健康食品の通販番組作りはハイクオリティになってきたぞ!(1)

筆者は健康食品の通販番組を11~12年やってきていますが、最初の頃は、まぁこんなに健康食品の業界が発達するとも思っておらず、こんなに通販番組がいっぱいになるとも思っていませんでした。そうした中、番組作りのクオリティも上がってきています。と言うより、そもそもの民放テレビ番組の原点にかえるような動きすら、出ているんです。

「番組制作費が削減されてるのって、CM入らないからですよ」

「通販番組がハイクオリティ化してきた」ってのはどういうことかというと、モノによっては通常の情報番組と比べて遜色ない仕上がりのものがちらほら出てきたっていうことです。労力・情報収集・映像の作り方、などなど……。

 6~7年前くらいからですかねぇ、そう感じてきたのは。その頃、通常のテレビ番組の現場ではドンドン、ドンドン制作費削減が行われて、現場にもわかりやすく影響が出てました。いやホントにドンドン、ドンドン……。ギャラが減る、その上でスタッフも減る、終電後まで会議になってもタクシー代が出なくなる、スタジオにあった「お疲れ様です自由につまんでください」のお菓子と飲み物がなくなる、会議で喫茶店から注文していたコーヒーがなくなって“お~いお茶”になる、さらにはそれもなくなる、といった具合(で、今もそのままでとどまっているんですが)。

 原因は広告媒体としてのネットの成長ですね。企業がどれくらい効果があるのか判然としないテレビCMよりも、クリック数で明確に成果が出るネットに流れていった分、テレビCMに落ちるオカネが減ってきたわけです。

 ただ、テレビの“CM枠”への出稿は減ったものの、ある“枠”は人気だったんですよ。それが“通販番組枠”。販売につながったか否かハッキリしないCMはヤダけど、その時間に電話やメールで直接的に注文がとれて販売できる、という通販をやりたい、っていう企業は多かったんです。

「CMヤダけど通販ならってんで、競合が増えちゃって」

「通販番組のクオリティが上がったこと」と関係ないように見えますが、関係あるのでしばしこの業界変化のことにおつきあいを。

 CMはやりたくないけど通販はやりたいっていうのはどういうことかというと、CMは

「こんなものがあります」→「お店で買ってね」

 という図式。かたや通販は、

「買うには今すぐお電話を」

 ということで、放送時間内で直接的に売り上げを上げられるんですね。まあ景気がよくないし、直接的に売り上げが勘定できる通販ならば、企業も広告宣伝費なのか販売費なのかをつけたということでしょう。で、いくつかの企業が健康食品の通販ですでに売り上げを伸ばしていたこともあって、他業種・他企業も健康食品を開発して通販で売ろう、という動きが次から次から出てきたわけです(ホント、次から次にという感じでした)。

 で、その後発で進出してきた企業が何を売ろうとしたかというと、その多くがすでに成功例のあったもの(青汁とか黒酢のサプリとか)の類似商品という例が非常に多かったんです。まあ種類はいろいろでも、視聴者にとっては「健康食品」と言うだけでも、たぶん同じように見えていたと思います。

 こうして競合が増えてきた中で、番組のクオリティが上がっていくようになったんですよ。

「ゴールデン級の豪華番組をやることになったんですよ」

 こうしていろんな企業の健康食品通販への参入が増える中で「ちょっと待てよ」と思ったのが、すでに売り上げを上げていた“先発組”です。彼らにとって、後発組は客を横取りにきたジャマモノでしかないわけですね。じゃあどんな対策をとればよいか? 一つは、商品そのものをパワーアップすること(ウリの成分の配合量をアップしたりする)。もう一つは、後発組よりも魅力的に見えるように番組のクオリティを上げることだったわけです! では「番組のクオリティを上げる」ために、具体的にどうなったか? 事例として説明した方がわかりやすいので、ここは会話調で再現しましょう。

 Pさんはある制作会社プロデューサー。“先発組”の健康サプリの通販を、私モリハタといっしょに作ってきた関係でした。ここでは健康サプリを「X社のDHAサプリ」としときましょう(実際にはDHAではなかったのですが、想像しやすいと思うので)。

 そんなある日――。

Pプロテューサー「モリハタさん、またDHAの番組を違う切り口で作ってほしい。でも今回は、これまでの通販を作るという感覚は捨てて、誰もが見たくなる作りにしてほしいんです」

モリハタ「でも売れてなんぼだからそこにどう落とし込むかでしょ?」

Pプロデュサー「いや違う。究極的に言うと、お値段や注文電話番号を番組内で言わなくてもいいくらい。とにかくこのX社のDHAがいかに素晴らしいかを、ゴールデン番組を作るくらいの構成と企画で提案しないといかんのです」

モリハタ「ゴールデン番組って言っても海外ロケできたり、VTRがあってスタジオがあって、誰にも知られてない秘境を探る壮大な冒険をやって……みたいにはいかんでしょう?」

Pプロデューサー「いや、必要ならいきます。企画がよければそのオカネを出す準備はある、と。X社としては、類似品を後発の企業がこれまでの番組をほとんどそのままパクッって売り出しているから、明らかに違う、ということをどうしても示さないとダメなんです。そのためにディレクターも変えました。ゴールデンで○○○(某有名番組)の経験がある人を準備してます」

 ……といった具合。会話はほぼリアルと思っていただいてかまいません。

 さあその番組はどうなったのか!? 次回!

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About 森畑たけし 65 Articles
通販番組制作担当者 もりはた・たけし 1975年生まれ。通常のテレビ番組と通販番組を手がけて12年。ひと昔前、一段下に見られていた感のある通販番組とその市場の成長に驚くばかり。同時に「やっててよかった~」とありがたい食い扶持があることにホッ……。しかし、膨大なグルメ情報、健康情報、お得情報などを発信し続けていながら、本人は全く活用できていない。自分が通販アイテムを買って続けるなら髪関係だろうかと、毛根と〆切が気になる人。