国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国で、包装済みサラダに関連して複数の異なる事象が発生している。O157感染アウトブレイクが1件、リステリアが2件である。カナダでは冷凍粒トウモロコシに関連のサルモネラ感染が発生している。欧州の複数の国で輸入ゴマ製品に関連のサルモネラ感染が発生している。
注目記事
【米国】包装済みサラダに関連のO157:H7感染アウトブレイク
米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生している大腸菌O157:H7感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。
疫学データは、Simple Truth Organic ブランドおよび Nature’s Basket ブランドの包装済みサラダ(Organic Power Greens)に大腸菌汚染の可能性があり、本アウトブレイクの患者の感染源となっている可能性があることを示している。
CDCは、Simple Truth OrganicブランドおよびNature’s Basket ブランドの包装済みサラダ(Organic Power Greens)のうち、賞味期限(“best if used by” date)が2021年12月20日(December20,2021)以前の製品を喫食しないよう注意喚起している。他の製品にも汚染の可能性があるかどうか確認するため調査が進められている。
【米国】包装済みサラダに関連のリステリア(1)
米国疾病予防管理センター(US CDC)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。
2021年12月17日時点で、L. monocytogenesアウトブレイク株感染患者が13州から計16人報告されている。患者の発症日は2014年8月16日〜2021年10月17日である。
CDCは2019年および2020年にも本アウトブレイクの調査を行ったが、当時は感染源を特定するための十分なデータを収集できなかった。2021年8月末以降に4人の新規患者が報告されたことから、CDCは11月に調査を再開した。
患者の年齢範囲は50〜94歳。情報が得られた患者14人のうち12人が入院した。ミシガン州およびウィスコンシン州から計2人の死亡者が報告されている。
既に聞き取りが実施された8人のうち7人が包装済みサラダの喫食を報告した。具体的なブランド名を覚えていた患者3人のうち2人がDoleブランド、1人がLittle Salad Barブランドを報告した。
CDCによる本アウトブレイク調査の再開後、ミシガン州農業・農村開発局(MDARD)が複数の小売店舗から包装済みサラダの検体を採取し検査した結果、Dole社が製造したMarketsideブランドの細切りアイスバーグレタス1パックからL. monocytogenesアウトブレイク株が検出された。
Dole社は、当該汚染サラダを製造した同社の2施設で加工されたDoleブランドおよびプライベートブランドのすべての包装済みサラダの回収を開始した。
CDCは、回収対象製品の喫食・販売・提供を行わないよう注意喚起している。汚染の可能性がある製品が他にもあるかどうか確認するため調査が行われている。
【米国】包装済みサラダに関連のリステリア(2)
米国疾病予防管理センター(US CDC)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。疫学データおよび検査機関での検査データは、Fresh Express 社製の包装済みサラダにリステリア汚染の可能性があり、本アウトブレイクの患者の感染源となっている可能性があることを示している。
2021年12月21日時点で、L. monocytogenesアウトブレイク株感染患者が8州から計10人報告されている。患者の発症日は2016年7月26日〜2021年10月19日である。
患者の年齢範囲は44〜95歳。患者10人全員が入院した。ペンシルベニア州から死亡者1人が報告されている。
既に聞き取りが実施された5人のうち4人がさまざまな種類の包装済みサラダの喫食を報告した。このうち2人は具体的にFresh Expressブランドのサラダを喫食したと報告した。調査において、患者が喫食した包装済みサラダのブランドおよび種類に関する更なる情報の収集が行われている。
2021年12月16日、ミシガン州農務局(MDA)は、通常検査において食料品店舗1カ所で採取されたFresh Expressブランドの包装済みサラダ(ロメインレタス、バターレタス入り)1袋からL. monocytogenesアウトブレイク株を検出した。
Fresh Express 社は、同社施設で2021年11月20日以降に製造された包装済みサラダの回収を開始した。
CDCは、回収対象のサラダの喫食・販売・提供を行わないよう注意喚起している。CDCおよびFDAは汚染製品が他にもあるかどうか確認するため調査を続けている。
【カナダ】冷凍粒トウモロコシに関連のサルモネラ
カナダ公衆衛生局(PHAC: Public Health Agency of Canada)は、複数州の公衆衛生当局、カナダ食品検査庁(CFIA)およびカナダ保健省(Health Canada)と協力し、5州にわたり発生しているS. Enteritidis感染アウトブレイクを調査している。
現時点で得られている調査結果にもとづくと、本アウトブレイクはAlaskoブランドの冷凍ホールカーネルコーンに関連している。CFIAは、Alaskoブランドの冷凍ホールカーネルコーンについて、2021年12月14日および19日に食品回収警報を発出した。
PHACへの新規患者報告が続いていることから、本アウトブレイクは継続していると考えられる。PHACは、Alasko ブランドおよびFraser Valley Meatsブランドの冷凍ホールカーネルコーンについて、喫食・使用・販売・提供を行わないよう注意喚起している。この注意喚起は、カナダ全土の消費者、小売業者、流通業者、製造業者および食品提供施設が対象である。
冷凍野菜は有害細菌に汚染されている可能性があり、喫食前に適切な取扱いや加熱処理が行われない場合、食品由来疾患の原因となり得る。本アウトブレイクは、このことをカナダ国民および食品事業者に再認識させる重要な機会となっている。
【欧州】輸入ゴマ製品に関連のサルモネラ
欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)発。2019年1月以降、ゴマ製品に関連し6種類の血清型のサルモネラ(Salmonella enterica)感染患者計121人が欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟5カ国から報告されている。当該血清型は、S. Amsterdam、S. Havana、S. Kintambo、S. Mbandaka、S. Orion およびS. Senftenberg である。
4カ国で実施された患者への聞き取り調査の結果、発症前にゴマ製品(ハルヴァまたはタヒニ)を喫食していたことが判明した。患者の約半数は10歳以下の小児であり、入院患者においても過半数を占めている。死亡者は報告されていない。
疫学調査、微生物学的調査および追跡調査により得られた情報にもとづくと、原因食品はシリア由来のゴマ製品と推定され、少なくとも追跡調査で陽性バッチとの関連が特定できた国についてはその可能性が高かった。これらの製品は、そのまま喫食可能な状態で密封されており、EU/EEA 域内の市場に届く前に汚染されていたことが示唆されている。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.01(2022.01.05)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202201m.pdf
今号の目次
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 包装済みサラダに関連して複数州にわたり発生している大腸菌 O157:H7感染アウトブレイク(2021年12月30日付初発情報)
2. Dole 社が製造した包装済みサラダに関連して複数州にわたり発生しているリステリア
(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2021年12月22日付初発情報)
3. Fresh Express社が製造した包装済みサラダに関連して複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2021年12月22日付初発情報)
【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:冷凍ホールカーネルコーン(粒のトウモロコシ)に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Enteritidis)感染アウトブレイク(2021年
12月21日付更新情報)
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. ECDC-EFSA 合同迅速アウトブレイク評価:輸入ゴマ製品に関連して複数国にわたり発生している複数の血清型のサルモネラ(Salmonella enterica)感染アウトブレイク
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. サルモネラタイピング技術に関する第11回外部精度評価の報告書
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 牛海綿状脳症および伝達性海綿状脳症(BSE-TSE)に関する科学的ネットワークの
2021年次報告書
【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(46)