2015年食の10大ニュース[8]

食品表示法がスタート、機能性表示食品の販売が始まる、トランス脂肪酸が話題に、他。

  1. 食品表示法がスタート
  2. 機能性表示食品の販売が始まる
  3. トランス脂肪酸が話題に
  4. 食品安全委員会、健康食品について報告書で注意喚起
  5. 日本人の食事摂取基準が2015年版に
  6. 食品由来の疾病で、世界で年間42万人が死亡
  7. 豚の生食禁止、ジビエも加熱を
  8. 地理的表示保護制度に神戸ビーフなどが登録
  9. 軽減税率で議論
  10. ゲノム編集技術の進展

1. 食品表示法がスタート

 食品衛生法、JAS法、健康増進法の3法にまたがっていた食品表示の制度を一元化した食品表示法が、2015年4月より施行された。これにより、加工食品では、原材料と添加物をスラッシュや改行で明確に区分するなど、表示方法が変わった。用語の定義などが統一され、「わかりやすい表示」が実現するはずだが、加工食品で5年間など、猶予期間が設けられており、まだあまり実感が持てない。

2. 機能性表示食品の販売が始まる

「『機能性』ではなく、『気のせい』食品なのでは……」などと一部で陰口も聞かれる新制度。機能性表示食品は国が安全性を審査しているわけではない。対象は病気にかかっていない大人であり、未成年や病気の人、妊娠・授乳中の方は対象外だ。そういった基本的なこともまだ十分認識されていないのでは。

3. トランス脂肪酸が話題に

 米国FDA(食品医薬品局)がトランス脂肪酸の主要な摂取源である「部分水素添加油」について、規制する決定を下したことがきっかけとなり、日本でもトランス脂肪酸の話題が再燃。日本人の摂取量は、米国と異なり、もともとそれほど多くないし、商品中の含有量も低減されてきているのだが。トランス脂肪酸を減らすと飽和脂肪酸が増えるという問題があるので、全体の摂取量を考えることが必要。

4. 食品安全委員会、健康食品について報告書で注意喚起

 食品安全委員会が出した報告書には、「健康食品でかえって健康を害することもある」とのメッセージが込められている。食事によって必要な栄養素が充足している場合、サプリメントでさらに栄養素を補給することが、果たして健康にプラスとなるのか。否定的な情報が示されている。健康食品の品質のばらつきも大きな問題のようだ。

●「健康食品」に関する情報(食品安全委員会)
http://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.html

5. 日本人の食事摂取基準が2015年版に

 これから5年間、日本人の食事摂取基準として、2015年版が使用される。塩分摂取の目標量は1日に男性8.0g未満、女性7.0g未満と厳しめに変更。食事摂取基準は第一出版から本として出されているが、厚生労働省ホームページでもPDFで無料公開されている。科学的根拠が整理されており、いろいろな食と健康の情報を確かめたいとき役立つ。

●「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」の報告書を取りまとめました(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000041733.html

6. 食品由来の疾病で、世界で年間42万人が死亡

 WHO(世界保健機関)が食品由来の疾病に関する報告書を発表。汚染食品の被害者は、毎年世界で約6億人、うち死者は約42万人。被害の半数以上は下痢性疾患で、特に子どものリスクが高い。

7. 豚の生食禁止、ジビエも加熱を

 2015年6月、豚の生食の提供が禁止された。豚の生レバーなんて、通常考えられないようなものが実際に飲食店で提供され、食べる客がいて、法律で禁止せざるを得なかったわけで、驚きを通り越して、あきれてしまう。豚の生食はE型肝炎ウイルスや寄生虫感染のおそれがある。イノシシ、鹿などジビエも同じなので、十分加熱して食べるよう注意喚起されている。

8. 地理的表示保護制度に神戸ビーフなどが登録

 伝統のある特産品を地域ブランドとして国が保護する地理的表示保護制度の品目として、神戸ビーフ、但馬牛、夕張メロンなどが初登録。地理的表示の「GIマーク」をつけることになる。各品目の特性が農水省ウエブサイトで紹介されていて便利。

9. 軽減税率で議論

 以前、JAS法の「加工食品品質表示基準」「生鮮食品品質表示基準」などがあったころ、加工食品と生鮮食品の線引きについてはずいぶん議論されたものだが、消費税引き上げ時の軽減税率の検討の中で、「さしみの盛り合わせは加工品扱いか」など、同じようなやりとりが。やはりこの線引きはいつまでたっても難しいようだ。結局、加工・生鮮とも軽減税率の対象となり、外食は対象外となるようだが、今度はイートインは外食か、出前はどうかなど、また悩みそう。

10. ゲノム編集技術の進展

 ゲノム編集等の新しい育種技術の開発が進められている。2015年9月に農林水産技術会議から報告書が出された。社会の支持を得て、うまく進んでいくことを期待したい。

●「新たな育種技術研究会」報告書の公表について(農林水産省)
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/150911.htm

番外

 番外としては、全国でのフードバンク等の取り組み、ジャーサラダの流行、IARC(国際がん研究機関)の食肉と加工肉の発がん性に関する発表、有機肥料の偽装表示、カフェインの中毒事故などが気になった。

 また、食品安全委員会で10年間にわたって審議されてきたDAG(高濃度にジアシルグリセロールを含む食品:花王エコナ)について、2015年3月に、評価が完結することなく終了したことも、記憶に留めておきたい。

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About 瀬古博子 7 Articles
消費生活アドバイザー せこ・ひろこ 公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会会員。2018年3月まで、内閣府食品安全委員会事務局で、リスクコミュニケーション等に従事。