フード・エキスポのスタートに当たっては、日本および香港の要人と出展者、関係者を集めてのネットワーキングディナーという夕食会が持たれるのが恒例となっている(今回は2日目の夜に開催された)。
牛トレサのしくみに感嘆の声
例年、日本と香港の著名料理人が食材選びから当日の調理まで担当するが、今回は「つきぢ田村」の三代目主人田村隆さん、「日本橋ゆかり」三代目主人野永喜三夫さんらが腕を振るった。
当日の料理の例を下欄に写真で示すが、今年はとくに分子料理的な技法と絵画的な盛り付けが出席者をうならせていた。
また、今回の席上でとくに反響があったのは、日本の牛肉のトレサだった。全員に配られた献立表にはQRコードの付いたシールが付いていた。和牛料理が出たとき、農畜産業振興機構の強谷雅彦さんが立ち、スマホを使ってそのQRコードを読み込めば、この牛肉の生産履歴とグレードがわかると説明した。出席者は、これを聞いてさっそくスマホを取り出して試し、実際に情報が示されるのを確かめると、場内は感嘆の声に包まれた。
もともとは日本国内でのBSE発生を受けて、安全・安心の確保のために取り組まれ、構築された仕組みだが、これが付加価値を生む体験につながることを証明するような瞬間となった。
ネットワーキングディナーはもともとは親善と交流のために企画されたものだが、香港の関係者に日本の食材をまず贅を尽くし手の込んだ最新の料理として紹介することの意義は大きい。富裕層から始まった流行、高級品として始まった流行はすたれにくいと言ったのは、日本の著名なビジネスパーソンである故・藤田田さんだが、そのことに沿う流れが期待できるからだ。
フード・エキスポには、このように、展示会場とは別のプロモーション機能が用意されていると言える。