有機用動物副産物のリスク評価

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州委員会は欧州食品安全機関に対し、有機農業用資材として利用される動物副産物について、動物および公衆衛生に及ぼす生物学的リスクの評価を行うよう要請した。オランダでは2020年に胃腸感染症の報告数が前年までと比べて大幅に減少した。これは新型コロナウイルス対策として講じられた措置に起因すると考えられる。

注目記事

【欧州】有機農業用資材として利用される動物副産物の標準的処理

 欧州委員会(EC)規則 No.178/2002第29条の枠組みにより、ECは欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)に対し、次に挙げるカテゴリー2および3の物質とその由来製品を有機肥料および土壌改良剤として使用した場合に動物および公衆衛生に及ぼす生物学的リスクについて評価を行うよう要請した。

 カテゴリー2および3の物質は、バイオガスの残渣(消化液:digestion residue)およびコンポスト、焼却・混焼・燃焼によって生じる灰、バイオディーゼルと再生可能燃料の製造によるグリセリンおよびその他の副生成物、ペットフード、飼料およびイヌ用餌(dog chew)、皮および皮膚(hides and skins)、羊毛および獣毛(wool and hair)、羽毛(フェザー、ダウン)、豚毛である。

 最終段階または市場に出荷された段階の動物副産物の申告内容について、規定の「時間/温度/pH」パラメータによる標準的または代替加工処理方法の全体的効果に関する不確実性を明らかにするため、最悪のシナリオとして、耐性が最も強い指標微生物および生物的ハザードの確率の範囲が選定された。99%以上のケースで、規定の加工処理または作業部会で承認されたシナリオで指標微生物および生物的ハザードを、要求された範囲まで減少できる確実性の判断が示された。

【オランダ】胃腸感染症が2019年までと比べ大幅に減少

 オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM: Rijksinstituut voor Volksgezondheid en
Milieu)は、オランダの胃腸感染症の罹患率に関する調査を毎年計画的に行っている。2020年は、胃腸感染症の報告数が2019年までと比べ大幅に減少した。

 この現象は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)対策として講じられた措置に起因すると考えられる。カフェやレストランの営業停止、社会的なイベント(ケータリングを含む)の減少、国外旅行の規制、社会的距離の確保、および衛生意識の向上(手洗い等)により、ヒトと病原体の接触機会が減少した。また別の要因として、新型コロナウイルス危機により胃腸感染症の患者が医療支援を求めにくくなったことが考えられる。

 2020年は、ノロウイルスおよびロタウイルスの感染患者数が2019年までと比べ特に減少した。両ウイルスは主にヒト-ヒト感染により拡散する。また、サルモネラ症やカンピロバクター症などの食品関連感染症も大幅に減少した。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.04(2022.02.16)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202204m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. Dole 社が製造した包装済みサラダに関連して複数州にわたり発生しているリステリア
(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2022年2月1日付更新情報)
2. 詰め物入りパン粉付き冷凍生鶏肉製品に関連して発生したサルモネラ(Salmonella
Enteritidis)感染アウトブレイク(2021年10月13日付最終更新)
3. イタリアンスタイルの食肉製品に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ
(Salmonella Infantis、S. Typhimurium)感染アウトブレイク(2021年10月26日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:Hankook ブランド(ブランド名はハングル表示)のキムチ「ORIGINAL
KIMCHI」に関連して発生している大腸菌 O157感染アウトブレイク(2022年2月7日付更新情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/世界保健機関欧州地域事務局(WHO/Europe)】
1. 欧州における抗菌剤耐性サーベイランスの2020年次報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 有機肥料および土壌改良剤として使用されるカテゴリー2および3の動物副産物とその由来製品に関する標準的処理または代替処理による指標微生物および生物的ハザードの不活化

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. オランダの胃腸感染症および人獣共通感染症サーベイランスの2020年次報告書
2. オランダにおける人獣共通感染症の発生状況(2020年)

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(05)(04)(03)(02)(01)