企業内・企業間であるべき連鎖・連携について考え直す連載。このシリーズで言う「チェーン・ビジネス」の範囲と、一般に行われている業種・業態分類の特徴を見ている。今回は、価格戦略でグループ分けをした場合の、価格破壊志向型チェーンについて述べる。
多様化・増殖する価格破壊志向型
さて、まず価格破壊志向型のグループから見て行こう。ここには、「価格破壊」の初期的代表モデルとなったGMS、スーパーマーケット、カテゴリーキラーの中心的な業種・業態である家電量販店、ドラッグストア、ホームセンター、生協(COOP)、農協(JA)、100円ショップなどが存在する。
とくに100円ショップは上昇気流に乗っており、その旗手である「ダイソー」(大創産業)などは直営店・FC店の混在で店舗網の拡大を続けており、現時点ですでに国内2570店舗のほか海外展開も25カ国、564店舗を運営するまでになっている。単価100円の商品を販売しながら3414億円(2010年3月期)で達成している。この金額はダイソーの卸売り金額なので、末端の店舗総売上高はさらに高いことは間違いない。
同様のビジネスモデルと推察できる「キャン★ドゥ」(キャンドゥ)でも同じ時期で624億以上円、「meets.」「シルク」(ワッツ)でも346億円以上を売り上げている。
また、ローソンは「ローソン100」としてこの分野に進出している。
顧客接点と商流の全体で低コスト化
価格破壊志向型の価格破壊の手法は多様だが、いずれの場合も、大量購買を実現するために大量販売力を持つことが基本であり、そのために大量の販売が可能な顧客接点からなる大規模な販売網を構築する形を採っている。
この顧客接点ではセルフサービスを採用しており、チェーン全体では商品や作業の標準化、合理化をあらゆる段階で追究している。
合理化の中でも、人件費の圧縮は価格破壊志向型では最重要項目の一つとなっており、「コスト削減を目的とした凡事の非凡な徹底」が実にきめ細かく、ビジネスの各段階で実行されている。
また、商品のコスト削減のために原材料や製品そのものを海外から調達したり、生産委託などを行うことが多い。なお各国の人件費や製品価格の高低は必ずしも実際の調達価格とは直結せず、各国の輸出促進策などの有無によっても変わってくる。
さらに、資本回転率の効率化も大きなコスト削減効果につながる。そこで、資本高回転型のビジネス実現のために商流全体を通じて在庫の削減を目指している。
「値下げ」から「値引き」へ
コスト削減実現のためには、競合相手との可能な分野での共通化・共同化を図ることも行われている。たとえば共同配送や、商品の開発・共同購入を行うといったボランタリー性の強いチェーンの形成なども一般的になってきている。それでも規模のメリットが十分ではない場合には、M&Aも盛んに行われる。
このグループに含まれる業種・業態は、このように総力を挙げて価格破壊に挑戦し、基本的には「値引き」ではなく「値下げ」の形で「価格破壊実現の結果」を表現してきた。しかし、ときには「値引き」で表現することもある。この値引きのコストは自社・自チェーンが負担するとは限らず、仕入先に協賛や協力を求める。
日本がデフレ傾向を持つ産業構造・市場経済になったのは、この種の業種・業界の比率が上昇したこと、値下げではなく値引き努力の連鎖が常態化したことも一因でかもしれない。