米国マクドナルドO157続報

No.23(2024.11.13)

タマネギのスライス(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国マクドナルド社の商品に関連して発生している大腸菌O157:H7感染アウトブレイクについて、米国当局は調査を継続している。疫学・追跡調査によるデータは、同社の店舗で提供された生鮮細切りタマネギが本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことを示している。

注目記事

【米国】マクドナルド社提供食品に関連の大腸菌O157:H7感染アウトブレイク

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局、米国食品医薬品局(US FDA)および米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)は、複数州にわたり発生している大腸菌O157:H7感染アウトブレイクを調査するため、さまざまなデータを収集している。

 疫学・追跡調査によるデータは、マクドナルド社の店舗で提供された生鮮細切りタマネギが本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことを示している。

疫学データ

 2024年10月30日時点で、大腸菌O157:H7アウトブレイク株感染患者が13州から計90人報告されている。患者の発症日は2024年9月27日〜10月16日。情報が得られた患者83人のうち27人が入院し、2人が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した。コロラド州の高齢患者1人の死亡が報告されている。この死亡者は、HUSを発症した2人とは別の患者である。

 各州・地域の公衆衛生当局は、患者が発症前1週間に喫食した食品に関する聞き取り調査を行っている。聞き取りが実施された患者62人全員がマクドナルドの店舗での食事を報告した。患者58人が、マクドナルドの店舗で喫食した具体的な料理を覚えていた。このうち、48人が生鮮細切りタマネギを使用した料理の喫食を報告し、46人がクォーターパウンダー用の牛肉パテ(重量が4分の1ポンド)を使用した料理の喫食を報告した。「生鮮細切りタマネギが使用され、クォーターパウンダー用の牛肉パテが使用されていなかった」料理の喫食を報告した患者は3人で、「生鮮細切りタマネギは使用されず、クォーターパウンダー用の牛肉パテが使用されていた」料理の喫食を報告した患者は1人であった。

 本アウトブレイクの一部の患者は、発症前に他州に旅行していたことを報告した。少なくとも3人の患者は旅行中にマクドナルドの店舗で食事をしていた。

追跡調査および検査機関での検査によるデータ

 FDAは、Taylor Farms社のタマネギ加工施設(コロラド州)および関連が疑われているタマネギ栽培業者(ワシントン州)の立ち入り検査を実施している。現時点では、関連が特定されている単一の栽培業者はない。

 マクドナルド社の店舗のうち本件に関連した店舗に細切りタマネギを供給したTaylor Farms社は、2024年10月22日にイエローオニオンの回収を開始した。同社はまた、当該タマネギの供給先に直接連絡を取り、当該製品を販売対象から除外するよう要請した。

 FDAは、関連業者と緊密に連携して本件に対応しており、回収対象タマネギの供給を受けた事業者に必要と思われる追加の回収情報など、更新情報の提供を継続していく。

 2024年10月22日、コロラド州農務局(CDA)の検査機関が、同州にあるマクドナルドのさまざまな店舗から採取されたマクドナルドブランドの生鮮・冷凍牛肉パテのすべてのロット由来のサブ検体を分析した結果、大腸菌は検出されなかった。牛肉検体の検査はすべて終了している。

 FSISは、マクドナルドの店舗でクォーターパウンダーの材料として提供された牛肉パテの追跡調査を含め、詳細な調査を実施したが、エビデンスは、牛ひき肉が感染源である可能性を示していない。FSISはまた、患者が具体的に喫食を報告した料理に関する情報を用いて、当該牛肉パテの供給チェーンを製造施設まで追跡したが、当該牛肉の単一の供給元は特定されなかった。FSISは、連邦・州の関連機関と緊密に連携して対応を継続していく。

公衆衛生上の措置

 回収が実施されたため、タマネギやタマネギを使用したその他の食品の喫食を避ける必要はない。CDCは、大腸菌感染による重篤な症状が見られる場合は医療機関に連絡するよう呼びかけている。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】

1. マクドナルド社の店舗で提供されたタマネギに関連して複数州にわたり発生している大腸菌O157:H7感染アウトブレイク(2024年10月30日付更新情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】

1. エルシニア症-2022年次疫学報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】

1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】

1. 食品および飼料の製造・加工環境における細菌の生残に関連する微生物学的ハザード

【アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)】

1. アイルランドの胃腸疾患および人獣共通感染症、2022年(ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)感染症)

【アイルランド食品安全局(FSAI)】

1. サルモネラ症アウトブレイクの発生を受けアイルランド食品安全局(FSAI)がアヒル卵の調理について改めて注意喚起

【デンマーク国立血清学研究所(SSI)】

1. デンマークとスウェーデンによる公衆衛生コンソーシアムが欧州の抗生物質耐性リファレンス検査機関に指名される

【ProMED-mail】

1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(68)(67)(66)(65)

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.23(2024.11.13)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202423m.pdf