日本人では魚介類は身近で重要な食材であるが、中国でも魚介類はよく食べられ、種類も多い。
日本人にとって、魚介類は古くから極めて重要な食材であった。江戸時代は、タンパク質の多くをこれらと大豆に頼っていた。日本は小さな島国であるが、それだけに海が近い土地が多く、地域ごとに独特で多様な魚介類が利用されてきた。
対して中国は大陸にある国だが、魚介利用の歴史と多様さは決して負けていない。海岸線の長さから、魚介類の生息状況は地域により大きな違いがあることは間違いない。そして、現在では内陸部であっても海産の魚介類を入手できるようになっている。
超市とレストランが扱う新鮮な魚介類
今回ここで紹介する話題は、山東省青島周辺の状況に基づく。ここは海が近く、魚介類が豊富で、重要な食材になっている。
以前の記事で、食品市場(本連載第5回)や露店(本連載第11回)において、魚介類や食肉が店頭で常温で扱われていることを記した。だが、決して多くはないが、日本のスーパーと同レベルの高度な衛生状態にある店舗(大規模超市)が存在する。そうした店舗では、砕氷の上に魚類を並べて販売している。
見慣れない魚もあるが、最初の写真の左脇のタチウオの右隣はマナガツオで、右のイカの奥に並ぶのはサンマだろう。値札を見ると、20〜30元/500g(1元=約15円)程度と安価だ。サンマは9.9元とさらに安い。一方、日本で一般的なイワシ、アジ、サバは当地では見たことがない。
海鮮料理店でも、やはり砕氷を用いて魚介類を陳列している。また、生け簀や水槽などで活物を扱っている例も多い。ただし、活物は貝類や甲殻類が主体で、魚類は少数である。これらに必要な海水は別途運んで来ており、店舗脇にタンクが設置されている。
貝類では、カキ、アサリ、アカ貝、マテ貝、バカ貝、ツブ貝、イタヤ貝などが一般的だが、サザエは見たことがない。他の軟体動物では、タコ類やイカ類がある。甲殻類では、大小のエビ類、マルガニ類、シャコ類の他に、高価なタラバガニやイセエビを水槽に入れている店舗がある。棘皮動物門のナマコを扱うケースもある。また、メジャーではないが、同門のヒトデや、正体不明の動物も並んでいることに触れておこう(この記事の最後の写真)。
ぶつ切りはあるが切り身はない
魚類の扱いとしては、丸のままの他、「ぶつ切り」の魚は散見するが、日本で一般的なサケやブリなどの「切り身」は見かけない。
また、1枚目の写真の中央のイカと右奥の魚(魚種不明)は冷凍だった模様だが、そのことを示す表示はなかった。
また、青島の土産物店では真空パックした干物らしき商品が販売されている。エビや小魚などの乾物は市場や大規模超市や土産物店でもよく見かける。日本でもなじみのあるイカやタラを原料としたいわゆる珍味類などの加工品もある。
魚介類の料理方法は、炒める、蒸す、揚げる、煮る、スープにするなど多様である。たとえば、アサリは炒める、シャコは蒸す、小さい魚類は揚げる、大型のカレイは煮るといった具合である。ナマコは薬膳スープで提供されることが多い。個々の料理については改めて紹介したい。
また、中国でも、刺身やすしといった日本料理を味わうことができる。ただし、食材となる魚介類は種類が限定されている。安全面に配慮しているのだろう。それらは、今回記した魚介類とは違うものであり、流通も異なっていることがわかる。日本料理については改めて触れたい。
なお、カキを生で食べる食文化がないのはとても残念である。