国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.16(2019.08.07)を発表した。
注目記事
【ドイツ】ヒトの腸内で抗生物質耐性の性質が他の菌に伝達され得る
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)は、生鮮植物性食品の喫食を介した抗生物質耐性の伝達に関する研究および食品モニタリングの最新の結果について評価を行った。この研究で対象は、大多数が無害な腸内細菌で多くの動物に分布し、また、小売段階の各種サラダ用野菜、ルッコラおよび生鮮コリアンダーからも検出されている大腸菌に絞られた。
この研究の成果として、一部の大腸菌が、テトラサイクリン、ペニシリン系、セファロスポリン系などの数種類の抗生物質に対して非感受性であることが明らかになった。大腸菌は基本的に無害であるが、非加熱のサラダ用野菜とともに摂取されると、ヒトの腸内に存在する可能性がある病原菌へと抗生物質耐性の性質を伝達することがある。抗生物質耐性の性質はしばしば可動性遺伝因子に担われているため、大腸菌間の伝達だけでなく、大腸菌からその他の細菌種への伝達も起こり得る。
生野菜と共に摂取した抗生物質耐性大腸菌がどの程度の期間にわたってヒトの腸内に定着するかについては推定できない。しかし、抗生物質耐性大腸菌がサラダ野菜とともに摂取された際に抗生物質治療が行われた場合は、これにより当該菌の腸内への定着が促進されると考えざるを得ない。
【米国】イヌ用餌の豚耳関連の多剤耐性サルモネラ
米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、イヌ用餌の豚耳との接触に関連して複数州にわたり発生している多剤耐性サルモネラ(Salmonella I 4,[5],12:i:-、S. Infantis、S. Newport、S. London)感染アウトブレイクを調査している。2019年7月31日までに、サルモネラアウトブレイク株感染患者が33州から計127人報告されている。情報が得られた患者88人のうち26人(30%)が入院したが、死亡者は報告されていない。
患者由来のサルモネラ分離株71株について抗生物質への耐性が調査された。その結果、1株については抗生物質耐性が予測されなかったが、残りの70株については、アモキシシリン-クラブラン酸、アンピシリン、セフォキシチン、セフトリアキソン、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ナリジクス酸、ストレプトマイシン、スルフイソキサゾール、およびテトラサイクリンのうちの1種類以上への耐性または低感受性が予測された。
本アウトブレイクに関連した患者の治療に抗生物質が必要になった場合、一般的に推奨される一部の抗生物質による治療が困難になり、別の抗生物質が必要となる可能性がある。
患者に対し、発症前1週間における動物およびペットフードとの接触に関する聞き取り調査が実施された。聞き取りが行われた85人のうち76人(89%)がイヌとの接触を報告した。また、情報が得られた62人のうち45人(73%)が、イヌ用餌の豚耳、またはこれが給餌されたイヌとの接触を報告した。これらの報告の割合は、健康な人に対して過去に行われた調査で、回答者が調査前1週間以内にイヌまたはイヌ用餌(豚耳など)と接触したと報告した結果(それぞれ61%および16%)と比べ、ともに有意に高かった。
2019年7月3日、Pet Supplies Plus社は、サルモネラ汚染の可能性があるとして、蓋なし容器入りの豚耳の回収を開始した。消費者は回収対象の豚耳をイヌに給餌すべきではない。回収対象の豚耳の一部が既にイヌに給餌され、身近に発症者が出ていないとしても、当該製品の給餌を止め、回収対象製品が保存されていた容器・棚・区域を石鹸と温水で洗浄すべきである。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.16(2019.08.07)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2019/foodinfo201916m.pdf
今号の目次
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. イヌ用餌の豚耳との接触に関連して発生している多剤耐性サルモネラ感染アウトブレイク(2019年7月31、17日付更新情報、2019年7月3日付初発情報)
2. 小規模飼育の家禽類との接触に関連して発生しているサルモネラ感染アウトブレイク(2019年7月19日、6月13日付更新情報)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)】
1. アイルランドで2018年にロタウイルス感染届出患者数が大幅に減少
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 抗生物質耐性菌:非加熱の野菜やレタス類は十分に洗浄し新鮮なうちに自分で調理してすぐに喫食すべきである
【フィンランド食品局(Finnish Food Authority)】
1. フィンランドの食品チェーンにおけるサルモネラ汚染は低レベル