日本の外食産業はチェーンストア化を進めるプロセスで、キャッシュアンドキャリー化かそれを志向した接客の簡素化を強化しながら発展してきた。
人的要素の削減の合理化
今日の日本の外食産業では、チェーンストアの形を取っている店も、またそうでない店でも、多くが対面販売の要素を徹底的に切り詰めようとしているように見られる。
これによって人時生産性を上げようと考えているようだが、第6回で詳述したように、対面販売であるかセルフサービス販売であるかは、商業・サービス業を業種・業態的に区分して考える点からは大変重要なポイントになる。
かつての外食は、対面販売すなわち人が介在する顧客接点での密度の濃いサービスを伴うことが前提となっていた。したがって、価格は比較的に高額であり、それほど足しげく外食をする機会が多かったとは言えないかもしれない。
ところが1970年代以降、システム化された欧米型の外食産業のシステムが取り入れられた。その特徴は、顧客接点(店舗)から調理加工の工程と複雑な判断をなるべく取り除くことと、すべての作業を標準化することだった。
調理加工の工程を顧客接点から除くには、セントラルキッチンと呼ばれる工場での加工度を高めることで実現した。また、複雑な判断とは、しかるべき職歴や人生経験によって可能な経営の采配でもあるし、個別の顧客の多様な要望に臨機応変に細やかに対応することでもある。
チェーンストア化した外食は、前者についてはチェーン本部に一括した。一方、後者に対応するために取られたのが、接客時間の短縮、そのためのキャッシュアンドキャリー(品物とその対価を店頭で交換して売買を終了する)の採用であった。
それ以前の日本に、最終加工が終わったばかりの食品をキャッシュアンドキャリーで提供する業態が全くなかったわけではない。たとえば江戸時代からあった天ぷら、そば・うどん、すしの屋台などはキャッシュアンドキャリーと言える。
しかし、これら比較的身近になった屋台の商品に対して、70年前後から、当初高級品であったハンバーガーやフライド・チキンなど米国式のファストフードサービスが導入されると、キャッシュアンドキャリーの可能性に注目が集まる。ファストフードサービス以外の業態でもキャッシュアンドキャリー化やキャッシュアンドキャリーへの接近が図られた。