9月24日、女優の川島なお美さんが胆管がんのために亡くなられました。享年54歳。ご冥福をお祈りします。
公式ブログの昨年春の記事には「素晴らしい民間療法との出会いもありました」とあり、一部報道でそれを特定する記事も見られます。信心に意見するつもりはありません。ただとにかくご本人が最期までベストを尽くしたと納得していらしたことを祈るばかりです。また、科学的な治療を拒絶していたことを示唆する記事も見られますが、実際には外科手術も受けられていたのでした。
私たちの生きる世界の大半は未知の世界です。そして、その未知の世界の中にできるだけ理屈で理解できる部分を作り、できるだけ自分たちでコントロールできるようにしていこうとしてきたのが人類の歴史であり、今も続く我々のチャレンジと言っていいでしょう。
物事を理屈で理解できるようにする行いを科学と呼びます。一方、未知のものを未知なりに受け止めて大切に扱う行いは、宗教や各種の呪術によります。多くの人は、この二者を対立概念のように考えがちですが、実のところそうではありません。
宗教を持つ科学者は無宗教や無神論の科学者より多いでしょう。また、多くの自然科学の知見は死後の世界や霊の存在を否定する材料となっていますが、それでもなお、多くの人は死者に手を合わせ、死後にもその人の今を想うことをやめないものです。
科学的態度と宗教的態度は物事の見方や味わい方の違いであり、実はどちらが正しいわけではなく、併存するものなのだと私個人は考えています。ですから、致死的な行動、いたましい人権侵害、不当な収奪等につながるものでない限りは、科学は宗教を非難したり論評したりするのには慎重であるべきです。それと同じく、宗教も、科学を非難したり論評したりするのには慎重であるべきです。
善良な科学と宗教と、双方がそれぞれに発展する社会であってほしいものです。こと食品については、両サイドそれぞれに嘆かわしい言動が目に付きますが。
※このコラムはメールマガジンで公開したものです。