弊社指定資材を使ったタマネギ生産を引き受けてくれるところを探していて、先日淡路島の生産者で仲卸の新家青果を訪問した。そのときの出張報告書を一部公開する。
出張報告書
日時 2012年3月13日(火)
訪問先 新家青果(兵庫県洲本市五色町)
淡路島産タマネギの再興目指す
新家青果は淡路島のタマネギ仲卸で60年継続している伝統のある会社である。
淡路島のタマネギを集荷・選荷をして市場に出すことをメインの業務にしてきたが、「淡路島産」ということだけで差別化できていた時代は終わり、新たな展開が必要になってきている。また生産者の高齢化も深刻で、三代目新家春輝社長が就任した2003年頃には、社長が小学校のときと比較して淡路島産タマネギの生産量が約半分に落ちてきていた。このままでは淡路島ブランドのタマネギは廃れてしまうと、差別化ポイントを構築すべく挑戦が始まった。
従来の淡路島産タマネギの優位性
日本のタマネギのメイン産地は淡路島と北海道である。淡路島産は北海道産に対して味を評価する需用者が多い。それは、淡路島のほうが軟らかい傾向にあるからだ。
北海道のタマネギは、広大な土地に作付ける。収穫には大型重機(ハーベスタ)を使うので、比較的硬めで棚持ちのよい品種を選択する必要がある。それに対して淡路島は段々畑のような狭い耕作地が多く大型重機は導入できず、手作業でオペレーションしなければならない事情があるが、逆に「ターザン」「モミジ3号」などの軟らかい品種を選択することができる。このことから「北海道産より軟らかくておいしい」と言われているのである。
一方、北海道の気候は貯蔵に適している。収穫したタマネギは、倉庫に積んでおけば保存と乾燥が自然の状態でできるのでコスト面でも有利だ。
新家青果の改革
こうした事情で淡路島産タマネギは、従来特別なことをせずとも「おいしい」と言われるポジションをキープできていたが、正直差別化ポイントが構築できていたとは言いがたい。
新家社長は就任後、「このままでは淡路島産タマネギがなくなってしまう」という危機感を抱いていた。そこで、「淡路島のタマネギを守ろう」をスローガンに淡路島の生産者の見本となり、差別化でき世界に通用するタマネギをブランディングすること、120軒の生産者と思いを共有することを期し、仲卸だった新家青果は生産者へ転換した。
まず2003年に有機JASの基準に適合した生産方法で認証を取得した。慣行栽培だけでなく、有機JASを希望されるお客様に対応するためだ。次に独自ブランドの「あまたまちゃん」の栽培を呼びかけ、慣行栽培にもかかわらず糖度は9度以上を実現し、高いときには13.5度にもなった。
2010年6月にはグローバルGAPを取得し研究を続けている。タマネギでJAS有機とGGAPの認証を取っているのは日本で3社だけだ。
新たな貯蔵法も研究中
選荷場兼貯蔵庫には6億5000万円をかけて、食品を過冷却状態で保存する「氷感冷蔵庫」を装備した。これは氷温をさらに進化させたしくみで、0度前後に貯蔵しながら、棚に高電圧(電流は微弱)をかけることで細胞に振動を起こす。これにより、農産物を凍らせないで長期間低温貯蔵ができるというものだ。これは「北海道に対抗してタマネギを通年供給できないか?」という思いから研究を継続中で、ある程度の成果が出てきているそうだ
今回私が訪問したのは、弊社の指定資材である「十和田石」(凝灰岩の一種)を使用したタマネギ生産に取り組んでほしいという依頼をするためだった。こだわりを語ることができる野菜供給をお願いするに当たって最適の取組先だと自信を持った次第である。秋以降の作付けが楽しみだ。
また、有機タマネギの規格外品が多く出るので、これをブランチングして冷凍することについても取り組み始めた。有機タマネギ原料を使用した新たな商品開発の夢も広がった訪問であった。