カリウムは、日本では昔から比較的確保しやすい成分でした。これが植物に実際どのような働きをするのか、詳細なしくみはわかっていません。しかし、開花・結実など重要な事柄に大きな影響を与えることはわかっています。
カリウムは比較的豊富に調達できた
カリウム――農業の現場で通常「カリ」という言葉はドイツ語から来ていますが、その源流はアラビア語だそうです。「クアリ」のような発音らしいのですが、意味は海藻灰ということです。また、カリウムは英語でポタシウム(potassium)と言います。これは草木灰、つまり草や木を壷のようなものに入れて焼いたときに最後に残る灰を意味しています。つまり、どちらも植物を燃やした後に残る灰を意味しています。
日本でも、草木灰は古くから重要な肥料とされ、江戸時代の農業書にも登場します。山草、木の枝、落ち葉などを燃やせば得られることから、昔の農家にとってカリウム成分の調達は意外に苦労のないものだったのかもしれません。また、周囲が海に囲まれた我が国は海藻を入手するのも用意です。
水分保持や光合成に関与
カリウムは、作物の生長や体の仕組みにどのように働いているのでしょうか。
作物の栄養成分が体内でどのような生理機構で働いているのかについて、これまで窒素やリン酸ではお話してきましたが、カリウムについてはわからないことも多い――たとえばヒトの生理機構が解明されているようなレベルには至っていないということを、まずお断りしなければなりません。その背景には、研究の規模や必要性がヒトの医学や薬学と比べると低く、また解明してもビジネスには結びつきにくいという事情もあると思います。
しかし、ある程度のことはわかっています。一つは、細胞の膨圧維持に関係していて、作物の水分保持に関係が深いということが挙げられます。
また光合成や炭水化物の合成に関与していて、そのため作物の収量にかなり影響があると言えます。それで、たとえば雪国などの施設園芸で日照不足の条件下では、カリウムを補うということがあります。
開花・結実に強い影響を持つ
カリウムはまた、窒素の吸収と利用にも関係しています。硝酸態窒素の吸収は、カリウムがないとできません。また、吸収した硝酸態窒素も、カリウムの働きで作物体内で還元できると言われています。さらに、還元された窒素成分がタンパク質に合成される場面でも役割が大きいようです。
また作物が病気や害虫からの侵入を防ぐ働きも認められています。これは、葉や茎が丈夫になるという単純な理解でよいでしょう。
さらに、開花や結実に強い影響を持っているようです。もっとも、作物にとって重要なこの生理は他の因子とも連動して複雑に働くもので、カリウムだけですべてが決まるわけではありません。作物のコントロールでも難しい課題です。ただ、カリウムの影響が大きいということは心得ておくべきです。