コルク栓を使う限りブショネの解決は望めない

ブショネ(コルク臭)は2~3%のボトルに発生することは致し方ないとされてきた。しかし、これによるレストラン経営の圧迫は無視できない。コルク栓を使う限りこの問題はつきまとうが、抜栓時にその影響を抑える方法はある。それを説明していくが、その前に推薦図書を数冊紹介する。

ブショネ(コルク臭)の解決は望めない

 ここで、ブショネ(コルク臭)について言及しておきたい。

 従来のワイン業界では、ワインに不快なコルク臭が付くことは、“コルクが天然素材であるがゆえの宿命”として、100本中2~3本の高い確率で発生してしまうことは致し方ないこととされてきた。

 しかし近年、トリクロロアニソールという塩素系化学物質に汚染されたコルクに起因する異臭付着が問題視されている。汚染原因としてはコルク樫の生育環境に塩素系農薬が散布されていた場合や、採取されたコルクを塩素系化学物質で漂白・殺菌したときの残留塩素による汚染とされている。

 では、塩素系農薬や漂白・殺菌に使用した塩素系化学物質の残留物が原因とされる異臭発生率はどれ程上乗せ発生しているのだろうか?

 ブショネ発生率が、従前の3%未満であってもワイン・ショップや飲食店の経営者には脅威であるのに、トリクロロアニソール汚染との合算汚染率が10%を超えるような状況であるのなら、もはやその経営は成り立たない。

 見て見ぬ振りをしたところで、嵐は通り過ぎてはくれない。コルク材の残留塩素完全除去技術の確立は遠い先であろうし、コスト的に見合わないことも考えられ、近々には問題解決は望めないのだ。

推奨したいワインに関する本

 私は17~18年前頃から、コルク栓の打たれたワインを飲むときに独自の作法で飲むようになった。その独自の作法を思い付くに至った経緯をお話する。

 その前に、今後の話の参考になる本を数冊ご紹介する。何れも名著である。ぜひともお読みいただきたい。

●マット・クレイマー著、塚原正章・阿部秀司訳「ワインがわかる」(Making Sense of Wine)白水社、1994年年3月

●山田健著「今日からちょっとワイン通」草思社、1997年12月(ちくま文庫版が出ている)

●清水健一著「ワインの科学―『私のワイン』のさがし方」講談社(ブルーバックス)1999年1月

●ジェイミー・グッド著、梶山あゆみ訳「ワインの科学」河出書房新社、2006年6月

●山田健著「そこまで聞くの? ワインの話。」サンマーク出版、2005年7月

●ベンジャミン・ウォレス著、佐藤桂訳「世界一高いワイン『ジェファーソン・ボトル』の酔えない事情――真贋をめぐる大騒動」(The Billionaire’s Vinear)早川書房、2008年9月

 とくに山田健氏の2冊は軽妙洒脱、抱腹絶倒のおもしろさがある。そして「今日からちょっとワイン通」の中には、前回記したルモアズネ社の「出荷時にはビン内に発生している澱を吸い取り……」の部分とリンクする記述(同書/初版148~151ページ)がある。「六人会」発足時からのメンバーである金谷範男氏が開発した「澱取りスポイト」に関する記述である。これは、金谷氏が「まさかお客様の前で口に咥えたストローで吸い取る訳にはいかない」との思いから考案したものである。

 また、“ワインの運び方”に関しては、140ページに「船底指定」の言葉を使い、リーファー・コンテナに関しても「定温コンテナ」(「低温」ではない)と記述してくれている。

 金谷範男氏に関しては近々思い出を記述する予定である。

 さて、話をブショネに戻そう。次回はコルク栓の打たれたワインを飲むときの私の作法、そうすることが必要だと気付いた経緯、メカニズムについてお話する。

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About 大久保順朗 82 Articles
酒類品質管理アドバイザー おおくぼ・よりあき 1949年生まれ。22歳で家業の菊屋大久保酒店(東京都小金井市)を継ぎ、ワインに特化した経営に舵を切る。「酒販ニュース」(醸造産業新聞社)に寄稿した「酒屋生かさぬように殺さぬように」で注目を浴びる。また、ワインの品質劣化の多くが物流段階で発生していることに気付き、その改善の第一歩として同紙上でワインのリーファー輸送の提案を行った。その後も、輸送、保管、テイスティングなどについても革新的な提案を続けている。