2020年は新型コロナウイルス感染症一色の1年でした。そんななかでもとくに注目した3つの出来事を振り返ってみました。
新型コロナウイルス感染症拡大の中で
新型コロナウイルス感染症は依然として収束せず、現在第3波が来ているとされ、感染者数、重症者数が急増して多くの人が不安を抱えています。ここでは感染症そのものについてではなく、医療以外の分野で私たちが得たものを書き出してみます。
(1)オンラインのノウハウ蓄積
在宅勤務、ステイホームの中、オンラインでミーティングやワークショップをするノウハウが蓄積されました。これまでできなかった効率化ができたのではないでしょうか。
(2)学びのコンテンツの充実
休校になった子供たちのために、科学、音楽などいろいろな分野で、オンラインで学べるWebサイトがいくつも構築されました。それらには大人も子供たちといっしょに楽しめたり、じっくり読み込んで学べるものがたくさんあります。
(3)弱い立場に思いをはせる
行政と民間が新型コロナウイルス感染症に立ち向かっていくなかで、体力、経済、情報、人とのつながり方などさまざまな面でそれぞれに不利な事情を抱える人も含めたいろいろな立場の人のことを考慮して対処していく考え方と行動が展開されました。
コロナ禍を離れても、政策決定に際してはこうしたことが自然に考慮されるようになることを期待したいところです。
食品添加物表示制度報告書
3月末、食品添加物表示制度検討会の報告書が公開されました。
- 食品添加物表示制度に関する検討会報告書
- https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_003/pdf/food_labeling_cms101_200331_01.pdf
この報告書で私が本当に驚かされたのは、これまで「問題だけれども解決するのは難しいのだろう」と思ってきた諸項目について言及・提案がなされていたことでした。
(1)「人工」「合成」の言葉は誤認の元
「人工」「合成」を冠した用語は、食品衛生法での添加物表示の整理と矛盾することと、定義が不明確な言葉によって消費者が誤認することを防止するといった観点から、委員の総意として、こうした用語を使わないことが適当とされました。
(2)学校給食衛生管理基準の誤りの指摘
文部科学省の「学校給食衛生管理基準」にはこのような文言があります。
有害若しくは不必要な着色料、保存料、漂白剤、発色剤その他の食品添加物が添加された食品、又は内容表示、消費期限及び賞味期限並びに製造業者、販売業者等の名称及び所在地、使用原材料及び保存方法が明らかでない食品については使用しないこと。
しかし、食品添加物については、もともと有害なものは食品添加物に指定されませんし、純度や成分についての規格や、使用できる量などの基準が定められています。そして添加物を使った場合は、その添加物名だけでなく用途も表示することになっています。つまり、不必要なものを使うということがもともと想定されていません。
それに対して、行政の文書に「有害若しくは不必要な」食品添加物という表現は食品添加物に対する正確な理解を妨げる可能性があります。検討会の委員有志は文部省にこの文言の背景について質問を行いましたが、文部省からの回答はなかったとのことです。しかし、報告書には、学校給食衛生管理基準の「改正を求める意見が複数の委員から挙がった」ことが記録されました。
(3)「無添加」「不使用」表示禁止のガイドラインを
「○○無添加」「○○不使用」などと書かれていると、〇〇に当たるものは、たとえ適切な役割を担う物質であっても「リスクがあるから使わない方がいいものである」というように消費者をミスリードすることがあります。
もともと食品表示基準では、消費者を誤認させる表示や、表示すべき事項の内容と矛盾する表示等は禁止されていることから、このような「無添加」「不使用」表示を禁止すべき場合を判断できるようなガイドラインを策定するという画期的な提案がなされました。
国産のゲノム編集技術応用食品
12月11日、厚生労働省はサナテックシード株式会社(東京都港区、竹下達夫会長)から事前相談のあったゲノム編集トマト(血圧上昇を抑えるアミノ酸GABAを従来のトマトより多く蓄積している)について専門家会議を開きました。その結果、これを「安全性審査」ではなく「届出」で扱うことを決定し、同社は同日、販売・流通を厚労省に届け出ました。
2019年10月に事前相談窓口が開設されてから、1年余りたってのことでした。