現在の中国でコンビニエンスストア(以下CVS)があるのは沿岸部や大都市に限られる。日本のように全国津々浦々でインフラとして機能するまでには至っていないが、それでも日本同様に、商品の販売だけでなく、公共料金の支払いや宅配便への対応などが進んでいる。
ベンチマークされ地元系に圧倒される日系CVS
中国に日本のCVSが出店したのは、1992年のセブン-イレブンが最初である。その後、ローソンやファミリーマートが追随した。筆者が多くの情報を得ている青島市では、イオン系のミニストップも頑張っている。
しかし、その後日系CVSは中国企業にしっかりと研究されている。同様の商品揃えは中国勢には簡単に対応できる。そのため、近年は地元系のCVSが台頭している。
そして現在、中国のCVS市場は毎年2桁の成長が続いている。2018年の売上は約3.4兆円で、前年比19%増だった。トップグループは地元系で、上位10社(店舗数ベース)に含まれる日系CVSは、7位ファミリーマート、9位ローソンで、セブン-イレブンは11位である。先鞭をつけた日系は、すでに後塵を拝する立場になっている。
トウモロコシと煮卵がある中国のCVS
中国のCVSの状態を紹介しよう。日系と地元系とを問わず、営業内容に大差はない。以前は営業時間が短かったが、現在は24時間が一般的である。
入口付近におにぎりやサンドイッチ、パン類が並ぶ。当然だが、具材は日本と異なる。おにぎりの具は食肉類の小間切れを醤油などで味付けしたものが多い。サンドイッチの中身は日本と大差ないが、ハム類は見劣りする。
これらにおでん(関東だき)や中華まんが加わる。おにぎりもおでんも、日系CVSにより中国に導入された食文化である。と言ってもおでんのタネは異なり、ねり物が多いのではないだろうか。また、カウンターフーズの中国ならではの状況として、蒸かしたトウモロコシや煮卵があることも指摘しておこう。
ハーゲンダッツのアイスクリーム・ケースを備えていることが少なくない。ホテルも同様で、消費者の強い支持があるようだ。
また、日系CVSに由来するとされるイートイン・コーナーを設けている店舗も多い。
日本と異なる点としては、コピー機は設置されていない。商品では、文房具の扱いを見たことがない。同様に、雑誌類や書籍も見かけない。
ちなみに、中国でも、ファッションなどをテーマにする月刊誌があることは確かだ。ただし、日本のような週刊誌は皆無だと思う。日本の週刊誌は政権批判のフェイク・ニュース(?)や芸能人のゴシップが満載である。後者はともかく、前者に関しては中国で許されるわけがない。
書籍は多数出版されている。深センで立ち寄った書店では、日本人作家の書籍がずらりと並んでいた。現代の人気作家・東野圭吾や、やや昔の吉川英治などがあったことが印象に残っている。ただし、日本に比べると書店は圧倒的に少ない。日本同様、中国の書店も経営が苦しいと聞く。ネットで入手する人が多いようだ。
日系CVSの強みを活かして巻き返しを
中国で滞在を延長して、私的に宿泊することがある。自費になるため、安価なホテルを選択する。その場合、湯沸しポットはあっても、冷蔵庫はない。ポットがあれば、朝食はカップ麺で済ますことができる。それに果物を加えることができれば、より好ましい。ただ問題は、夏季である。日本人として、常温のビールを飲むわけにはいかない。
近くにCVSがあれば、必要なときに冷たいビールを入手できる。そのとき、日系CVSがあればより安心できるためうれしい。
前述のように、現在の中国において、日系CVSは地元系に押されている。生残るためには、日系CVSの強い点を見直し、臨機応変の努力を重ねる必要がある。日本のヒット商品の中から、中国の消費者に支持される商品を導入することは重要だろう。たとえば、アイスクリームについて触れたが、多様なスイーツ類はその候補になると考える。