ジビエの健康リスクを共有する

No.03(2024.02.07)

ジビエの調理(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。フランス当局は欧州全域での微生物分離株の共有を行うプロジェクトに参加した。ドイツ当局は狩猟動物肉の安全性に関するネットワークを開設した。このネットワークは、EU加盟国および西バルカン諸国、トルコ、英国、米国、ニュージーランド、オーストラリアなどに拡大している。

注目記事

【フランス】欧州全域での微生物分離株の共有

 フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES: Agence Nationale de Sécurité Sanitaire de L’alimentation, de L’environnement et du Travail)は、One Healthアプローチに鑑み、微生物分離株コレクションを科学コミュニティ全体で共有しやすくするため、欧州連合(EU)加盟国のための品質保証リソースの分野横断的枠組みである「European CARE(Cross-sectoral framework for quality Assurance Resources for countries in the European Union)プロジェクト」に参加した。

 CAREプロジェクトは、動物からヒトに伝播し得る微生物についてのさまざまな分離株コレクションが、欧州全域において、いまだに「分離源別」および「微生物の種類別」によって区分されているという所見にもとづいて立ち上げられた。これは主にサルモネラやブドウ球菌などの食品由来微生物と関連している。

 標準株のコレクションは、実際には、動物およびヒトに病原性を示す微生物の同定・性状解析を担う各国内および欧州の研究機関のさまざまなネットワークから入手可能である。これらの分離株コレクションは、解析・診断法の統一や改善、および各研究機関の解析能力の検証に用いられている。しかしながら今日に至るまで、これらのさまざまな分離株コレクションの統合および各ネットワークの枠を超えた利用を可能にする体制はEU域内には存在していない。

 現在、微生物分離株のオンライン目録の作成が進められている。この目録は、科学コミュニティ全体で利用が可能になった各分離株について、生理学的データおよびゲノムデータとともに、採取場所、採取年、分離源などの疫学データを提供する。研究者および検査機関は、最終的に、食品由来疾患病原体の2,500を超える標準株についての膨大な分離株コレクションの利用が可能になる。

【ドイツ】狩猟動物肉の安全性に関するネットワークを開設

 アカシカ、イノシシ、キジなどの狩猟動物の肉は、エコロジカル・フットプリントがとくに小さい食品の1つである。このような動物は野生で育ち、自然界で得られる物を食べているため、さまざまな環境汚染物質に曝露している可能性があり、人獣共通感染症の病原体を保有している可能性もある。

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)の主導で、欧州のネットワーク「Safety in the Game Meat Chain」(狩猟動物肉チェーンにおける安全性)が4年間(2023年9月29日〜2027年9月28日)にわたって開設され、狩猟動物肉による消費者の健康リスクについて情報交換が行われる。

 このネットワークは拡大しつつあり、現在は欧州連合(EU)加盟国、および非加盟国(西バルカン諸国、トルコ、英国、米国、ニュージーランド、オーストラリアなど)の計29カ国が参加している。

 ネットワークの最も重要な目的は、「森林から食卓まで」の狩猟動物肉チェーン全体にわたる取り組みにさまざまな知見を反映させるため、関係者らが直接協力できるようにすることである。環境由来の望ましくない物質(環境汚染物質)のほか、銃弾による重金属(とくに鉛)汚染の防止と低減にも焦点が当てられている。生物的ハザードには、狩猟動物肉の喫食を介してヒトに感染するトリヒナの幼虫などの寄生虫、サルモネラやベロ毒素産生性大腸菌などの人獣共通感染症細菌、イノシシが保有するE型肝炎ウイルスなどのウイルスがある。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.03(2024.02.07)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202403m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 牛ひき肉に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Saintpaul)感染アウトブレイク(2023年8月23日付最終更新)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【Eurosurveillance】
1. デンマークで初めて発生した腸管侵入性大腸菌(EIEC)感染アウトブレイクに輸入ネギ(spring onion)が関連、2021年11〜12月

【フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)】
1. 欧州全域での微生物分離株の共有

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 狩猟動物肉の安全性に関するネットワークを開設

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(04)(03)