なんで増粘多糖類を使うのか考えてみたの巻

固形化補助粉末「まとめるこeasy」(クリニコ)
固形化補助粉末「まとめるこeasy」(クリニコ)

増粘多糖類はそれぞれが一般になじみのないものであったり、食品添加物とされていることから、親しみが薄く、よくないイメージにもつながりやすいのではという話になった前回。タクヤは身近な素材になるブレークスルーの一つになるのではと、ある製品を持って来た。

家庭にうれしい増粘多糖類

リョウ 「来たか。ごくろう」

タクヤ 「隊長、これを見てください

リョウ 「ん? 固形化補助粉末『まとめるこeasy』? なんだこりゃ」

タクヤ 「去年出た新製品で、FoodWatchJapanの編集長が日経産業新聞に書いた記事がこれです」

 加齢や疾病によって、食べ物を咀嚼したり、液体を口に含んだり、それらの嚥下(飲み下す)に障害を生じた人には、食品をミキサーにかけたすりつぶし食や流動食を用意する必要がある。パックされてそのまま使える既成品もあるが、自作できれば食事のバラエティが増える。「まとめるこeasy」は通常のおかずやみそ汁などをこの製品とといっしょにミキサーにかけることで、すりつぶした食品でありながら、盛り付けや、すくって口に運ぶことを容易にする。(「日経産業新聞」2012年8月13日)

リョウ 「ああ、こういう食事ね。介護やってる友達に聞いたことあるよ。嚥下食とか言うんだよな。それを用意するのが手間だと言ってた」

タクヤ 「出来上がった嚥下食がパック詰めになった既成品もあるようです」

リョウ 「介護の現場からすると、そういうのには言いたいことが山ほどあるらしい。味とか、固さとか、使い勝手とか、おじいちゃん・おばあちゃんが実際に食べている様子を見ていて感じる不安とか、製品によっていろいろあるって。だいたい一手間かけて使うしかないと、その友人は言っていた。いいものもあるんだろうけどね」

タクヤ 「この『まとめるこeasy』は、普通と同じように作った料理をこの粉といっしょにミキサーにかけるだけで狙いどおりの固さの嚥下食が作れるということです。再加熱などの手間も不要と」

リョウ 「ふーん。便利そうだな。これなら介護の専門家でなくても、家庭でも扱えるだろうね」

タクヤ 「原材料を見てください」

リョウ 「デキストリン、グルコマンナン、キサンタンガム、カラギナン、ジェランガム、ローカストビーンガム……これ、増粘多糖類じゃんか。つまり、増粘多糖類ミックス粉だ」

タクヤ 「そうです」

リョウ 「ふーん。そうか、こういうものがお年寄りのいる家庭で使われるようになると、その家では、『とろみとか、プルッと固めるものって、でんぷんとかゼリーとか寒天以外にも、いろいろあるのね』ってわかってくるね」

タクヤ 「増粘多糖類が身近になる一つの突破口になりそうでしょ?」

リョウ 「お前、そんなに増粘多糖類の市民権が心配なのか」

タクヤ 「だって、モノでもヒトでも不当な扱い受けてたら気分悪くないですか」

リョウ 「オレは関係ないけどな。自分のことで手一杯」

タクヤ 「いいです。協力してくれとは言ってません」

リョウ 「しかしさ、お年寄りのお世話してない家とか、子供には伝わらないだろう」

タクヤ 「『フルーチェ』って知ってます?」

リョウ 「昔よく作って食べたよ」

タクヤ 「あれは何で固まるのでしょう?」

リョウ 「パウチに入ってるフルーツソースに牛乳混ぜると固まるんだよな。あれも増粘多糖類か」

タクヤ 「そうです。ペクチン」

リョウ 「ペクチンはちょっとでもカルシウム当てると固まるから気をつけろという話だったね。そうか、ペクチンと牛乳のカルシウムでプルンと固まるんだ」

タクヤ 「大ピンポン♪ ああいうタイプのお菓子とか料理の材料ができれば、増粘多糖類はもっと身近に感じてもらえるでしょうね」

リョウ 「そう言われてみると、最近レトルトパウチに入って売ってる『○○の素』のような、惣菜用調味料とかソースとかは、けっこうプルンとかトロンとかしてるものが多いけど、ああいうのもだいたい増粘多糖類でそうなっているんだろうな」

タクヤ 「そうですよ。だから、そういう製品のパッケージの端っこにでも、『グァーガムとはインドで栽培している豆の一種で……』とか一言説明があると、それが何であるのかわかって安心だし、食の知識の世界も広がって楽しいじゃないですか」

リョウ 「つまり、『食育』っていうことだな」

タクヤ 「そうですよ」

なぜとろみが必要か

リョウ 「しかし、何で増粘多糖類使うのかっていう話にまた戻るんだけど、何でとろみをつけるんだろうね、いろいろな料理に」

タクヤ 「病気や老化で食べたり飲み込んだりするのが難しい人には、砕いた料理をちょうどよい固さに固めたり、とろみを付ける必要があるというのは、最初の製品で説明したとおりです。あと、ドレッシングやタレに増粘多糖類で微妙なとろみを持たせる効果は前に話しましたよね?」

リョウ 「あれは材料が均一に混ざっているようにするために有用だという話だったな。ノンオイルドレッシングや低カロリータイプのドレッシングなども、シュドプラスチック粘性のあるキサンタンガムがあるおかげでいろいろ出来るようになったんだろう」

タクヤ 「シュドプラスチック粘性の増粘多糖類なら、かけるときは流れて、野菜などにかかった後はそこに留まってくれるというメリットもあります」

リョウ 「ふむ。ドレッシングやタレ以外のもので、とろみがあるといいことって何だろう」

タクヤ 「シャバシャバしたものは飲み込んでおしまいですが、とろみがあると食べてる感じがします」

リョウ 「ボディ感てやつだ」

タクヤ 「しかも、舌の上を通り過ぎないで少しの時間でもそこに留まったりまとわり付いたりしますから、それだけ味を感じやすくもなります」

リョウ 「コクがあるというのは、何かの味がちょっと利いているというほかに、そういう物理的なもので生まれるコクもあるんだろうな」

タクヤ 「上手く使えば、塩分や糖分の使用量を抑えることもできるでしょう」

リョウ 「健康面でもアピールできるし、コストダウンにもつなげられるかもな」

タクヤ 「そういうわけです」

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About 北遥 41 Articles
もの書き稼業 きた・はるか 理科好きの理科オンチ。