前年の苦境を想起させる数字

日本フードサービス協会(JF)は2022年1月外食産業市場動向調査を発表した。全体(事業社数227、店舗数36,624店=98.5%)合計の売上高は112.2%と2桁の拡大。客単価は際立って上昇したが、客数は106.7%と増加。

 すべての業種・業態で客数が増加し、売上高も伸びている。ただしこれは、2回目の緊急事態宣言で売上が大きく落ち込んだ2021年1月との比較であり、外食市場の回復を意味するものではない。むしろ、当月の上昇幅が小さい業種・業態ほど、前年同月に被った悪影響がより小さかったと言える。1月9日以降に各地で適用されたまん延防止等重点措置がなければ、上昇幅はさらに大きかったとも考えられる。

 JFによる概況は以下のとおり。

2022年1月の全体売上は2021年1月比で112.2%となったが、これはあくまでも2回目の緊急事態宣言で売上が大きく落ち込んだ2021年1月の前年同月比(79.0%)からやや回復したことを意味するにすぎない。

昨年末のコロナ感染者数減を受けて年始は個人や家族客に回復の兆しが見られたが、新変異種「オミクロン株」の出現で再び感染者が急増した。1月9日以降は各地でまん延防止等重点措置が適用され、特に店内飲食中心のレストラン業態・飲酒業態が失速、全体売上はコロナ禍前の19年比で88.5%となった。また従業員家族などの感染もあり、店舗の人員確保にも影響が及んでいる。

売上高と店舗数の伸び率推移(〜2022年1月)

売上高と店舗数の伸び率推移(〜2022年1月)

外食産業市場動向調査2022年1月度全店データ
事業社数 店舗数 売上高(前年比) 店舗数(前年比) 客数(前年比) 客単価(前年比)
全体 (N=227) (N=36,624) 112.2% 98.5% 106.7% 105.2%
ファストフード 合計 (N=54) (N=21,127) 106.2% 99.2% 102.8% 103.3%
洋風 (N=17) (N=6,110) 105.9% 99.7% 103.4% 102.4%
和風 (N=15) (N=5,120) 105.8% 99.8% 100.9% 104.9%
麺類 (N=20) (N=3,221) 104.5% 98.2% 102.5% 101.9%
持ち帰り米飯/回転寿司 (N=18) (N=4,326) 106.9% 99.2% 103.0% 103.8%
その他 (N=6) (N=2,350) 111.0% 97.7% 109.0% 101.8%
ファミリーレストラン 合計 (N=64) (N=10,142) 120.1% 98.4% 115.4% 104.1%
洋風 (N=30) (N=4,992) 120.6% 97.0% 117.1% 103.0%
和風 (N=33) (N=2,521) 119.1% 98.2% 113.5% 104.9%
中華 (N=13) (N=1,161) 111.3% 102.0% 109.3% 101.8%
焼肉 (N=17) (N=1,468) 130.3% 100.9% 126.2% 103.2%
パブ/居酒屋 合計 (N=37) (N=2,061) 154.8% 93.2% 139.8% 110.8%
パブ・ビアホール (N=11) (N=432) 182.6% 94.9% 175.0% 104.3%
居酒屋 (N=30) (N=1,629) 145.6% 92.8% 126.2% 115.4%
ディナーレストラン(計) (N=30) (N=1,100) 136.7% 99.9% 139.2% 98.2%
喫茶(計) (N=22) (N=1,963) 119.9% 97.3% 113.4% 105.7%
その他(計) (N=20) (N=231) 125.0% 100.4% 116.0% 107.8%

凡例:10%以上のプラス5%以上のプラス前年同月未達(四捨五入で100.0%となっているものを含む)5%以上のマイナス10%以上のマイナス

※前年同月比は税抜比較で行っている。

※ファストフード、ファミリーレストラン、パブ/居酒屋の各業態の内訳に関しては、重複する事業社があるため合計の数値は必ずしも内訳の累積に一致しない。

ファストフード

ファストフード全体の事業社数は54、店舗数は21,127店(99.2%)。客単価は上昇したが、客数は102.8%と前年同月を上回った。売上高は106.2%と拡大。

洋風ファストフード(事業社数17、店舗数6,110店=99.7%)は、客単価は上昇したが、客数は103.4%と前年同月を上回った。売上高は105.9%と拡大。

和風ファストフード(事業社数15、店舗数5,120店=99.8%)は、客単価は上昇しながら、客数は100.9%と前年並み。売上高は105.8%と拡大。

麺類ファストフード(事業社数20、店舗数3,221店=98.2%)は、客単価は上昇したが、客数は102.5%と前年同月を上回った。売上高は104.5%と前年同月を上回った。

持ち帰り米飯/回転寿司ファストフード(事業社数18、店舗数4,326店=99.2%)は、客単価は上昇したが、客数は103.0%と前年同月を上回った。売上高は106.9%と拡大。

その他ファストフード(事業社数6、店舗数2,350店=97.7%)は、客単価は上昇したが、客数は109.0%と増加。売上高は111.0%と2桁の拡大。

ファミリーレストラン

ファミリーレストラン全体の事業社数は64、店舗数は10,142店(98.4%)。客単価は上昇したが、客数は115.4%と2桁の大幅増。売上高は120.1%と2桁の拡大。

洋風ファミリーレストラン(事業社数30、店舗数4,992店=97.0%)は、客単価は上昇したが、客数は117.1%と2桁の大幅増。売上高は120.6%と2桁の拡大。

和風ファミリーレストラン(事業社数33、店舗数2,521店=98.2%)は、客単価は上昇したが、客数は113.5%と2桁の大幅増。売上高は119.1%と2桁の拡大。

中華ファミリーレストラン(事業社数13、店舗数1,161店=102.0%)は、客単価は上昇したが、客数は109.3%と増加。売上高は111.3%と2桁の拡大。

焼肉ファミリーレストラン(事業社数17、店舗数1,468店=100.9%)は、客単価は上昇したが、客数は126.2%と2桁の大幅増。売上高は130.3%と2桁の拡大。

パブ・居酒屋

パブ/居酒屋全体の事業社数は37、店舗数は2,061店(93.2%)。客単価は2桁アップと大幅に上昇したが、客数は139.8%と2桁の大幅増。売上高は154.8%と2桁の拡大。

パブ・ビアホール(事業社数11、店舗数432店=94.9%)は、客単価は上昇したが、客数は175.0%と2桁の大幅増。売上高は182.6%と2桁の拡大。

居酒屋(事業社数30、店舗数1,629店=92.8%)は、客単価は2桁アップと大幅に上昇したが、客数は126.2%と2桁の大幅増。売上高は145.6%と2桁の拡大。

ディナーレストラン

ディナーレストラン全体(事業社数30、店舗数1,100店=99.9%)は、客単価は下降し、客数は139.2%と2桁の大幅増。売上高は136.7%と2桁の拡大。

喫茶

喫茶全体(事業社数22、店舗数1,963店=97.3%)は、客単価は際立って上昇したが、客数は113.4%と2桁の大幅増。売上高は119.9%と2桁の拡大。

その他の業態

その他全体(事業社数20、店舗数231店=100.4%)は、客単価は際立って上昇したが、客数は116.0%と2桁の大幅増。売上高は125.0%と2桁の拡大。

●日本フードサービス協会
http://www.jfnet.or.jp/data/data_c.html