中でどのように亜硝酸に変化するのかがわかってきたのは、ここ20年ほどのことのようである。硝酸態窒素は問題であるとして取り上げられるようになった1940年代には、はっきりとわかっていなかったらしい。 硝酸態窒素の危険性についての学界の評価  この最近の研究成果や硝酸態窒素の危険性について詳細に書かれている書籍があるので、興味のある方は読んでいただきたい。 ※「硝酸塩は本当に危 […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

化学肥料を使う農産物の安全性

次に化学肥料について、農産物に与える影響について書いてみよう。 化学肥料を使っても植物が吸収するものは同じ  まず、第一に押さえておきたいのは、化学肥料を使用したからといって、農産物が人体に危険を及ぼすようになるような心配は全くないということだ。土壌中にある栄養分が天然由来や堆肥等であろうと、化学肥料であろうと、植物がある成分を吸収した場合、植物の体に入る成分は同じものであるということだ。  先に […]
「よい農産物」とはどんな農産物か?

「天然物なら安全」と考えるのは誤り

さて、木酢液の使用や流通は、上記のように条件付きながら法令上は問題ないのだとして、では、これを現実の安全性で考えた場合はどうなのだろうか。 登録農薬よりも安全とは考えられない  筆者の考えとしては、木酢液を食用・食品原料となる農産物に使用することには疑問がある。少なくとも、収穫物に直接散布するようなことは、避けたほうがよいと考えている。  木酢液は天然物由来ではあっても、その製造過程で各種の有機化 […]