緑茶の機能性成分がポリフェノール「カテキン」なら、紅茶は同じくポリフェノールだが、紅茶特有の「テアフラビン」だという話だ。
ポリフェノールの抗酸化作用
その前にポリフェノールの復習を。ポリフェノールはほとんどの植物に含まれている成分で、植物にとってその細胞の生成や活性化に必要不可欠なもの。我々が植物を見た時、あるいは食べた時、その存在を色や苦味、渋味で確認している。5000種類以上が確認されている。
その機能性が注目されるようになったのが、かつての「赤ワイン」ブーム。赤ワインに多く含まれているタンニンやケセルチンなどのポリフェノールが、動脈硬化を抑制し、動脈硬化を原因とする生活習慣病を防ぐというものだった。それをきっかけにさまざまな植物に含まれるポリフェノールの種類とその機能性についての研究が進んだ。
その機能性の代表的なものが「抗酸化作用」。そして、緑茶のカテキンと紅茶のテアフラビンに強い抗酸化作用が含まれていることがわかった。
カテキンから生まれるテアフラビン
さて、同じお茶の葉が原料なのになぜ異なるポリフェノールなのか。加工方法にその理由がある。
緑茶の場合、お茶の葉を摘むとすぐに「蒸す」あるいは「炒る」。この作業によって、葉に含まれている酸化酵素の活動を止めて、緑色を維持する。一方、紅茶は摘んですぐに揉む。揉むことによって葉の表面の細胞を破壊して傷をつける。これにより葉は酸化し、赤くなる。
ここで少々専門的な説明を。お茶の葉がもともと持っているポリフェノール、カテキンは酸化することによって「重合」という化学変化を起こす。複数の分子が1つになることだ。カテキンの2つの分子が1つになると「テアフラビン」になり、多くの分子が1つに結合すると「テアルビジン」というポリフェノールになる。紅茶の葉の中ではこの2種類の化学反応が同時に起こっている。
茶葉に含まれるカテキンはもともと無色だが、酸化重合して出来るテアフラビンないしはテアルビジンは橙赤色から褐色の色を呈し、どちらかのポリフェノールが多く含まれているかによって、紅茶の色が決まる。テアフラビンが多いと美しい橙赤色になり、テアルビジンが多いと褐色が強くなる。テアフラビンが多い紅茶の方が良質だとされている。ちなみに、テアルビジンの抗酸化力については研究途上だという。
活性酸素を除去する機能
抗酸化作用についても説明したい。
呼吸などによって体内に取り込まれる酸素は、血液に含まれて血管を通って体中の細胞に運ばれ、エネルギー生成に使用される。しかし、その酸素のごく一部が「活性酸素」というものに変化する。活性酸素は殺菌などの有益な働きも有しているが、人体内では性質のほとんどがデメリットとなる。
体内に活性酸素が多くなり過ぎると、体内の脂質やタンパク質を酸化して変質させたり、遺伝子を傷つけるなどの悪影響を人体にもたらす。その結果として、動脈硬化や糖尿病、がんなどの生活習慣病を引き起こす原因となる。
この活性酸素を除去する機能性をカテキンとテアフラビンが持っているというわけだ。さらには、コレステロール値上昇の抑制、腸内環境の改善、胃潰瘍の予防と改善、ウイルス感染の抑制、抗アレルギー作用、さらにはダイエット効果など広範な機能性が報告されている。
テアニンがカフェインの作用をマイルドに
ところで、お茶と言えば「カフェイン」も無視できない。この成分の機能性はよく知られている。目覚めをよくする働きを始め、血流促進とそれによる脂肪燃焼ダイエット作用と低血圧改善効果、利尿作用、肝臓や腎臓の機能を活発にしてアセトアルデヒドの分解を促すことによる二日酔い防止効果などだ。
一方で、興奮作用や覚醒作用などをデメリットとして問題視する向きもあるが、紅茶の場合、アミノ酸の一種である「テアニン」がカフェインと結びつくことで、そうしたデメリットとされる作用を穏やかにするという。
なお、テアニンこそ紅茶の甘味や旨味の正体である。