- スカスカおせち事件とネット炎上
- 相次ぐ食中毒事件
- 女子会・ママ会企画続々
- 注目高まるノンアルコール飲料
- 第7次ワインブームの兆し
- 増殖するがぶ飲みワイン業態
- 広がる「街コン」「街バル」
- 「ロメスパ」拡大
- から揚げ人気高まる
- アジアを中心とする海外進出が急
震災後の市場に大きな変化。「保守的ベクトル」強まる
「スカスカおせち事件とネット炎上」という嫌なニュースで幕を開けた2011年の外食業界をひと言で表せば、「混乱の年だった」ということだろう。もちろん、東日本大震災がその最大の原因で、震災の影響を無視して2011年を語ることはできない。
震災は外食業界に限らず、日本全体の空気を一気に「保守的ベクトル」へと変えた。
震災当日は、首都圏でも鉄道が麻痺し、中心部で働く大半の人々が陸の孤島となった都心のオフィスに取り残された。そしてその後の計画停電。当然のことながら、「目の前の不安」「先行きへの不安」「自粛」といったネガティブな心理状態が渦巻く中で、真っ先に消えたのが外食需要だった。春の宴会需要という巨大な市場を一気に失い、大きな混乱が業界を襲った。それは予想を遙かに超えるもので、格差が大きく出たとは言え、市場に回復の兆しが出始めたのは夏以降だった。
震災により大きな変化が見られたのが、「商いのかたち」だ。フリの客を相手にする都市型商売は非常に厳しい状況に追い込まれた一方で、常連客比率の高い店では比較的回復が早かった。新たな顧客を取り込み、1人でも多くのお客さんに再来店を促す、といった施策をいかに現場で実践できているのか否かで、大きな格差が出た格好だ。
酒の飲みようも変わった。外れない、より確実性のある店や料理に人気が集まり、コストパフォーマンスもよりシビアに見極められるようになった。結果として、お得感やトータルの満足感でで劣ってしまった大手の均一居酒屋の「安さ」は失速を余儀なくされた。
そして何より、「ハシゴ酒」が消えた。一軒で完結できる店、飲み方が定着し、とくに震災以降、バーは非常に厳しい状況に追い込まれた。地域によっては廃業や業態転換せざるを得ない状況も多く見られた。
当然、飲みを切り上げる時間も早まり、一部の繁盛店を除けば、1回転でお客が途切れてしまうといった傾向が強まったのではないか。
その一方で、より住宅街に近い酒場の人気が高まり、ワイン業態でいえば、バルやビストロの小規模店が都市近郊にも一気に増えた。これまで都市部に集中していたワイン業態の出店もこうした事情により、たとえば東京では中央線沿線の駅前から住宅街の境あたりまで広がり、「歩いて帰れる徒歩圏内でゆっくり飲む」といった消費の形が強まった。
そうした郊外の需要を意識的に狙って、郊外に都市型の店舗を出店する動きも目立ち始めたのも特徴だろう。物件的な流れも、「小箱居抜き・早期回収モデル」に注目が集まり、都心部で20~30坪、郊外では10~15坪程度の開業が目立った。震災の影響で経済的にも沈滞する状況下で、より高いコストパフォーマンスを要求されつつ、こうした保守的なベクトルが強まった1年だったといえよう。
第7次ワインブームの兆し。増殖する「がぶ飲みワイン業態」
「鶏が先か卵が先か」ではないが、少なくとも業務用市場においては、「第7次ワインブーム」の兆しが大きく現れた。それはご存知のとおり、「がぶ飲みワイン業態」の増殖に象徴される。
それまでの「料理における高いコストパフォーマンス」がワインにまで広がったのが2011年の特徴で、ボトルワインで2000円を切るという店も現れ始めた。安かろう悪かろうの議論はここではひとまず置くとしても、これまで「ドリンクで儲ける」といった発想から「数を売って粗利額を積み上げていく」考え方に変化したのが大きな特徴だ。
東京・新富町の「ポンデュガール」が先鞭を付けた「がぶ飲みワイン業態」は、神田の「ヴィノシティ」や武蔵小杉の「ナチュラ」、中野の「千年葡萄酒」、恵比寿の「カルネジーオ」などさまざまな形で繁盛店を生み出した。また、新橋の「びすとろ UOKIN 」や同じく魚金の「イタリアンバル PICCOLO」、目黒の「立飲 Bistro-SHIN」、渋谷の「富士屋本店 ワインバー」、新橋「俺のイタリアン」など立ち飲み系の業態にまで人気の渦が波及した。
大手もこの動きに関心を示し、プロントをはじめ三光マーケティングフーズやダイナックなども軒並みワイン業態のテストを開始している。来年以降もワイン人気を継続させるためには一体何が必要なのか。そのヒントはすでに繁盛店に散りばめられている。それをさらに掘り下げて具現化できた店が、より厳しい競争を勝ち残るのではないだろうか。
「街コン」「街バル」人気着火。2012年もさらに拡散の予兆
今年、震災後の自粛ムード一色の中で、震災復興や絆をキーワードに人気を集めたのが「街コン」や「街バル」「食べ飲ま」と呼ばれる地域興しイベントだ。
「合コンスタイル」と「食べ歩きはしご酒スタイル」とに大別されるが、いずれにしても、震災以降、個店での販促から「地域対地域」の集客争いへとステージが変化した状況に、飲食店側も敏感に反応した結果だ。
これらのイベントは5年くらい前から全国各地で少しずつ開催されてきたが、にわかに注目を集め出したのは震災以降だ。東京・上野の「下町バルながおか屋」の前川弘美さんが今年5月と11月の2回、上野活性化のため「食べないと飲まナイト」を開催。この地域活性策を陳腐化させないためにも、統一ブランドで開催することを各地の仲間に呼び掛け、広島と東京・神楽坂でも開催するなど、同名のイベントを昨年4回催すことに成功した。
課題としては、参加飲食店の意識がまだまだ低いことで、再来店を促し固定客化しようという強い意志で取り組んでいる店が少ない点だろう。この部分を解消していけば、参加者・参加店ともに実り多きイベントとして定着するのではないだろか。この手のイベントが来年もさらに盛り上がることは間違いない。
アジアを中心とする海外進出が急。中小も好機、優良コンテンツに熱視線
今年は、アジアを中心とする海外進出にも拍車がかかった。震災の影響で、食材の供給(日本からの輸出)がストップするなど、すでに進出している外食業者に影響もみられたが、基本的に海外市場の日本の外食企業への関心は高く、中小業者にもチャンスが多くある。
ただ、アジアと言っても国によって事情が異なるため、それぞれの国の特徴を慎重に分析して出店コンテンツを詰め、業態開発した企業がある程度の成功を収めているようで、安易に進出して成功するほど甘くない。とくにアルコール業態が多く、たとえば香港に進出しているワタミも、日本の居酒屋とは趣が異なり、食事メインのファミレス的な使われ方をしているようだ。
ラーメン業態をはじめ、日本からのアジア進出が目立った年だったが、来年以降もその傾向は強まると見られる。有力なスポンサーやディベロッパーのハートを射止めるのは、規模の大小を問わず優良なジャパニーズコンテンツだ。日本で培ったノウハウがアジアで活かせる時代がようやく到来したと言えるだろう。
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