国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.25(2018.12.05)を発表した。
注目記事
【EFSA】ダイオキシン類と関連のPCBs:耐容摂取量改訂
欧州食品安全機関(EFSA)は、食品および飼料中のこれらの物質によるヒトと動物の健康へのリスクに関する最初の包括的レビューを完成した。 リスク評価ではヒトに見られる影響を考慮し、サポートの根拠として動物実験のデータを使用した。リスク評価では9才男児の精子の質を重要エンドポイントとして選択しトキシコキネティクスモデルを用いて、ダイオキシン類およびダイオキシン様PCBsの耐容週間摂取量(TWI)として以前の14pg/kg体重を引き下げ新たに2pg/kg体重を設定した。 暴露評価で寄与率が高かった食品は脂肪分の多い魚、チーズ、家畜肉であった。また同時に飼料汚染についてもリスク評価を行った。 ※ポイント:2015年にEFSAが、EU(当時は食品科学委員会SCF)、米国環境保護庁(EPA)およびFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が設定した耐容摂取量とその求め方の比較をしました。その結果、各組織が耐容摂取量の導出に用いたアプローチが違ったことと、EUよりもEPAが設定した値の方が低かったことから、EFSAは包括的リスク評価が必要だろうと考え、それが今回の評価につながっています。 今回のリスク評価結果についてEFSAは、最も有害なダイオキシン様PCB(PCB126)の毒性が過大評価されている可能性があること、魚の摂取によるベネフィットを考慮していないこと、ここ30年に汚染濃度は大幅に減少していることを述べ、結果を慎重に捉えています。 今号で一緒にご紹介しているドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)の意見でも、TWIを求める際の重要エンドポイントを決める研究の選択については未回答の課題が残され、長期暴露により健康障害が生じるかどうかに関しては非常に多くの科学的不確実性が含まれていると指摘した上で、作用機序などさらなる知見を得ることが必要だとしています。
【EFSA】EFSAの食品分類および記述システムFoodEx 2に対応する加工技術および加工係数のデータベース
EFSAは、食品に存在する実際の残留農薬に関する汎欧州の食事暴露およびリスク評価を行っている。これらの評価は、加盟国の公的モニタリング計画のもと得られた残留農薬の実態データ、EFSAの包括的食品摂取量データベースの摂取量データ、加工係数のような農薬固有情報が使用されている。現在、加工係数について欧州や世界規模で調和されたリストがない。この計画でEFSAや加盟国が利用できる加工係数のデータベースを開発し、開発内容に関する詳細な説明を三部構成で公表した。 ※ポイント:ドイツのBfR、ギリシャのベナキ植物病理研究所、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)が協力して構築したデータベースです。以前、BfRとRIVMは各々独自に加工係数データベースを公表していましたが、EU全体で利用できるように統一したようです。優れているのは、加工係数や標準的な加工工程のフローチャートだけでなく食品分類システム(FoodEx2)に合うようコード化した点と誰でも利用できるよう公開した点だと思います。
【EC】動物用医薬品(VMP)および医薬品添加飼料に関する新しい法律についてのQ&A
EUでは抗菌剤耐性への取り組みとなる新規則が提案され承認されました。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(化学物質)No.25(2018.12.05)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201825c.pdf
今号の目次
【WHO】 1. IPCS:水銀に関する水俣条約への保健部門の関与 【EC】 1. 欧州市民イニシアチブ:委員会は「非ベジタリアン/ベジタリアン/ビーガンの食品表示義務化」イニシアチブを登録 2. 統一リスク指標 3. 根拠の重み付けについての新しいインフォグラフィクス 4. AMRワンヘルスネットワーク 5. 動物用医薬品(VMP)および医薬品添加飼料に関する新しい規制についてのQ&A 6. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF) 【EFSA】 1. ダイオキシン類と関連のPCBs:耐容摂取量改訂 2. EFSAの食品分類及び記述システムFoodEx 2に対応する加工技術及び加工係数のデータベース 3. EFSAの資金提供による、ギリシャの10~74歳までの一般人の食事及び関連データの収集 4. 農薬関連 5. 飼料添加物関連 【NHS】 1. ピーナッツアレルギーに対する新しい治療法は有望である 2. 少なくともマウスにおいては‐高炭水化物、低タンパク質の食事が「脳を若く保つかもしれない」 【BfR】 1. 中毒かな?緊急のためのBfRアプリ 2. カリカリどころか黒焦げ―揚げ過ぎが危険な理由 3. EFSAはダイオキシン類及びダイオキシン様PCBsの新しい健康影響に基づく指標値を提案 4. 多くの麻(hemp)含有食品のテトラヒドロカンナビノール濃度は高すぎる―健康障害が起こりうる 【ANSES】 1. 抗菌剤耐性に関する質問 2. 野生キノコの摂取による中毒の増加:油断しないで! 【FDA】 1. FDAはダイエタリーサプリメントとして販売されているチアネプチンを含む製品に対応し消費者へ警告 2. 一部のクラトム製品にニッケルや鉛などの重金属リスクが見つかったことについてのScott Gottlieb FDA長官の声明 3. FDAは消費者に対し、表示されていない危険な可能性のある医薬品成分を含むためRhino男性機能増強製品を避けるよう警告 4. FDAは今年に隔年登録更新を行う食品施設を援助するリソースを追加した 5. FDAは現在進行中の若者のタバコ予防計画の一環として子ども用の食品に似た電子タバコ用リキッドの販売について企業に警告 6. 警告文書 【CDC】 1. 血中鉛濃度の高い子どもの家庭調査でのスパイス、ハーブレメディ、式典用パウダーの鉛-ノースカロライナ、2011-2018 【USDA】 1. Chunwei社は違法表示と表示されていないアレルゲンとグルタミン酸ナトリウムのため肉や家禽製品をリコール 2. FSISは微生物学的及び残留化合物サンプリング年次計画を発表 【NIH】 1. 医療関係者向けファクトシート更新 2. 消費者向けファクトシート更新 【FTC】 1. 裁判所は「無料お試し」と称して承認していない継続プランに加入させられる虚偽の宣伝で消費者を騙した国際事業を一時停止 【FSANZ】 1. 食品基準通知 2. 甘味料 【香港政府ニュース】 1. 保存用カラシナから基準値を超える保存料が検出され食品表示規則にも違反 2. 白サヤマメのサンプルにおける残留農薬が基準値を超える 3. 未加熱のギョウザ皮に認可されていない保存料のソルビン酸が検出される 4. 中国産キャベツのサンプルに基準値超過のカドミウムが検出される 【MFDS】 1.日本産輸入食品の放射能検査の結果 2. コンニャクゼリー含有飲料、ダイエット効果の虚偽・誇大広告が多い 3.「食品医薬品オンライン販売、健全で安全に!」 4. 異葉牛皮消未混入健康機能食品のリスト(2018.10.31) 5. 輸入食品営業者が必ず知っておくべきガイド発刊 6. 輸入食品通関検査、安全性は上げ規制は下げる 7. 農薬ポジティブリスト管理制度(PLS)の説明会開催 【FSSAI】 1. 食品安全に関するフェイクビデオと無責任な報道に関する覚え書き 【その他】 ・食品安全関係情報(食品安全委員会)から ・(EurekAlert)プロバイオティックは子どもの急性胃腸炎にはプラセボより良くはない ・(EurekAlert)タンパク同化ステロイドは男性の早期死亡率の高さに関連 ・(EurekAlert)他の砂糖の多い食品より甘い飲料が糖尿病リスクはより大きい ・(EurekAlert)世界の食糧システムは人道的に失敗していて気候変動を加速させている