- 放射性物質で大混乱(東日本大震災関連)
- 食料生産基地が大打撃(同上)
- 食品輸出「日本」ブランド崩壊(同上)
- 超円高:食料輸入にはプラス
- TPP交渉参加表明
- FoodWatchJapanとFOOCOM.NET稼働
- 生食肉で食中毒
- 食品表示一元化検討会スタート
- GMOパパイヤ輸入開始
- 健康食品はますます元気
想像を超える打撃
想像もできなかった大震災が起きた。1000年に一度とか600年に一度とか言われても、ピンとこない。しかし、そのような歴史的な機会に居合わせたのである。地震と津波の被害に加えて、原発事故の影響が甚大だった。東北地方は北海道に続いて都道府県別の食料自給率が100%を超えるわが国の食料生産基地である。水田は塩害と放射性物質により、漁港関連も大きな被害を被った。
放射性物質の安全基準は、食品安全委員会が作成したが、混迷を極めた。BSEのときもそうだったが、腰が引けている。単純に基準を決めればよいというものではない。対策に必要となる費用を考慮しながら、社会に許容できる水準を決める必要がある。独立組織とすることに疑問を呈している中西準子さんの主張も納得できる。
日本の農産物や食品は、東アジアに向けて輸出を増やしてきた。「日本」ブランドは、安全と高品質という安心につながる高い信頼を築いてきたのである。このブランドは、放射性物質による不安により、脆くも崩壊してしまった。日本発の料理を提供する世界各地の料理店の打撃も大きいようだ。
「民主主義と成長の限界」を考える
視点が変わるが、「民主主義と成長の限界」をつくづく感じた年でもあった。民主主義は大衆迎合に陥りやすいのである。欧州のギリシャがそうだったし、民主党が大衆迎合の塊であった。打ち出の小槌があるわけではない。掲げてきた政策は、ことごとく壁にぶつかり、実現不可能だ。野田政権になって、ようやく現実に向き合いつつある。
筆者の住居近くの東京都小金井市のゴミ処理問題も、その例に挙げられるだろう。大衆は、耳触りのよいことをいう指導者を選んでしまう。小金井市は、アッという間に行き詰り、元の市長を選び直した。経済が順調に発展している時代であれば、社会に十分な余裕があった。誰がどのように統治していても、何とでもなったのである。
ローマクラブが「成長の限界」を現わしたのは、1972年。20年後に続編の「限界を超えて」が出版された。その内容を実感できる日が、これほど早く来るとは考えても見なかった。
原子力とのつき合い方は慎重に検討すべきだが、エネルギー不足は明白だ。わが国で農業を行うには、エネルギーと肥料が必須である。そのどちらも大部分を輸入に頼っている。レアアースだけではない、輸出国は肥料の原料となるリン鉱石等も輸出を制限しつつある。さらに、農業の労働力も外国人に頼る部分が少なくない。
どの国であっても、各国からさまざまな資源や食料を輸入しなければ成り立たない時代になっている。エネルギーはシェールガスで一息つけるかもしれない。それでも、資源等の必要量を確保できなくなる日が目前に迫っていると感じている。持続可能な世界の構築に向けて、新しい生き方を考えることになった一年であった。
東日本大震災からの早い復興を祈念しながら、個人的には三内丸山遺跡に行くことができた。個々のニュースには、触れることができないが、FoodWatchJapanとFOOCOM.NETの今後に期待したい。「食べる」をもっと知る人を増やしたいものである。
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