レタス不足はさらに深刻になった。長雨の中病害が出るのに追い打ちをかけるように台風が襲い、高原産地と北海道の両方で出荷が止まった。こうした場合の対処の最終的な手段は海外からの調達だが、虫が見つかれば燻蒸を受け、使いものにならない。さらに、次のリレー産地である茨城についても楽観できないと見ている。
高原と北海道、ダブルで打撃
2011年9月のレタス不足は深刻だ。
毎年9月のレタスの価格は一年でも安い傾向にある。真夏の高温も落ち着き、比較的雨量が少なく、圃場が乾燥し始めるのが9月だ。収量が上がり、長野や群馬の高原産地が最盛期になる時期で、さらに北海道からも荷物が着く時期だ。
ところが今年に関してはその限りではない。前回も書いたとおり、不作傾向になることは8月半ばには予測できていた。長雨の影響から生理障害が発生し、軟腐病やタール病が出始めているという報告が来ていたのだ。しかし、その後の急激な悪化は私の予想以上だった。
病害がひどくなっていたところへ、追い討ちをかけるように台風12号が襲来。この台風はゆっくりと進むことが特徴だった。このため8月28日~9月5日まで日本中に雨を降らせた。三重県の土砂災害のような直接的な被害は本当に不幸なことだったが、他にも農産地の被害は広範囲にわたった。関東だけでなく北海道にも影響があった。
長野や群馬の高原産地のレタスは、基本的に6月中旬ころから出荷が始まり、10月上旬、早くても9月末までは続くのだが、今年はこの巨大産地が約1カ月以上早く終わってしまった。産地リレーに穴が開いた状態で、さらに悪いことに北海道も同時にやられてしまったことで最悪の事態となった。
まず、在庫不足から長野県最大産地の川上が9月3日に出荷を停止し、続いてホクレンが9月7日に停止した。これらの停止が引き金で、9月10日以降日本全国から在庫がなくなった。状況は7年前の台風集中上陸の時より深刻だと思われ、「30年ぶりのレタス不足」とも言われている。
しかも2004年の場合、価格は上がったものの“金さえ出せば”ものを集められた。ところが、今年はそういう状況ではないのだ。
輸入品が燻蒸免れ救われる
弊社はレタスを月間70t使うので、トータルの供給量を下回るわけには行かない。これに対する弊社の対策を挙げてみる。
(1) 生理障害への対策
契約栽培農家と、ある農法で生理障害に強い土壌開発に努めていた。これにより、被害の規模は全体の状況よりは若干はましだった。しかし、さすがにこの大産地のエリア全体で1カ月以上早く終わってしまうと、さすがに影響は大きかった。とくに夏場は高地が主体なので代替がききづらい。
(2) 産地の分散/北海道産原料の手配
8月中旬から長野が厳しいことがわかってきたので、保険として北海道十勝産のレタスを契約しておいた。これによって多少は助かったが、そちらも早く終わってなくなってしまった。ホクレンが出荷を止めた9月7日以降も契約分は入ってきていたが、それ以上は増やせなかった。普通は関東と北海道が同時にやられる確率は低いので、今回が「30年ぶり」と言われるのはこの部分だ。
(3) 輸入品手配
国内在庫が拾えないこのような場合の対応としては、輸入に頼らざるを得ない。8月中にアメリカと韓国からのサンプルを確認し、輸入の準備をしておいた。
しかし、生鮮野菜の輸入には燻蒸処理リスクが伴うので、確実に在庫として当てにできないことが本当に厳しい。検疫で虫が発見されて燻蒸が入ると、原料が赤く変色して使い物にならなくなり、ゴミを輸入しているのと同じになる。商社によってはこの燻蒸リスクをどこが取るかで、価格設定も変わってくるしくみだ。
今回、弊社は運よくアメリカ産、韓国産とも輸入品を全量燻蒸フリーで確保できたので、9月10日週の原料が確保できた。
ちなみに、某ハンバーガー大手はレタスの輸入を普段から10%程度はやっているそうだが、今回の原料不足から輸入量を増やして対応を試みたという。しかし、燻蒸に関しては3勝6敗で、国内在庫も拾えずに9月12日からレタスメニューに制限をかけることを決断したそうだ。
予断許さぬ茨城産の供給量
9月中旬、外食大手各社がレタス使用の中止や制限を始めた。この影響で、一時的に市場に玉が出てきていて、9月15日以降は国産原料が市場から拾いやすい状況にはなっている。しかし楽観はできない。
というのは、リレーの次の産地である茨城県産の生育は現時点では良好だが、市場価格が高く原料不足気味なことから早取りをしている。そのため株数自体が減少傾向で、予定通りの収穫量が確保できるかは、まだまだ不透明と見ている。また、外食大手が使用を再開をすれば、当然状況は変わる。
落ち着くのは最低でも10月いっぱいはかかると考えている。しかし、続く11月は端境期で例年価格が上がる傾向にある。うまく九州の産地につながってくれれば乗り切れるのだが。
いずれにせよ、今回の反省を踏まえ、安定供給のスキームを見直すことが急務になった。