フタル酸エステルの規制見直し

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州食品安全機関(EFSA)と米国食品医薬品局(FDA)が、食品接触物質に使用されるフタル酸エステル類に関する記事を発表した。英国食品基準庁(FSA)は、アクリルアミド生成回避に関して、家庭でのジャガイモの保管では冷蔵庫選択してもよいと助言を更新した。

注目記事

【EFSA】フタル酸エステル類と他の可塑剤:再評価の優先順位

 欧州食品安全機関(EFSA)が、食品接触物質(FCM)に使用される可塑剤のフタル酸エステル類、その構造的類似物質、代替物質について、再評価の優先順位付けを行った。対象はEUや国によってFCMへの使用が認可されている物質のみとして、リスク評価が最後に実施された年を指標に3グループ(古い順に優先度が高・中・低)にランク付けした。今後、暴露評価に必要となる食品やFCM中の濃度データの募集を予定している。

【FDA】FDAは食品包装材における特定のフタル酸エステル類の使用を制限し、最新の食品接触用途および安全性データに関する情報提供を求める文書を発行する

 米国食品医薬品局(FDA)は、食品接触用途のフタル酸エステル類に関する食品添加物請願2件と、市民請願1件に対する回答を発表した。うち1件の食品添加物請願を受け入れ、産業界によって使用が放棄されているとの理由に基づき、23種のフタル酸エステル類と他2物質について認可を取り消した。結果的に、食品接触用途の使用認可は残りの9種に限定されることになり、それらのうち可塑剤としての使用が認められている8種について、最新の使用実態や食事暴露量、安全性に関する情報提供を呼び掛けた。

※ポイント:EFSAと米国FDAから同じタイミングで食品接触物質に使用されるフタル酸エステル類に関する記事が発表されました。当初の規制から数年が経過し、フタル酸エステル類の使用が減少している現状を反映させるために規制を見直すための取り組みです。

【FSA】アクリルアミド

 アクリルアミドは、ジャガイモやパンなどのデンプンを多く含む食品を高温(120℃以上)で調理すると生成される副生成物である。英国食品基準庁(FSA)は、英国毒性委員会(COT)がレビューした最近の研究では、家庭でジャガイモを冷蔵庫で保管しても冷暗所と比べてアクリルアミドの大幅な増加は見られないことが示されているとして、家庭でのジャガイモの保管には冷蔵庫と冷暗所のいずれを選択してもよいと助言を更新した。

※ポイント:食品中のアクリルアミドは、食品に含まれるアミノ酸の遊離アスパラギンと還元糖が反応して生成します。以前は、ジャガイモを低温下で長期間保管すると還元糖が増加するために冷蔵庫での保管はしないよう助言していましたが、家庭の冷蔵庫で保管する程度であれば還元糖の増加量はたいしたことはなく、それよりも低温保管による品質維持と食品廃棄の低減化の方が大切だと判断されたようです。またEFSAが、遺伝毒性に関する最新情報をまとめ、以前の結論を支持するものであったことを報告しています。

【FDA】FDAはNDI執行裁量のガイダンス案を発表

 米国FDAは、ダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA)のもと、新規ダイエタリー成分(NDI)およびNDI含有ダイエタリーサプリメントを市販する場合には、その75日前までにFDAへ通知することを事業者に義務づけている。しかし、市販前通知をせずに流通している製品があるため、FDAは、限定的に事業者が不履行の市販前通知を提出できるようにする執行裁量に関するガイダンス案を発表した。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.11(2022.05.25)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202211c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. WHO は国境を越えたアルコールマーケティング規制の目立つギャップを強調
2. 子供たちと全ての人のために持続可能なフードシステムからの健康的食事についての行動連合開始イベント
3. 第75回世界保健総会は回復と再生のために「平和のための健康、健康のための平和」に焦点を定める

【FAO】
1. 気候変動が植物の健康を脅かす5つの方法
2. Codex

【EC】
1. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. グリホサート:EFSA と ECHA は評価のタイムラインを更新
2. アクリルアミドの遺伝毒性の評価
3. フタル酸エステル類と他の可塑剤:再評価の優先順位
4. #EU 安全な食品を選ぼう第二期-EU 加盟国と EFSA の合同キャンペーン2年目開始
5. 農薬関連
6. 新規食品関連
7. 食品添加物関連
8. 飼料添加物関連
9. 食品接触物質関連
10. 食品酵素関連

【FSA】
1. 栄養素-知っておくべきこと
2. アクリルアミド
3. 研究プロジェクト
4. FSA は監査局の報告書を歓迎する

【FSS】
1. 更新情報:FSS 及び FSA は完全精製油が原材料の代替品として使用が増える可能性があるとして、消費者向けガイダンスを提供する

【DEFRA】
1. 有機農業統計

【DHSC】
1. 政府は複数販売と TV とオンラインでの広告への規制を先延ばしする

【ASA】
1. 助言
2. ASA 裁定

【BfR】
1.「PARC」:化学物質リスク評価に関する EU 研究パートナーシップ開始

【RIVM】
1. 電子タバコ用リキッド中の23の香料の健康影響

【ANSES】
1. 化学物質リスク評価を改善するための欧州研究革新 PARC 計画開始

【FSAI】
1. セーフケータリングパック
2. リコール情報

【FDA】
1. 魚を食べることについての助言
2. 規制当局のパートナーシップによる輸入エビの安全性強化
3. FDA は乳児用及び特殊調製乳製品の供給を改善するための重要な対策をとる
4. FDA は安全でない医薬品のキャリーオーバーによる動物用食品の汚染を防止するための実施に関する方針を整理、更新したガイダンス案を発表する
5. CVM GFI #3食料生産動物に使用される動物用新薬のヒト用食品安全性評価のための一般原則
6. FDA は THC を含む食品の子供の摂取事故について消費者に警告する
7. 消費者情報
8. FDA は異物混入のダイエタリーサプリメントを違法に販売したとして、複数の企業に警告書を送付する
9. FDA は NDI 執行裁量のガイダンス案を発表
10. FDA は食品包装材における特定のフタル酸エステル類の使用を制限し、最新の食品接触用途及び安全性データに関する情報提供を求める文書を発行する
11. FDA の事業変革への「オールイン」アプローチ
12. 警告文書
13. リコール情報

【EPA】
1. EPA は5つの PFAS 化合物をヒト健康と環境を保護するための地域スクリーニングと除去管理レベルリストに追加

【USDA】
1. USDA は乳児用調製乳不足への緊急対応を継続する

【NIH】
1. ODS 更新情報-2022春

【CFIA】
1. 許可されていないスパイス中の着色料-2019年4月1日〜2020年3月31日
2. 意見募集:e-コマースを通じて消費者に販売される食品の食品情報を提供するための自主的なガイダンスの策定に関する協議
3. カナダ政府は食品偽装に引き続き取り組む

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【MPI】
1. Pelorus Sound 全域における貝類に関する公衆衛生警告

【香港政府ニュース】
1. CFS は包装済みキャンディーとチョコレートの栄養表示に関するターゲットサーベイランスの調査結果を発表する
2. プレスリリース
3. 違反情報
4. リコール情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食薬処-自治体、食品などの不当広告の合同点検を実施
3. 春期、多消費、輸入農・水産物の通関検査結果
4. 食薬処、配達プラットフォーム業者とデリバリー飲食店の安全管理の協力強化
5. 食品中の有害汚染物質検出量情報、アプリ開発に活用してください
6. 食薬処、オンラインで販売される農・水産物の収去検査を実施
7. 不良・腐敗原料使用防止のために規定を明確化
8. 食品として適さない輸入糖蜜400トン、飼料として再利用される
9.「家庭の月」のプレゼント購入、「もし」ではなく「もしかして?」と思ってください!
10.「家庭の月」に備えて多消費健康機能食品製造業者の点検結果
11. 食薬処、集団給食所に納品される農産物の収去検査の結果発表
12. ナトリウム・糖類低減製品の活性化のために表示基準を改正
13.「あまり甘くなく・あまり塩辛くなく」実践キャラクター活用映像コンテンツ公募

【SFA】
1. 聯合早報フォーラムへの回答

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から10件
・世界保健機関(WHO:World Health Organization)http://www.who.int/en/