ビールの知識と楽しみ方を普及させ需要喚起・外食の活性化につなげたい

ジャパンビアソムリエ協会 代表・森本智子さん 理事・小倉朋子さん

今年発足したジャパンビアソムリエ協会が11月3日・4日に第2回 ビアソムリエ認定講座(ベーシック)を予定している。ビールの知識を身に付け、ビアソムリエの認定証を授与するもの。この講座の実際と狙いについて、代表・森本智子さん(ドイツDoemens Akademie認定ビアソムリエ、ドイツ食品普及協会代表)と、理事・小倉朋子さん(トータルフード代表取締役、フードプロデューサー、日本箸文化協会代表)に聞いた。

座学と試飲・試食でビールをより深く理解する

代表理事の森本智子さん
代表理事の森本智子さん

――4月に第1回ビアソムリエ認定講座(ベーシック)を開講され、11月に第2回があるということです。どのような講座でしょうか。

森本 座学と、テイスティングや食事との合わせ方など実地の両方があるのが特徴です。

 座学ではビールの歴史や醸造について、それから世界のビールの飲まれ方などについてお教えします。

 これに続いて、ビールと食事との相性の見きわめ方を、実際に試飲・試食をしながら身に付けていくフードペアリングや、ビアカクテルの調製、そしてビールをサービスする際のマナーなど、実際に体感できる内容を含めています。

――プロ向けの講座でしょうか。

森本 対象は3つのタイプを想定しています。

 まず、レストランやビアパブの経営・運営に携わっている方、フードコーディネーターの方など、飲食業にかかわっている方です。ビールを深く知ることによって、お客様にビールを選んでお薦めしたり説明したりできるように、またサービスのスキル向上につなげていただけるように考えています。

 また、ビールが好きで、もっとビールの楽しみ方を広げたいと考えている一般の方にもお薦めしています。

 さらに、ビアバーや醸造所を立ち上げようと考えている方にもぜひ受講していただきたい。

――どのような狙いから、ビアソムリエ認定講座を開こうと考えたのでしょうか。

森本 きっかけは、私が昨年ドイツのビアソムリエ資格を取得したことです。ドイツではDoemens醸造アカデミーが2004年からビアソムリエの認定をスタートさせているのですが、受講してみて、こういうものが日本にも必要だと考えたのです。

 そこで、日本ドリンク協会代表理事の山上昌弘さんとフードプロデューサーの小倉さんに相談して、ジャパンビアソムリエ協会を立ち上げ、日本の事情にあったビアソムリエ認定講座をスタートさせることにしました。

 開講にあたっては、ドイツ大使館、オーストリア大使館の後援を受けています。また、ドイツの専門学校にも連絡をとっていて、今後情報交換や連携もしていきたいと考えています。

和洋中に合うビールは外食消費に大きく影響を与える

理事の小倉朋子さん
理事の小倉朋子さん

――狙いについては、小倉さんにもお考えがあるんですね。

小倉 3人いる理事のうちの一人の私個人の考えですが、外食産業のレベルアップで昨今の客単価低下に歯止めをかけたい。

 今はお店で注文するとき、「とりあえずビール」「はい生ですね」というだけの会話が普通です。でも、ビールの種類や飲み方についての知識が広まれば、もっと違ったやりとりになるでしょう。そこに価値が生まれるし、もちろんさまざまなビールや料理を売ることができるようになります。乾杯のためや喉ごしのためだけの飲み物にとどまらず、多様な飲み方の理解が進めば、飲まれる機会も増えるでしょう。

 しかも、ビールは和洋中などのジャンルを問わず、いろいろな料理に合う。外食のどの業種でも活性化につなげられる可能性のあるものです。

――若い人のアルコール離れが酒造・酒販業界や外食業界の心配のタネになっていますが、その対策の一つともお考えですね。

森本 はい。実は、ドイツでも若い人のビール離れという現象が起こっているんです。健康志向と、いろいろな飲み物が手に入るようになったことが背景のようですが。それに対して、ドイツのメーカーは、プレミアムビールなどさまざまな商品を出すなどの工夫をしています。

 そうかと思えば、今イタリアではビールがトレンディな飲み物という風潮があって、若い人はワインよりもビールに強い関心を持っているんです。講座では、そんな海外の情報もお伝えします。

“ビールに枝豆”だけではない味の世界

――受講のメリットをもう少し知りたいと思いますが、第1回の講座の様子を聞かせていただけますか。

森本 第1回は20人限定で、ほぼ定員でした。狙い通り飲食業関係者と一般の方がおよそ半々。ただ、一般の方と言っても、独立開業やフードコーディネーターを目指している方もいるので、やはりプロが多いと言えます。ただ、一般の方も充分にご受講いただける内容になっています。

 講師はカリキュラムに合わせて、ビールの専門家、バーテンダーなどのプロが担当します。

 もちろん座学で得られる知識も豊富でとても役に立つものですが、それを踏まえて試飲・試食をしながら理解を深めていく部分が最大の特徴となります。

 このために、ドイツだけでなく世界各国のビールを30種類以上そろえ、それぞれの特徴を実際に味わってつかむことができます。これは、個人で短期間に経験することは難しいことです。

 料理とのペアリングも、実際に味わって相性のよいものを見つける方法を伝えるのですが、ソーセージ、パン、チーズなどさまざまにそろえます。そして、ペアリングはカテゴリー分類して理論的な知識とあわせて理解できるようにしています。

小倉 私自身、驚いたことがたくさんあるのですが、これはいろいろな発見につながります。たとえば、日本では枝豆はビールのつまみの定番と考えられていますが、キレのあるビールを冷たくして飲むと枝豆の甘味が意外と味わえず、むしろ、甘味のあるタイプ、コクのあるタイプを合わせると、引き立てられることがわかります。好みはそれぞれですが、そういったことに気付く楽しみがあります。

 ほかにも、スイーツに合わせられるビールも発見できたり。

――11月に第2回の講座を予定していますが、今後はどのような展開を計画していますか。

森本 すでに第1回から、開講期間に合わせて、講座とは別にビールのイベントも行っています。ビール工場見学や、マイビール作り、ワールドビアカップの講座や受賞ビール試飲講座などをすでに開催しました。もちろん受講者以外の方が参加できるイベントなので、こちらからもビールやビアソムリエに興味を持つ方が現れてくれることを期待しています。

 また、今後はビアバーや醸造所を立ち上げようと考えている方向けの専門講座も開く計画です。醸造や店舗設計の専門家も招いて、プロ養成のための講座にしていきます。

小倉 先ほども申しましたように、ビールは食全体に大きな影響を与えられる可能性を持った飲み物です。この活動を、日本の食を豊かにする突破口にしていきたいと考えています。

●「第2回 ビアソムリエ認定講座(ベーシック)」

日時:2012年11月3日(土)~4日(日)
   1日目10:30~17:30分
   2日目10:00~17時30分

会場:大妻女子大学(東京千代田区)

費用:受講料3万8000円(教材費、テイスティング材料費込)
   受験認定料1万1000円

定員50名:(申し込み先着順。定員となった時点で締切)

主催:ジャパンビアソムリエ協会
後援:ドイツ大使館、オーストリア大使館

※2日間の全カリキュラムを受講し、試験(筆記、テイスティング)合格者にビアソムリエ認定証を授与。

※詳しくは→こちら

●ジャパンビアソムリエ協会
http://www.beersom.com

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About 齋藤訓之 398 Articles
Food Watch Japan編集長 さいとう・さとし 1988年中央大学卒業。柴田書店「月刊食堂」編集者、日経BP社「日経レストラン」記者、農業技術通信社取締役「農業経営者」副編集長兼出版部長等を経て独立。2010年10月株式会社香雪社を設立。公益財団法人流通経済研究所特任研究員。戸板女子短期大学食物栄養科非常勤講師。亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科非常勤講師。日本フードサービス学会、日本マーケティング学会会員。著書に「有機野菜はウソをつく」(SBクリエイティブ)、「食品業界のしくみ」「外食業界のしくみ」(ともにナツメ社)、「農業成功マニュアル―『農家になる!』夢を現実に」(翔泳社)、共著・監修に「創発する営業」(上原征彦編著ほか、丸善出版)、「創発するマーケティング」(井関利明・上原征彦著ほか、日経BPコンサルティング)、「農業をはじめたい人の本―作物別にわかる就農完全ガイド」(監修、成美堂出版)など。※amazon著者ページ →