国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。WHOは「食品安全のための世界戦略2022-2030」を立ち上げた。米国CDCは、エノキダケに関連のおよびデリミートおよびチーズに関連の感染アウトブレイクを調査している。英国食品基準庁は食用昆虫のための法律の修正案に寄せられた意見を公開している。
注目記事
【WHO】WHOの食品安全のための世界戦略2022-2030
2022年10月17日、世界保健機関(WHO: World Health Organization)は、第75回世界保健総会(WHA)において加盟各国によるWHA決議75(22)で採択された「世界保健機関(WHO)の食品安全のための世界戦略2022-2030(WHO Global Strategy for Food Safety2022-2030)」を立ち上げた。この取り組みは、健康の促進、世界の食品安全の維持および健康被害を受けやすい人々の保護を目的とした WHO の活動の節目となるものである。
この世界戦略では、相互に関連・強化し合う以下の5項目の戦略的優先事項が特定され、それぞれに戦略的目標が設定されている。世界戦略は、これらの優先事項および目標を活用することで、積極的かつ前向きで、エビデンスにもとづき、消費者を中心とする費用対効果の高い食品安全システムを構築し、組織的なガバナンスと適切なインフラを整備することに目標を定めている。
- 戦略的優先事項
【米国】エノキダケに関連のリステリア
米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。
疫学調査および検査機関での検査によるデータは、リステリアに汚染されたエノキダケが本アウトブレイクの患者の感染源となっていることを示している。これらの患者に関連している可能性があるエノキダケの具体的なブランド名を特定するため調査が進められている。
2021年11月に FDA は、輸入エノキダケに関連したリステリア感染アウトブレイクを防ぐための対策の一環として、輸入時に採取したエノキダケ検体を検査し、1検体からリステリアを検出した。これらの輸入エノキダケは廃棄された。当該検体由来のリステリア分離株は、今回のアウトブレイク株と遺伝学的に近縁である。しかし現時点では、当該検体の関連業者が本アウトブレイクに関連したエノキダケの供給元である可能性は示されていない。
【米国】デリミートおよびチーズに関連のリステリア
米国疾病予防管理センター(US CDC)、複数州の公衆衛生・食品規制当局、米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。
疫学調査および検査機関での検査によるデータは、デリ(調理済み食品売り場)カウンターで販売された食肉製品およびチーズがリステリアに汚染されており、本アウトブレイクの感染源となっていることを示している。L. monocytogenesアウトブレイク株に汚染されている可能性がある具体的な製品やデリを特定するため調査が進められている。
CDC は、リステリア症の重症化リスクが高い人に対し、デリカウンターで提供された食肉やチーズはすべて、内部温度が華氏165度(74℃)になるまで再加熱、または蒸気が出るまで再加熱されていない場合は喫食しないよう注意喚起を行っている。
【イギリス】食用昆虫のための法律の修正案について寄せられた意見
英国食品基準庁(UK FSA: Food Standards Agency, UK)が食用昆虫のための法律の修正案について寄せられた意見を公開している。
この修正案は、「離脱後も維持されたEU法(retained EU law)」の法改正を伴うものであり、2018年に新開発食品(novel food)に関する規則が改正された後も引き続きEU市場での販売が認められている食用昆虫については、新開発食品の認可プロセスを経てグレートブリテン(GB)の市場での販売が継続される。この修正案が議会により承認されれば、2022年12月31日までに法改正が発効する。
食用昆虫はGBの市場での販売に認可が必要であるが、英国(UK)のEU離脱にあたり2018年に設定された食用昆虫などの新開発食品関連の経過措置においては、GBの規制当局への承認申請を事業者に義務付けるための法改正が行われなかった。
今回の意見募集では、一般消費者、および食用昆虫業界・代替タンパク質業界を代表する食品事業者や団体などのさまざまな組織から意見が寄せられた。技術的変更案の詳細について寄せられた意見は概ね支持的であった。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.24(2022.11.22)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202224m.pdf
今号の目次
【世界保健機関(WHO)】
1. より強力な食品安全システムと国際協力に向けて:世界保健機関(WHO)による「食品安全のための世界戦略2022-2030(Global Strategy for Food Safety2022-2030)」の立ち上げ
【汎アメリカ保健機構(PAHO)】
1. コレラの流行に関する更新情報(2022年10月25日付)
2. コレラの発生状況-ハイチのコレラ再興-(2022年10月2日)
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. エノキダケに関連して複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2022年11月17日付初発情報)
2. デリミート(調理済み食肉)およびチーズに関連して複数州にわたり発生しているリス
テリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2022年11月9日付初発情報)
3. ブリーチーズおよびカマンベールチーズに関連して複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2022年11月10日付更新情報)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)
【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 英国食品基準庁(UK FSA)が食用昆虫のための法律の修正案について寄せられた意見を公開
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 急性ボツリヌス症が発生したドイツ酪農場の乳牛群における調査結果:健康なウシに由来する乳および乳製品の喫食・喫飲がヒトのボツリヌス症の原因となる可能性は極めて低い