6月に強い店は実力派と見る

「外食産業市場動向調査」(日本フードサービス協会)の6月度のデータが出て来ました。全体として客数減・売上げ減で芳しくない数字ですが、麺類ファストフード、焼き肉ファミリーレストラン、ディナーレストラン、その他の部門が健闘していました。

※「外食産業市場動向調査」2015年6月

https://www.foodwatch.jp/jf201506/

 もう36年も前の歌ですが、バラクーダというコミックバンドが「日本全国酒飲み音頭」というものを発表してヒットしました。1月から12月まで、毎月何かしらの理由を付けて「酒が飲めるぞ」とやるものです。

※バラクーダー ゴールデン☆ベスト(視聴ボタンがあります)

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 その理由を列挙するとこうなります。

  • 1月 正月で
  • 2月 豆まきで
  • 3月 ひな祭りで
  • 4月 花見で
  • 5月 子供の日で
  • 6月 田植えで
  • 7月 七夕で
  • 8月 暑いから
  • 9月 台風で
  • 10月 運動会で
  • 11月 何でもないけど
  • 12月 ドサクサで

 この6月について、今は5月の連休に田植えというところが多いのが、麦作も一般的だった昔はやっぱり6月が田植えだったのだなと感心するというのは、都市に住む人にはあまりピンと来ないでしょう。

 ほかに酒を飲む理由として頼りないものを見て行きますと、たとえば8月は「暑いから」となっていますが、これはビールが進みそうです。お盆の行事にからんでということもあるでしょう。7月・8月は夏休みの行楽シーズンでもあります。

 9月の「台風で」というのも怪しいものですが、台風前後の作業にからんでねぎらいというのがあったかも知れません。しかし、ここには昔から敬老の日と秋分の日という休日があり、この敬老の日がかつての9月15日から9月の第3月曜に移り、さらに「国民の祝日」に挟まれた日はオセロゲームのように「国民の休日」となって、今年は土日を含めて5連休となります。……飲めそうです。

 10月は「運動会で」となっていますが、最近は新学期に運動会を行う地域が多いようです。しかし、10月には体育の日があります。

 11月は「何でもないけど」とはとんでもない。文化の日があり、勤労感謝の日もあり、紅葉狩りに出掛けたくなる時期でもあります。

 12月は天皇誕生日があり、クリスマス、そして冬休みの時期です。休み前に仕事をかたづけなくてはという「ドサクサ」、忘年会もあるでしょう。

 こうして見てくると、6月というのは他の月にくらべて、どうも飲むネタがない月ということになりそうです。いいえ、これを酒が飲めるか飲めないかの話とはとらえないで、生活者の財布の紐がゆるむかどうかの話と考えてください。6月は、小売業では「梅雨対策商戦」というものがありますが、外食業としてはこれという売り方が見つけにくい月です。

 しかし、そのように難しい月だからこそ、外食業にとっての6月というのは、実は店の実力を測る機会と見ることができるのです。とくに祝日もない、行事もない、しかもボーナス前ですから、外食の動機が起きてこない。それでも来店がある、堅調に推移する店・チェーンというのは底力がある、基本的な集客力を持っている店、ないしは一般に集客が難しい時期に独自の集客の工夫を行っている店だと考えられます。

 6月がそういう月だと理解した上で、改めて麺類ファストフード、焼き肉ファミリーレストラン、ディナーレストランが健闘したということを振り返ってみると、今の外食市場で学ぶべきことは、この3業態にあるはずということがわかるでしょう。

※このコラムはメールマガジンで公開したものです。

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About 齋藤訓之 398 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所特任研究員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。日本フードサービス学会、日本マーケティング学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →