放置されたGM規制巡る矛盾

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.16(2015.08.05)を発表した。また、同研究所のネットワーク遮断の都合で「食品安全情報(化学物質)No.14(2015.07.08)」および「食品安全情報(化学物質)No.15(2015.07.22)」に掲載できなかった記事を「食品安全情報(化学物質)No.16(2015.08.05)別添」としてまとめ、発表した。

注目記事

【EC】遺伝子組換え食品と飼料規制についてのポイント

欧州委員会(EC:Food Safety: from the Farm to the Fork)、健康食品安全コミッショナーのVytenis AndriukaitisによるGM規制改訂提案に関するスピーチ――新たな遺伝子組換え食品規制案について――の一部。

 この提案は以下のジレンマの文脈で検討されるべきである:一方でEU市民は多くの国でGM食品について懐疑的である。その一方、EUの畜産業者は蛋白源となる穀物の輸入に大きく依存し、そのほとんどが遺伝子組換え大豆である。

いくつかの基本事項を再確認しよう。

最初に、EUの認可システムはしっかりした科学に基づく。GMOは健康や環境への安全性がEFSAにより評価された場合にのみ市場に入れる。我々は科学的基準と根拠に基づいた決定を尊敬する。

二つ目に、委員会は民主的に認可を採択する。そのためGMOの認可の前に加盟国に相談する:最初は委員会に、委員会で明確な意見がなかった場合は上訴委員会に。このようにして加盟国には見解を表明する機会が2回ある。しかしこの規制が発効して以来、加盟国は賛成にも反対にも過半数になることがなく、67のGM食品や飼料に「意見なし」としてきた。

現状は矛盾していて、EU全域で認可されたGMOがGMO反対の国でもすでに広く使用されているのに、それらの国が認可を批判している。この事態はEUやその機関への不信を生む。

すべての人が、全面的に適切な責任を果たすときが来ている。

【FSA】ダイエット用製品「DNP」に急性中毒の可能性

英国 食品基準庁(FSA:Food Standards Agency)は、ダイエット用製品「DNP」について、緊急健康警告を発している。

DNPは、2,4-ジニトロフェノール、Dinosan、Dinitra、Dnoc、Solfo Black、ニトロフェン、アルジフェン、Chemoxとも呼ばれる。DNPはヒト摂取にとって安全ではないが、違法に「脂肪燃焼剤」として販売され続けている。DNPは摂取すると急性中毒を起こす可能性がある。

【EFSA】科学評価のための「不確実性ツールボックス」

欧州食品安全機関(EFSA:European Food Safety Authority)の科学委員会は、すべての科学的評価の科学的不確実性を解析するための、定性的及び定量的な方法論のツールボックスを提供するガイダンス文書を開発した。同機関は、このガイダンス案に意見を募集している。

科学者は科学的評価における不確実性をもたらす広範な要因に対応しようと常に努力している。それらには、データの質や代表性に関する限界、国や分類で標準化されていないデータを比較することの困難さ、他のものではなくある予想モデル技術を選ぶこと、平均成人体重のようなデフォルト値を使うこと、などが含まれる。科学者がそれらをどう説明し、EFSAのような公的機関がそれをどうリスク管理者や関係者、広範な一般の人々に伝えるかは、評価のリスクとベネフィットについての認識とそれに伴う政策決定や個人の選択を変える可能性がある。

【EFSA】小売りでの魚の保管

欧州食品安全機関の、魚の販売での温度についての助言。

保管の時間と包装の二酸化炭素含量が、主要温度依存性ハザードであるヒスタミン生成に対する温度の作用に影響する二つの主要因子である。科学者はEUの食品安全のための各種保管温度基準に合致する、これら二つの要因の組み合わせを同定した。これらがEFSAの小売店での包装済み水産物の温度に適用される報告書の結論の一部である。

EUではヒスタミン中毒は水産物による病気としては最もよくみられる。ヒスタミンは加工・調理前に適切に冷蔵されないと一部の魚に生じる物質である。EUでは魚中濃度が規制されている。マグロ・カツオ、サーディン、サバ、アンチョビなどでヒスタミンが生じる。

ヒスタミンを高濃度含む水産物は見た目や臭いに変化はないが、病気を起こす。症状は口や喉のチクチクする感じや焼ける感じ、発疹、頭痛、下痢などで、通常食べてから1時間以内に発症する。加熱や冷凍、缶詰加工では一度生成したヒスタミンは破壊されない。最良の予防法はコールドチェーンを維持し魚を冷蔵し続けることで生成を止めることである。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.16(2015.08.05)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2015/foodinfo201516c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.16(2015.08.05)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2015/foodinfo201516ca.pdf

今号の目次

食品安全情報(化学物質)No.16(2015.08.05)

【WHO】
1. IARC:5大陸のがん罹患率第XI巻、グリホサートモノグラフ発表

【EC】
1. 遺伝子組み換え食品と飼料規制についてのポイント-欧州連合理事会-農業水産業
2. 内分泌攪乱物質:欧州委員会はパブリックコメントの要約報告書を発表
3. FVO査察報告書:ドミニカ共和国、ウルグアイ、キューバ、クロアチア、ベラルーシ、カンボジア
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 香料物質に安全性の懸念があるとみなされる
2. 科学的評価においてデータと根拠を取り扱う基本原則とプロセス
3. 意見募集:健康強調表示ガイダンス
4. 遺伝子組換え関連
5. 食品添加物としてのクロロフィル(E 141(i))及びクロロフィリン(E 141(ii))の銅錯体の再評価に関する科学的意見
6. 健康強調表示関連
7. 飼料添加物関連
8. 新規食品としてのUV処理パンの安全性に関する科学的意見
9. グリホサート:EFSAはIARCの知見を評価する
10. コバラミン(ビタミンB12)の食事摂取基準に関する科学的意見
11. α-トコフェノールとしてのビタミンEの食事摂取基準に関する科学的意見

【FSA】
1. DNP:緊急健康警告
2. マスタードオイルのエルカ酸
3. 食用昆虫について情報が必要
4. 新規食品関連
5. 消費者意識追跡調査の結果発表

【HSE】
1. PRiF:最新モニタリング結果

【PHE】
1. ヒトと動物の抗生物質使用・販売・耐性に関するワンヘルス報告書:2013

【ASA】
1. ASAホットトピック 食品と飲料の宣伝について

【RIVM】
1. 急性吸入毒性のプロビット関数導出法
2. 2014年子ども陰膳調査:デザインと実施

【ANSES】
1. ケトプロフェンとイブプロフェン:ヒトが摂取する水に存在しても健康リスクはない

【FDA】
1. 新しいツールは輸入食品の安全性確保の努力を進歩させるだろう
2. リコール情報
食品安全情報(化学物質)No.16/ 2015(2015. 08. 05)
3. 警告文書
4. FDAは栄養成分表示に追加の改訂を提案

【CDC】
1. 食用大麻製品を食べたことによる死亡-コロラド、2014年3月
2. リゾート地のコンドミニアムでの臭化メチル暴露による重症-米国バージン諸島、2015年3月

【NYC DOHMH】
1. 保健省はニューヨーカーに対し高濃度のヒ素、鉛、水銀を含むことがわかったある種のアーユルベーダ医薬品を避けるように助言

【CFIA】
1. 食品リコール警告(アレルゲン)コーヒーソフトキャンディ、抹茶ソフトキャンディ、リボンブランドソフト北海道ミルクキャンディ

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【香港政府ニュース】
1. 6人が食中毒
2. 魚検体からマラカイトグリーンが検出された
3. 衛生署は表示されていない規制対象薬物を含む痩身用製品の違法販売疑いで小売店を家宅捜査
4. 衛生署はアルカロイド汚染のある専売中国薬を捜査

【MFDS】
1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 海外のインターネットサイト販売商品の購入の際注意
3. MERS予防などを標榜する虚偽・誇大広告品の取り締まりの結果
4. ウォーターティッシュ、洗浄剤などの原料成分の危害の恐れはない
5. ホルムアルデヒドが基準を超過した「ポップコーンボウル」製品の回収措置
6. 食医薬品安全処、食品中の食肉原料に混入可否判別法の技術移転

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)中毒、ダイエット錠剤 英国(イングランド)致死
・(EurekAlert)ワシントン州立大学の研究者らが米国の母乳にはグリホサートが含まれないことを発見
・(EurekAlert)がんと食事のパラドックスを解く:がんと代謝の特集号
・(EurekAlert)The Lancet:広島・長崎から福島まで-核災害の長期精神影響について強調するシリーズ

食品安全情報(化学物質)No.16(2015.08.05)別添

【WHO】
1. 国際がん研究機関(IARC)
2. コーデックス委員会

【EC】
1. EUの耕作地土壌へのカドミウム蓄積の将来傾向についての新しい結論への意見
2. パブリックコメント募集
3. 食品安全:輸入果実・野菜のコントロール報告書はシステムが欧州の消費者を守っていることを示す
4. RASFF年次報告書2014発表
5. DEHPを可塑剤に使用したPVCあるいは他の可塑剤を含む医療機器の、新生児やその他リスクの可能性のある集団に対する安全性について
6. 合成生物学についての予備的意見III:研究の優先順位
7. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. EFSAは科学評価のための「不確実性ツールボックス」を提案する
2. EFSAはGM植物のリスク評価に必要なデータを明確にする
3. ミツバチ:EFSAは多数のストレス要因に取り組む
4. 食品添加物としての酸化ポリエチレンワックス(E 914)の再評価に関する科学的意見
5. パブリックコメント募集:銅の食事摂取基準
6. EFSAは保護区の蝶や蛾を守るための助言を更新
7. 小売りでの魚の保管:EFSAの温度についての助言
8. 飼料添加物関連
9. GM植物のアレルゲン性評価に関するワークショップ
10. ペルフルオロメチルペルフルオロビニルエーテルの食品と接触する物質としての使用のための安全性評価に関する科学的意見
11. モンサントからの、除草剤耐性遺伝子組換えトウモロコシNK603 × T25の(EC)No 1829/2003下での食品及び飼料としての使用、輸入および加工のための市販の申請についての科学的意見

【FSA】
1. 「世界の文脈での英国のフードシステムのレジリエンス(回復力、反発力)」イベントに研究者招待
2. マギーヌードルの検査結果発表
3. 新規食品申請
4. Fovitor International社はDzomiパーム油を違法Sudan色素を含むためリコール

【HSE】
1. PRiF:2014年第4四半期残留農薬報告書
2. PRiF:最新モニタリング結果

【BfR】
食品安全情報(化学物質)No.16/ 2015(2015. 08. 05)別添
1. EuroMix: 食品中の混合物に関連する健康リスクのより良い評価

【RIVM】
1. 水銀による二次中毒のための水ベースの基準導出
2. 堅い表面への除草剤の使用:低リスク物質除外ための選択肢について助言
3. 労働者にとっての新規および新興化学物質リスクの優先順位付けとフォローアップ対応
4. オランダの環境放射能 2013年の結果
5. 飲料水生産用地下水の放射性汚染後のモニタリング戦略

【FSAI】
1. 食品事業者向けの貝警告

【FDA】
1. ダイエタリーサプリメント:有害事象報告
2. FDAはフレーバーウォーターや栄養添加水飲料を含むボトル入り水飲料の安全性を規制している
3. 警告文書
4. 危険なニセの、未承認医薬品との世界的戦い:パンゲア作戦からFDAの世界戦略枠組みまで

【CDC】
1. 電子機器スクラップリサイクル施設から親が持ち帰ったことによる暴露による子どもの鉛中毒の調査

【CFIA】
1. 消費者向け情報 インド産マギーブランドヌードル製品についての情報更新

【FSANZ】
1. 豚肉のクマテトラリルとワルファリン-MRL
2. GM大豆系統申請に意見募集

【APVMA】
1. ナノテクノロジー規制

【TGA】
1. ニセおよび違法医薬品への世界的取り締まり
2. 警告

【香港政府ニュース】
1. ラードの安全性強化予定
2. トランス脂肪を規制する計画はない
3. 鉛の検査を実施

【MFDS】
1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. ホルムアルデヒド(formaldehyde)が基準を超過した「竹製キッチン用品」製品の回収措置
3. 説明資料(ソウル新聞「“食中毒予防”vs“食堂反発”:衛生等級制がギクシャク」の記事に関連して)
4. 国民が多く摂取する外食78種の栄養成分を確認してください!
5. 異葉牛皮消混入が確認された白首烏(ペクスオ)製品の回収及び異葉牛皮消未混入製品の販売許可

【FSSAI】
1. 中国からの乳及び乳製品の輸入禁止についての2015年6月22日の助言
2. インドにおけるカフェイン入り/エネルギードリンクの摂取パターン研究実施への応札募集
3. 食品基準案

【その他】
・(ProMED-mail)食中毒 フィリピン:(Caraga地域)ドリアンキャンディ
・(EurekAlert)香港理工大学が食用油の迅速真正性同定と地溝油のスクリーニング法を開発
・(EurekAlert)フロリダではこれまで報告されていたより多くの人が熱帯の珊瑚礁の魚の毒素で中毒になっている
・(EurekAlert)ありのまま:如何にしてセントジョーンズワートがあなたを病気にするか
・(EurekAlert)マルハナバチは北米とヨーロッパで気候が暖かくなるにつれ消えている