食を広くとらえながら、バイオテクノロジーとリスクコミュニケーションに関する話題を振り返ってみました。
- 本庶祐さんノーベル生理学・医学賞受賞
- ゲノム編集農林水産物に対する日本での規制の検討が始まる
- 遺伝子組換え表示制度
- ゲノム編集を進めるグループ 反対するグループ
- バイオ戦略中間とりまとめ
- 食品添加物の審査が一本化した
- 「証言BSE問題の真実――全頭検査は偽りの安全対策だった!」発売
- 機能性表示食品
- 新しい遺伝子組換え作物の試験栽培
- がんゲノム医療推進の動き
- 附
- 「Food Evolution」(フード・エボリューション)上映会開かれる
1. 本庶祐さんノーベル生理学・医学賞受賞
10月、京都大学特別教授本庶佑さんのノーベル生理学・医学賞受賞が発表された。免疫を抑制する効果をもつ「PD-1」という分子を発見したことからPD-1の機能を抑えるる抗がん剤ニボルマブが開発され、小野薬品工業から「オプジーボ」として発売されている。
2. ゲノム編集農林水産物に対する日本での規制の検討が始まる
ゲノム編集技術を応用した日本発の農林水産物の実用化の動きの中で、環境への影響に関する規制、食品の安全性に関する規制の検討が、環境省、厚生労働省でそれぞれ始まった。
3. 遺伝子組換え表示制度
遺伝子組換え表示制度に関する検討会報告書が3月に公開され、秋にはパブリックコメントが募集された。遺伝子組換え原料が最終製品で不検出であったときのみ「遺伝子組換えでない」と表示できることになり、検出方法、5%以下含んでいるときの表示法の検討が続いている。
4. ゲノム編集を進めるグループ 反対するグループ
「ゲノム編集育種を考えるネットワーク」 「ゲノム編集の未来を考える会」 「ジャガイモ新技術連絡協議会」など、日本発ゲノム編集農林水産物の社会実装を進めようとするグループが動き始めた。一方、遺伝子組換えいらないキャンペーン、種子法廃止反対を主張するグループなどは、ゲノム編集に対し遺伝子組換えと同等の規制を求めて活動している。
5. バイオ戦略中間とりまとめ
6月、バイオ戦略検討ワーキンググループ中間とりまとめが公開された。2019年夏までに最終版を取りまとめるという。バイオとデジタルの融合を目標に「農林水産業の革新(持続可能な農林水産業)」「革新的なものづくりによる成長社会」「炭素循環型社会の実現」「健康・未病社会の実現」の4つのビジョンが提示された。
6. 食品添加物の審査が一本化した
10月、食品安全委員会は、遺伝子組換え酵素を新しく添加物として指定するときの評価を添加物専門調査会に一本化し、省力化、迅速化を図ることを決定した。これまでは同調査会と遺伝子組換え食品調査専門調査会で並行して調査審議を行っていた。
7. 「証言BSE問題の真実――全頭検査は偽りの安全対策だった!」発売
12月、日本におけるBSE問題を総括する本「証言BSE問題の真実――全頭検査は偽りの安全対策だった!」(唐木英明編著、食の安全・安心財団)が発売された。メディアが報じたことが独り歩きすることも多い中、関係者の証言も多く取り入れ、広い視野のなかで総括することは、一般市民が科学の不確定性と付き合っていく上で重要で、将来に向けて意義深い業績だと思う。
8. 機能性表示食品
機能性表示食品の届出制が始まって3年が経過した。初年度には半年で148件だった登録数は年々倍増し、今年の6月で1,300件を超えた。しかし、情報が不足している届出も増えている。消費者庁は買い上げ調査を行って有効性関与成分を調べたりすると同時に、消費者への啓発活動を行っている。
9. 新しい遺伝子組換え作物の試験栽培
圃場の数は多くないが、日本国内でも遺伝子組換え作物の試験栽培は順調に行われている。今年、筑波大学では、遺伝子組換えミラクリン産生トマト、青紫ファレノプシス(コチョウラン)、水利用効率改善交雑ヤマナラシと、3つの新顔の試験栽培が行われた。
10. がんゲノム医療推進の動き
8月、厚生労働省はがんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議を発足させた。ゲノム情報を用い、日本人にあった、創薬・個別化医療開発を推進する。関係する研究開発、人材育成などが進められる。
附 「Food Evolution」(フード・エボリューション)上映会開かれる
12月14日、遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会(代表:食生活ジャーナリストの会代表・小島正美氏)主催で標記ドキュメンタリー映画が上映された。遺伝子組換え作物をめぐる世界の状況が紹介される中で、研究者もデモ行進を行い、厳しい規制に対して生産者が声を上げて状況を変えていく場面が印象的だった。