食のビジネスのサイトでありながら、下半身の話題をずーっと続けておりますが、これからの健康食品通販を考える上では、私は捨て置けないお話だと思っておりますですよ。さて、今回はショーツのお話なんですが、またまた食からは遠ざかるものの、“伝え方”の勉強に、どうぞ。
「『おばあちゃんのもの』と思われたらオシマイです」
排尿系のお悩みには、「尿がガマンできない」(ガマンできる時間が短くなる)というものと、女性には「尿をシメル力が弱まって、ちょっと漏れてしまう」ということがあるそうですね。今回は後者の方に関する商品の通販番組にかかわったときのことをお話します。
女性の方々がこんな悩みお持ちだったとは、筆者はこの番組の仕事をするまで、まーったく知りませんでした! 身のまわりには母親もおばあちゃんもいましたし、結婚して妻もいますが、やっぱ男の耳には入ってこない情報というものはあるものですね。
しかも、これが決して年をとってからのお悩みということではなく、20代からこれで困っちゃっている人もいるんですよ、ということがアンケートでわかっていたんです。年をとるごとに増える悩みではありますが、若い人にもそういう人はいる、ということでした。
で、実はここがポイントなんですね。この商品のメーカーの人からも言われたのですが、「尿漏れは年をとったがための悩みでなく、若くても起こり得る悩みです」という点を、キッチリ押さえて番組を作ることが重要だったんです。つまり、見ている人に購入を促すために、「そんなもの買うのおばあちゃんみたい……」というイメージを払拭しないといけなかったんです。
「男はわかってないものなんですねー」
そもそも、女性の方々は「おばあちゃん用のものは買わない」「同世代・若い人世代のものは買ってよい」と考えるものなんですね。とくに美に敏感だったり、そのための消費意欲もある方ならなおさらです。このとき、そういうことを教わったわけです。
これ、男にとっては、聞けばわかる話、でも聞かないと気づかない話でありまして、「コレはすんごくイイこと聞いた~」と思いました。
そう、年齢を問わず、ほとんどの女性は、周囲の男性が思っているよりも「老けてない」「もっと若いから」というおココロのようなのです!……こんな大事なこと、もっと早く聞いておけば、いろんな女性スタッフや知人とも、もっと仲良くできていたんじゃないかな~と思ったり思わなかったりする今日この頃(笑)。
え? 知ってただろうって? ハイ、実は通常の番組作りの中では、「女性の視聴者は自分の実年齢より若い人に関する事柄に興味を持つ」ということは、テレビ業界にいてさんざん言われてきたことではありました。それ、ちゃんと覚えてたつもりだったんですけど、「商品を買うこと」についても同じだよな、ということは見落としていたのでした。
そう。化粧品は、同じメーカーの商品でもいろいろなブランドがあって、しかもそれは世代別に用意されているのですね。また女性誌も世代別にごちゃごちゃといろんなものがあります。「どれも中身はそんなに違わないんじゃないの?」なんて思っちゃうのは男でして、それにはちゃんと理由があるのですね。たぶん、実年齢より1世代下をターゲットとした商品を選ぶ方が多いんではないでしょうか。
「女性レポーターに『尿漏れ』を語ってもらえるのか?と」
さてさて、このときに通販したものというのは、「尿漏れがあってもサラリと乾きますし、いやなニオイも残りませんよ」というショーツでした。テレビとしては、ワイドショーの1コーナーを使っての10分ほどの構成。
紹介のしかたとしては、こんな感じです――「実は多くの女性がこういう風に尿漏れの悩みを持ってますよ、世代も若い人から上の人まで」というデータを出し、スタジオではコメンテーター数名が、悩みの声を伝えるとともに商品説明をする、という、割とシンプルなものです。ちなみに「こんな悩みあります」のデータ紹介はナレーションベースで、一般の方の声は登場せず、です。
この数回にわたって書いているように、下半身の悩みを実際に語ってもらうのは難しいのです。このときも、一般人の方に「尿漏れ悩んでます」と語らせるのは成立せんだろうとそうしたのですよ。その代わりに、悩みの代弁者としてスタジオに30~40代の女性コメンテーターを3~4名置いて語っていただく、ということにしました。ちなみに、このコメンテーターはフリーのあんまり有名ではないレポーターとかの方々。
だけど、当初それすらムズカシイんじゃないの!? と思ってました。だって、顔出しで他の仕事もいろいろやるレポーターさんたちです。「有名ではない」っていうことは、「有名になろう」と頑張っている人たちでもあります。だから、語るの恥ずかしいのじゃないかな、嫌がるのではないかな……と。
ですが! フタを開けてみると、あっぱれ、彼女たちはスイスイと進行してくれたのであります。しかも、自分たちの品位も失わず、さらにはしらじらしくもなく! 一体どうやってかと言うと……。
「切実な語りで、しかも伝聞ていうワザがあるんですよ」
スタジオで「尿漏れの悩み」を代弁する女性コメンテーターさんたちの語りにはワザがありました。どの話も、「……ということなんです」でしめる伝聞の形にするんです。
しゃべり出しは、あたかも自分のことをカミングアウトしたように話し出すんです。「実はですね、全く尿漏れなんて考えたこともなかったのに、あるときくしゃみをするとエェッと思っちゃって!……」などと。ここ、ちょっとハラハラするところです。が、最後に「……というような声があったんですね」と締めるんですよ。うまいなー。
それがテレビではどう映るかというと、あたかも本人のお悩みを切実に語っているかのように見えるんです。しかも、彼女たちは「私もそうなんです」とは言っていないので、彼女たちがイタイタしく見えることはない。それから、「私の母のことなんですが」という言い方もありました。うまく文章で再現しにくく、映像でお見せできないのが残念なんですが、まぁリアリティがあるんですよ、これが。
このショーツ、おかげさまで結果的には好調な売れ行きだったそうです。あと、放送時間も平日午前中の10時台と、ほぼ「子供も夫も家にはいない」という時間だったからこそというのもあるでしょう。
平日、ゼッタイにテレビのワイドショーや主婦向け番組を見ることがないお父さんや世の男性の方々、平日午前中の情報バラエティなど、たまに録画しておくと、知らなかった女性のホンネが見えてくるかもしれませんよ!