増粘多糖類の原料として、アラビアガム、ローカストビーンガム(LBG)、グァーガムなどがあるという話の続き。
まだまだあるぞ増粘多糖類
リョウ 「来たか。ごくろう」
タクヤ 「向かいの自動販売機で缶コーヒーが100円になってましたので買って来ました」
リョウ 「気が利いてるねぇ、タクヤ君。オレもあの自販機で山ほど買ったぞ」
タクヤ 「なんだ。あるのか」
リョウ 「ま、缶コーヒーでも飲みなさい」
タクヤ 「えーと、グァーガムまで話しました。その続きです」
リョウ 「今日は脱線しないようにきちんと聞こう」
タクヤ 「はい。キチンというのもあります」
リョウ 「あ?」
タクヤ 「キチンはカニなど甲殻類の外骨格などの成分です」
リョウ 「ガイコッカクって、つまり殻だな」
タクヤ 「そうです。カニの殻」
リョウ 「よくキチン・キトサンとセットで言うな。クレハのキチントさんと頭の中でごっちゃになってるけど」
タクヤ 「キチンを加工したのがキトサンです」
リョウ 「またざっくり言っただろ」
タクヤ 「チキンを濃アルカリ中で煮沸するなどして脱アセチル化してキトサンを……」
リョウ 「悪かった。聞くんじゃなかった。しかし、カニの殻まで増粘多糖類の原料になるとは知らなかったな」
タクヤ 「カニ缶などカニ製品を作る産業では、カニの殻が大量の産業廃棄物になって処理に苦労しますから、ほかにも健康食品の材料にしたり、農業の土壌改良材にしたりとか、いろいろな利用を考えているようです」
リョウ 「なるほど。おい、この缶コーヒーの原材料名のところに『安定剤(カラギーナン)』と書いてあるぞ。これも増粘多糖類の一種だな」
タクヤ 「そうです。カラギーナンは海藻から取ります」
リョウ 「缶コーヒーに海藻から取ったものが入ってるとは知らなかったなぁ」
タクヤ 「海藻由来ではアルギン酸というのもあります」
リョウ 「海藻と言えば、寒天もゲル化するけど、あれも増粘多糖類か?」
タクヤ 「ピンポン♪ 昔からなじみのある増粘多糖類だと、ペクチンもあります」
リョウ 「ジャムの固さが出るのは果物が含んでいるペクチンのおかげだそうだな」
タクヤ 「食品添加物として売られているペクチンも柑橘類などの果実やその皮などから抽出したものが多いです。植物由来では、あとはコンニャクイモから取るマンナンですかね」
リョウ 「そうか。こんにゃくは丸ごと増粘多糖類みたいなものだな。オレはもう一つ見つけてたぞ。このソフトキャンディの表示を見ろ」
タクヤ 「あ、ジェランガムって書いてますね」
リョウ 「これも増粘多糖類だろう。豆由来か、樹液か、海藻か、どれなんだろうな」
タクヤ 「残念でした。増粘多糖類ですが、どれでもありません」
リョウ 「ちっ!」
タクヤ 「ジェランガムは微生物の醗酵で出来るものを分離して作ります。同じく微生物の発酵で作るものには、キサンタンガムというものもあります」
リョウ 「うん。それはドレッシングの瓶に書いてあったと思う」
タクヤ 「そうでしょう。2つともここ20年ぐらいの間に使われ出した食品添加物としてはニューフェイスですが、かなり普及しています」
食えるのか増粘多糖類
リョウ 「そうだよ。増粘多糖類というのはつまり食品添加物なんだよ。安全性とかはどうなってるんだ?」
タクヤ 「これまで挙げたものはどれも、昔から利用実績のある『既存添加物』というものと、食べ物だけれども添加物として使うという『一般食品添加物』と、どちらかに分類されています」
リョウ 「『いわゆる天然添加物』というやつだな」
タクヤ 「よくご存知で。いわゆる天然添加物の安全性は、国が調べ直している途中ですが、今のところ利用に問題ないということで食品添加物としてリストアップされているわけです」
リョウ 「じゃ食っていいな」
タクヤ 「ただ、ものによって食物アレルギーを持っている人がいるケースもありますから、作る側も食べる側も、表示には注意するべきでしょう」
リョウ 「いわゆる天然添加物以外に、指定添加物もあるのか」
タクヤ 「水に溶けないものを溶けるようにしたりというように、天然原料を化学的プロセスで利用に適したものにしたりしたものが20ほど指定されています。いわゆる天然添加物は50ぐらいか」
発泡酒にも増粘多糖類
リョウ 「しかし、とにかくいろいろな種類があるものだな、増粘多糖類は。そしてよくいろんなものに使われているものだ」
タクヤ 「用途をおさらいしておきますと、まずゲル化するのに使うゲル化剤。それから、ドレッシングやタレなどのとろみを出す増粘剤。ドレッシングなどでの利用は、混ざりにくいもの同士が混ざった状態を保つ安定剤としても期待されています。安定剤でもとくに水に油脂が混ざった状態の乳化を安定させる乳化安定剤という利用もあります。そして、アイスクリームや氷菓などの冷凍時の品質を保つ品質改良剤、といったところが主なものでしょうか」
リョウ 「ほんとにいろいろだな」
タクヤ 「あと、もう一つ。発泡酒、炭酸飲料などの気泡の状態をよくするのにも使われているそうです」
リョウ 「あの泡モコモコは必ずしも酒の醸造過程で出来るものとは限らないのか。しかし使い加減が難しそうだな」
タクヤ 「増粘多糖類を供給する側にも、利用する側にもいろいろなノウハウがあるようですよ」