国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.04(2018.02.14)を発表した。
注目記事
【EFSA】「より透明性高く強固な」助言をするための新しい不確実性アプローチ
欧州食品安全機関(EFSA)は、食品の安全性及び動物や植物の健康における不確実性を分析し考慮するための統一的なアプローチを開発した。EFSAが公表するガイダンスは、不確実性の分析に関し、多様な科学的方法及び技術的手段を提供する。その内容には柔軟性があり、植物の害虫、微生物学的ハザード、化学物質など多様な分野に適用できる。EFSAの評価における導入は2018年秋を予定している。
※ポイント:リスク評価の中で不確実係数の決定は評価者の判断が問われるポイントで、評価結果を大きく左右します。たとえば耐容摂取量などの参照値の設定に適用される不確実係数が異なると、同じデータ/エンドポイントを用いたとしても設定値は変わってきます。ですから、参照値を参考にする場合には評価でどのような不確実性が考慮されたのかも一緒に参考にする必要があります。
今回のEFSAのアプローチは、評価対象の分野にかかわらず不確実係数の検討を統一して、不確実係数をどのように判断すべきかをより明確にしてわかりやすくしようというものです。
【EFSA】3-モノクロロプロパンジオールとその脂肪酸エステルに関するリスク評価の改訂
EFSAは、2016年に公表したリスク評価を改訂した。これは、以前に設定した耐容一日摂取量(TDI)の値が、その後に実施されたFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)による設定値と異なることによる見直しである。今回の評価では、雄ラットの尿細管過形成の発生率の増加をエンドポイントとして算出したBMDL10 0.20mg/kg体重/日に不確実係数100を適用し、3-モノクロロプロパンジオール(3-MCPD)およびその脂肪酸エステルのグループTDIとして2μg/kg体重/日を導出した。
※ポイント:今回の評価のポイントはEFSAが2017年に改訂したベンチマーク用量(BMD)アプローチを利用している点です。したがって、改訂されましたが、方法論の違いにより今回もJECFAが設定したTDI(4μg/kg体重/日)とは異なる値が設定されています。
【FDA】クラトムがオピオイド化合物を含むことを示すFDAの科学的根拠と強調すべき依存症の誘発性:FDA長官Scott Gottlieb医学博士の声明
米国食品医薬品局(FDA)はクラトム(kratom)が関係する有害事例とクラトムの成分がオピオイド様特性を有することをさらに強く証拠付ける科学的分析結果を発表した。今回の分析にはFDAの科学者が開発したコンピュータモデルを応用し、クラトムに含まれる主要25化合物の化学構造とオピオイド受容体への作用、さらに受容体との結合の強さについて調べ、クラトムに含まれる化合物はオピオイド物質でリスクがあるとの根拠を示した。
※ポイント:米国ではオピオイド鎮痛薬の乱用や依存症が国家的な公衆衛生問題になっています。クラトムは、オピオイド鎮痛薬の代用品として、あるいはオピオイド依存症・離脱症状の緩和や娯楽のために使用されているようです。米国ではクラトムがダイエタリーサプリメントとしても販売されたため、数年前からFDAはクラトムの輸入差し止めや製品の押収などの対応を行っています。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(化学物質)No.04(2018.02.14)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201804c.pdf
今号の目次
【EC】
1. フードチェーンのEUリスク評価の透明性と持続可能性についてのパブリックコメント募集
2.日付表示と食品廃棄
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1.「より透明性高く強固な」助言をするための新しい不確実性アプローチ
2. EFSAが作成したビスフェノールA(BPA)ハザード評価手順書に対するパブリックコメント募集結果の報告
3. 3-モノクロロプロパンジオールとその脂肪酸エステルに関するリスク評価の改訂
4. ナトリウムの食事摂取基準(中間草案)及び関連する手順書について食品・栄養・アレルゲンに関するEFSAのパネル(NDAパネル)が示した科学的意見に対するパブリックコメント募集結果
5. ショ糖脂肪酸エステル(E 473)を食品添加物として使用する場合の詳細暴露評価
6. 大豆(Glycine max)の外皮から得られる食品酵素ペルオキシダーゼの安全性評価
7. 新規食品成分関連
8. 飼料添加物関連
9. 食品と接触する物質関連
10. 確証的データを踏まえたフルオピラムの農薬リスク評価に関する加盟国、申請者、EFSAの意見募集結果
【FSA】
1. 消費者意識調査の結果発表
【NHS】
1. Behind the Headlines
【ANSES】
1. ANSESが最初の植物ファーマコビジランス・ファクトシートを公表
【FDA】
1. FDAが公認第三者認証プログラムに基づく一次認定機関を承認;任意適格輸入業者プログラム発足
2. クラトムがオピオイド化合物を含むことを示すFDAの科学的根拠と強調すべき依存症の誘発性:FDA長官Scott Gottlieb医学博士の声明
3. FDA及びFTCは、虚偽の強調表示を使用した違法な未承認オピオイド依存症向け製品を販売したとして企業に警告
4. CFSANの新しいシニア科学アドバイザーは農産物の安全性向上への架け橋を築こうとしている
5. 警告文書
【NIH】
1. サプリメントは運動やダイエットの習慣付けに役立つか?NIH発の新情報源でダイエタリーサプリメントにまつわる混乱を整理する
【FTC】
1. 広告企業が消費者に詐欺的に宣伝されている減量サプリメントの宣伝販売を支援することを禁止される
【FSANZ】
1. 輸入食用油中のトランス脂肪酸の評価
2. 食品基準通知
【TGA】
1. 安全性助言
【AVA】
1. マレーシア産COFFEE TREE MYCAFE「4-IN-1 PENANG ドリアンホワイトコーヒー」のリコール
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)麻痺性貝毒 チリ