日本の土の土壌型は基本的には褐色森林土であると説明しましたが、そのほかにもたくさんの種類の土があり、それぞれに適した作物があったり、生産効率の善し悪しもさまざまです。
火山灰は粒子の大きさや降灰年代によってさまざま
褐色森林土のほかに、日本の畑に特徴的な土として火山灰土が挙げられます。
関東平野の土はほとんどこれであり、日本の畑の4分の1はこれです。
火山灰土は、火山から噴火したものが風で遠くへ飛んでいって降り積もったものです。ただ、その一言ではくくれないものでもあります。たとえば、記録では鹿児島の桜島から東京まで飛んできた火山灰もあります。こういうものは非常に細かな粒子の火山灰です。逆に、問題の火山の周辺に集中して降り積もる火山灰は、もっと粒子が大きいと言えるでしょう。そのように、一口に火山灰と言っても、その粒子の大きさも違いますし、降り積もる厚さも違います。また、降灰してからどれぐらいの年月が経ったものかによっても、様子が違います。日本列島の中には、いろいろな種類の火山灰土があるということになります。
また噴火したものの中でも、とくに粒子の大きいもので、年月の経っていないものは、特別の種類に分けられます。これは火山灰土ではなく、火山放出物未熟土と呼ばれています。
根ものの品質がよい赤黄色土、野菜作に向く砂土
次に特徴ある畑の土は、赤い土です。これは赤黄色土という種類です。
これは、たとえば日本海側の松江周辺とか、新潟県の寺泊や柏崎とか、太平洋側では静岡の三方ヶ原や愛知の渥美半島など、各地に点在しています。
また、この赤黄色土の仲間に近いのですが、性質が異なる土が少しだけ日本にあります。それは石灰岩が風化して出来上がった土です。これは山口県の秋吉台、愛媛県と高知県の県境付近、大分県の耶馬溪あたりなどにあるチョコレート色とも言える赤い土です。
この土の特徴は、たいへんな粘性の強さです。簡単に「粘る」という程度のものではない、たいへん強い粘性があります。
ならば作りにくい土地だろうと思うでしょうが、この土の畑で作られる野菜はたいへんおいしいものです。とくに根ものは非常によいものが出来ます。この土でゴボウを栽培している若い農家を知っていますが、一度その味を知ってしまうと他のものは食べられません。
魅力ある産地であると言えます。
ではもう一つ、畑の土としては変わり者の代表格を挙げることにします。砂土です。
「砂は土であるか否か」とよく聞かれますが、答えは土です。ただ、土ではありますが、それを構成するものが他の土とは異なります。
つまり、粘土や腐植が極端に少なく、そのかわり岩石の小さな破片、つまり砂粒が多いということです。砂土は全国の海岸線に沿って分布しています。
通常、砂土は“やせていてダメな土”と考えがちですが、これが不思議なものです。全国にある砂土地帯は、同時に優秀な野菜産地でもあるという場所がたくさんあります。これは、砂土がよい土だという証拠以外の何ものでもありません。
生産性の上がらない花崗岩風化土、土壌の病害を抑える土
困った土も挙げておきましょう。花崗岩風化土というものです。
これは読んで字の如く、白い花崗岩が風化して出来た土です。真砂土とも呼ばれていて、全国に分布しています。とくに山陽新幹線沿線ではたくさん見ることができますが、畑だけではなく、水田になっているところもあります。
花崗岩風化土は、今回は詳しくは述べませんが、生産性の上がりにくい土です。
それでは、優秀な土というものは、日本の畑にあるのでしょうか?
答えは、ある、です。
作物を作り続けても土壌病害が出にくい土というものがあるのです。その特徴から、土壌病害発生抑止土壌と呼ばれています。
どこにあるのでしょうか。日本に2カ所認められています。一つは三重県鈴鹿地方、もう一つは神奈川県三浦半島です。
この土がどうしてそういう特徴を持つのかは、追って説明する機会を設けます。